不動産の競売の際,どのような場合に「一括競売」の申立ができるのでしょうか。

1 土地のみに抵当権→建物も含めて競売できる;一括競売
2 一括競売にするかしないかは申立人が選択できる
3 一括競売の制度は建物解体無用な紛争解決を回避する趣旨である
4 一括競売では建物部分の売却代金は配当されない
5 一括競売では過剰売却禁止は適用されない

1 土地のみに抵当権→建物も含めて競売できる;一括競売

抵当権が土地のみに設定されていて,その地上に建物があるケースでは問題があります。
土地だけを競売で売却すると,土地と建物が別の所有者ということになってしまいます。
そこで一定の条件に該当する場合,土地と建物両方を競売できることとされています。
これを一括競売と言います。
一括売却という用語と似ていますが,まったくことなるものです。
<→別項目;複数の不動産を『セットにして』競売できる;一括売却
一括競売についてまとめます。

(1)一括競売の意味

一括競売,というのは,土地を対象とした担保権の実行の際,その土地上の建物も一緒に売却する,というものです。
建物は担保権の対象ではないにも関わらず売却できるのです。

(2)一括競売の要件

一括競売ができるケース,というのは民法389条に規定されています。
まとめると次の通りになります。

一括競売の要件>

※いずれも
・抵当権設定当時,土地上に建物が存在しないこと
・抵当権設定後に抵当土地上に建物が築造されたこと

2 一括競売にするかしないかは申立人が選択できる

一括競売について,条文上は申立なのか裁判所の裁量なのかは明記されていません。
しかし,通説では,次のように解釈されています。

一括競売の選択権限の実務上の解釈>

一括競売は土地抵当権者の権利

抵当権者(申立人)の自由選択可能
※我妻榮=有泉亨=清水誠=田山輝明
『我妻・有泉コンメンタール民法-総則・物権・債権』(第2版追補版)日本評論社613頁

実務上も,申立人が選択できる,という運用がなされています。
逆に言えば,競売の申立人が一括競売の申立をしていない場合,裁判所が職権で一括競売を実施する,ということはしていないのです。

3 一括競売の制度は建物解体無用な紛争解決を回避する趣旨である

一括競売という制度が定められている趣旨は次のようなものです。

一括競売の制度趣旨>

更地に抵当権を設定した後に建物が建てられた場合,一括競売の制度がなければ,次のようになる
・建物については法定地上権が生じない(=土地利用権原なし)

・建物について土地所有者(競売での買受人)から建物収去請求が認められる

・建物を解体することになる=社会経済的損失が大きい
・買受人が土地を利用するために紛争解決が必要となる→売却の障害となる

以上の不都合を避ける要請が強い

抵当権者の選択による競売対象の拡大を認めた

4 一括競売では建物部分の売却代金は配当されない

一括競売は,実際の競売手続きにおける不合理を避けることが目的の制度です。
土地・建物をセットで売却できれば,目的は達成されます。
元々,建物は抵当権の対象ではないということに変わりはありません。
そこで,抵当権者への配当の対象となるのは土地の売却代金のみです。
建物の売却代金は含まれません。

一括競売での配当>

配当の対象は土地のみ
建物の売却代金は,剰余金の交付に準じて建物所有者に交付される

5 一括競売では過剰売却禁止は適用されない

<発想>

土地の売却だけで,債権額全額を回収できる見込みである
建物もセットで一括競売としてしまうのは,過剰な売却として禁止されないのか

一括競売の場合,土地と建物がセットで売却されます。
正確に言えば,民事執行法61条の一括売却の方法が取られます。
言葉が似ているので分かりにくいところです。
とにかく,一括売却の場合は,民事執行法61条ただし書きにより,過剰,な売却が原則禁止となっています。
この理由は債権回収のための最小限にとどめるべきというものです。
一方で,一括競売の趣旨は建物収去(解体)という社会的にムダな状態を避ける,というものです。
最小限(=土地だけの売却)では不合理,という状態です。
そこで最小限を要請するルールは適用されません。
結論をまとめます。

一括競売における過剰売却禁止適用除外>

一括競売の場合,過剰売却禁止(民事執行法61条ただし書)は適用しない
※東京地方裁判所民事執行書記官実務研究会
『不動産競売手続のハンドブック』(改訂版)金融財政事情研究会76頁

条文

[民法]
(抵当地の上の建物の競売)
第三百八十九条  抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
2  前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

[民事執行法]
(一括売却)
第六十一条  執行裁判所は、相互の利用上不動産を他の不動産(差押債権者又は債務者を異にするものを含む。)と一括して同一の買受人に買い受けさせることが相当であると認めるときは、これらの不動産を一括して売却することを定めることができる。ただし、一個の申立てにより強制競売の開始決定がされた数個の不動産のうち、あるものの買受可能価額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがある場合には、債務者の同意があるときに限る。