【悪臭|判例|焼き鳥店・産業廃棄物焼却・ゴミ集積場・賃貸ビル】

1 動物・ペット×悪臭|判例
2 焼き鳥店×悪臭|賠償責任→認めない|商業エリアが重視された
3 産業廃棄物の野焼き×悪臭・煤煙|賠償責任→認めた
4 ゴミ集積場×悪臭|差止請求→認めない|受忍限度内の傾向が強い
5 ゴミ集積場×輪番制拒否|差止→認めた・猶予期間あり
6 ゴミ集積場×輪番制拒否|差止→認めた
7 賃貸ビルのテナント同士での『悪臭』発生→被害

1 動物・ペット×悪臭|判例

動物の臭いに関するトラブルも多いです。
単純にペットを飼育に関する問題もあります。
また,『餌付け』で猫や鳥が多数集まる,というケースもあります。
動物・ペットによる悪臭の事例は,別に説明しています。
(別記事『ペット×悪臭|判例』;リンクは末尾に表示)

2 焼き鳥店×悪臭|賠償責任→認めない|商業エリアが重視された

焼き鳥店の悪臭が問題となったケースを紹介します。

<焼き鳥店×悪臭|差止・賠償責任→認めない>

あ 事案

住宅地に焼き鳥店が設置された
周辺住民は臭いを不快・迷惑に感じた

い 提訴

周辺住民は臭気排出の差止・損害賠償を請求した

う 裁判所の判断

臭気は『神戸市悪臭防止暫定指導細目』の基準値を超えている
しかし,社会共同生活上の『受忍限度』を超えていない
→請求を認めなかった
※大阪高裁平成14年11月15日

一般的に商業エリアでは飲食店が立ち並ぶのは通常の風景です。
商業エリアでは通常形態の店舗である限り,臭気の基準は緩和方向と言えます。

3 産業廃棄物の野焼き×悪臭・煤煙|賠償責任→認めた

産業廃棄物の焼却による被害のケースを紹介します。
オープンエアーで焼却=野焼き,という方法であったのでひどい状態でした。

<産業廃棄物の野焼き×悪臭・煤煙|賠償責任→認めた>

あ 事案

産業廃棄物処理業者が建設廃棄物を大量に野焼きした
付近に新興住宅地があった
悪臭・煤煙が住宅地に拡散した
程度がひどい状態が約3年間継続した
付近の住民は次のような健康被害を受けた

い 健康被害など

ア 安眠できない日々が続いたイ 頭痛・眼痛・目の充血・喉の痛み・声のかすれ・息苦しさなど

う 裁判所の判断

受忍限度を超えている
→損害賠償責任を認める
損害額=30万円×2人
※津地裁平成9年6月26日

4 ゴミ集積場×悪臭|差止請求→認めない|受忍限度内の傾向が強い

悪臭の問題の中には『ゴミ集積場』が問題となるケースが多いです。

<ゴミ集積場×悪臭|差止請求→認めない>

あ 事案

ゴミ集積場場がアパートに隣接する道路上に設置された
大量のごみによる不潔な景観・悪臭が生じた
アパート住民やオーナーが悩まされている

い 提訴

アパートのオーナーは『ごみの排出者』に排出の差止を請求した

い 裁判所の判断

受忍限度の範囲内である
→請求を認めなかった
※大分地裁平成20年12月12日

ゴミ集積場自体はなくすことができません。
そこで『受忍限度の範囲内』と判断される傾向が強いのです。

5 ゴミ集積場×輪番制拒否|差止→認めた・猶予期間あり

ゴミ集積場の悪臭に関して『輪番制』も含めて問題となったケースです。

<ゴミ集積場×輪番制拒否|差止→認めた>

あ 事案

分譲住宅地において『ゴミ集積場』が設置された
隣接する住民は悪臭などを被るようになった
隣接住民は他の住民に対し『ゴミ集積場の輪番制』を提案した
約5年にわたって『輪番制』は実現しなかった

い 裁判所の評価|単純な受忍限度

隣接住民は次の被害を受けている
被害=悪臭・ごみの飛散・不潔な景観による不快感
この被害自体は『受忍限度』の範囲内である

い 裁判所の判断|長期間の輪番制拒否

ア 輪番制の提案 輪番制は次のような効果があるので合理的+採用は容易である
ゴミ集積場を順次移動する
=利用者全員で被害を分け合う
イ 輪番制の拒否 輪番制を長期間採用しなかったことは『受忍限度』を超える
→猶予期間を付けて差止請求を認めた
猶予期間=判決確定後6か月
※東京高裁平成8年2月28日

単に『悪臭の違法性』ではなく『輪番制拒否』が主要な事情でした。
『輪番制拒否』も含めて考えた結果『受忍限度を超えた』と判断されたのです。

6 ゴミ集積場×輪番制拒否|差止→認めた

ゴミ集積場の『輪番制拒否』に関する判例をもう1つ紹介します。

<ゴミ集積場×輪番制拒否|差止→認めた>

あ 事案

公道上の特定の箇所がゴミ集積場として指定された
隣接する住民は悪臭などを被るようになった
隣接住民は他の住人に対し『ゴミ集積場の輪番制』を提案した
1人が最後まで反対して当該場所へのゴミの排出を継続した

い 裁判所の判断

従前のゴミ集積所へのゴミ排出は違法である
→差止請求を認めた
※横浜地裁平成8年9月27日

結果は,シンプルに=猶予期間を付けずに,差止請求を認めています。

7 賃貸ビルのテナント同士での『悪臭』発生→被害

賃貸ビルに入居するテナント同士での『悪臭』が問題になることもあります。
この場合,オーナー=賃貸人も含めて責任の有無が問題になります。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|賃貸ビル×悪臭・水漏れ・エレベーター混雑・嫌がらせ→損害賠償

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