【履行の着手までは,手付解除により無条件に契約を解消できる】
1 手付を放棄することにより無条件の解除ができる;手付解除
売買契約を特に理由なく解除できる方法として「手付解除」があります。
ただし、手付解除をするためには、手付が「解約手付」である必要があります。
売買契約書に『解約手付』と書いてあれば良いです。
なお、何も書いてない場合は解約手付として推定されることになっています。
解約手付が支払われている場合は、買主は、これを放棄すれば契約の解除ができます。
手付解除とか手付流しと言うこともあります。
2 手付解除における『履行の着手』は欠くことのできない前提行為も含む
(1)手付解除における『履行の着手』時期の解釈
手付解除は、『当事者の一方が契約の履行に着手するまで』に限られます。
履行の着手の解釈について、最高裁の判例があります。
手付解除における『履行の着手』の解釈
あ 解約手付による解除の期限
当事者の一方が契約の履行に着手するまでは手付解除ができる
※民法557条1項
い 『履行の着手』の解釈
手付解除における履行の着手について
『履行』には、欠くことのできない前提行為も含む
※最高裁判所 昭和40年11月24日
簡単に言えば、準備のうち、ある程度本格的なプロセスに入っている場合は手付解除ができない、ということになります。
3 不動産売買、建築契約の『履行の着手』は移転登記、引渡、建設工事のいずれかである
(1)一般的な不動産売買契約の『履行の着手』は登記移転、物件引渡である
不動産売買契約の場合、『履行の着手』とは、登記移転、物件引渡が原則です。
ただし、特殊な内容だと、別の解釈もあります。
(2)建売住宅は、原則どおり、登記移転、物件引渡が『履行の着手』となる
建売住宅の場合、売主の履行すべき内容は土地と、完成した建物の引渡しです。
建築工事等は引き渡しのための準備行為ですらないので、『履行の着手』にはあたりません。
原則として土地・完成した建物の引渡や登記の移転が『履行の着手』時期となります。
(3)注文住宅は、建築工事が『履行の着手』となる
注文住宅(売建てということもあります)の場合は、建物について、請負契約が締結されているはずです。
建物の建築請負契約について考えると、建築工事が履行(の着手)に該当します。
建売住宅(規格の設計に基づいた建物を売買する契約)とは違ってきますので注意が必要です。
(4)建売住宅でもオプション工事があると個性のある工事施工が『履行の着手』となる
オプション工事があると、建売住宅だけど注文住宅に近い性質を持つ、ということになります。
オプション購入した機器の種類や設置工事の進捗状況、他の購入者等への汎用性等によって解釈されます。
簡単に言えば、買主の要望により、個性の強い仕様にした部分の工事が進んでいると、『履行の着手』ありとして手付解除が認められないことになりましょう。
別の見方をすると、他の顧客に売却することが難しい状態になっていれば、手付解除ができなくなる、ということです。
履行の着手の典型的な具体例としては、間仕切り等の事後的に変更することが容易ではない部分の工事が挙げられます。
本記事では、手付解除の期限について説明しました。
実際には、個別的な事情によって手付解除ができるかどうかが違ってきます。
また手付解除以外の契約の解消が認められることもあります。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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