最判昭和31年10月5日|一任を受けた取締役による自己の報酬額の決定|決定後の取締役会による変更

1 最判昭和31年10月5日|一任を受けた取締役による自己の報酬額の決定|決定後の取締役会による変更

会社の役員報酬をめぐって、2つの場面で同じ疑問が出ます。取締役会から「君たちで配分を決めてくれ」と任された取締役が、自分の報酬まで自分で決めてよいのか。そして、いったん決まった額を、あとから取締役会が決め直せるのか。

昭和31年の最高裁判決は、この2つにまとめて答えました。石川県の瓦斯会社で、社長が自分の月額報酬を2万3,000円と決め、その後に減額され、代表取締役を解任されたという事件です。

この記事では、この判決が何をどう判断したかを、原審(名古屋高等裁判所金沢支部)の判断とあわせて説明します。

2 結論——社長が自分の報酬額を決めてよい・決めた後は取締役会も変えられない

この判決は、2つのことを判断しています。1つは、取締役会から配分を一任された社長が自分の受け取る額を決めたときに商法265条(取締役の自己取引)が働くか。もう1つは、そうして決まった額を後から取締役会が変えられるか。どちらも判決文の言葉で、下の「判示」の節に引いています。

3 事案——総額40万円の一任|社長が自分の報酬を月2万3,000円と決めた

会社は小松瓦斯株式会社、社長は坂本彌三郎です。昭和27年1月28日の臨時株主総会で、第58期(昭和27年1月1日から6月30日まで)の取締役・監査役の報酬総額を40万円と決め、各人への支払と分配方法は取締役会の決議に一任しました。

同年2月7日の取締役会は、この総会決議に基づいて、40万円のうち26万7,000円を社長と専務取締役の報酬に充て、両名の間の配分と支払方法を社長に一任する決議をしました。社長は専務取締役の宮越久作に額を示して協議しましたが同意が得られず、社長の報酬を月2万3,000円、専務取締役の報酬を月2万1,000円と決めて、会計兼務取締役に告げました。

ところが会社は、同年6月11日の取締役会で社長の報酬を6万円に、7月1日の取締役会でさらに4万円に減額したと主張し、減額後の額しか支払いませんでした。社長は同年6月11日に社長を、7月5日に取締役を解任されています。そこで社長が、決まった額と既払額の差額と、利益配当金を請求した事件です。

引用:判例

争いのない事実=第58期の取締役・監査役の報酬総額40万円と、支払・分配方法の取締役会への一任

原告が昭和二十五年七月二十八日被告会社の株主総会において同会社取締役に、昭和二十六年一月十一日被告会社の取締役会において同社長に選任せられたが、昭和二十七年六月十一日の被告会社取締役会において社長を、同年七月五日の同会社臨時株主総会において取締役をそれぞれ解任せられたこと。昭和二十七年一月二十八日開催の被告会社第五十七期臨時株主総会において、被告会社の第五十八期(昭和二十七年一月一日から同年六月三十日まで)における同会社の取締役及び監査役の受くべき報酬総額を金四十万円と決定し、各取締役及び監査役に対する右報酬金の支払並びに分配方法を取締役会の決議に一任したことはいずれも当事者間に争いがない。

※名古屋高等裁判所金沢支部 1954-11-22 下級裁判所民事裁判例集 5巻11号1902頁

引用:判例

認定事実=残額26万7,000円の配分を社長へ一任し、専務の同意が得られないまま社長が月2万3,000円と決めた

以上合計十三万三千円を四十万円から差引いた残額二十六万七千円を、社長及び専務取締役の第五十八期報酬に当てることとし、右両名の間における報酬の配分並びに支払方法を、社長たる原告に一任すること。右はいずれも出席者全員の賛成により可決されたものである。そして社長及び専務取締役に対する報酬の配分並びに支払方法を取締役会が社長に一任することは、被告会社では異例でなく、第五十六、七期にも行われて来たものであつて、第五十八期においても従来の慣行にしたがつたものであつた。そこで原告は右取締役会の決議に基いて、二三の配分案を作成してこれを当時の専務取締役宮越久作に提示したが、いずれも同取締役の承諾を得ることができなかつた。これは右決議後被告会社において右宮越久作を中心とする一派の重役連が社長たる原告を排斥しようとする動きが生じたためであつて、右動きを察知した原告は同取締役の同意を得ることは期待することができないものとして、前記配分方法に関する取締役会の決議に基いて社長の受くべき報酬を月額二万三千円、専務取締役の受くべき報酬を月額二万千円と決定し、同年三月二十七日その旨を会計係取締役和田学次に告げて、その支払を請求したのである。

※名古屋高等裁判所金沢支部 1954-11-22 下級裁判所民事裁判例集 5巻11号1902頁

4 下級審——第1審は決議を無効とし、原審は有効として請求を認めた

第1審は、社長が自分の報酬を決める取締役会の決議に自分で加わることは、特別の利害関係がある取締役の議決権を排除する規定(当時の商法260条ノ2第1項・2項ほか)に反し、決議自体が無効だと判断しました。

原審はこれを変更し、決議は有効だとして請求を認めました。そのうえで、いったん決まった報酬を会社が一方的に減額することは許されないとして、社長の請求を認容しています。

引用:判例

第1審は、社長が自分の報酬を決める決議に加わることを商法260条ノ2等に反し無効とした(原審の事実摘示)

この点に関して、原判決は、自己の報酬を定めるのに社長がその決議に加わることは、商法第二六〇条の二、第一、二項、第二三九条第五項及び第二四〇条第二項の規定に反し無効であると判示したが、これは原審が右法条の趣旨を誤解した結果であつて、たとえ原告がかような決議に加わつたとしても決議の数から除外すれば足りるのであつて、決議全体を無効とすべきものではない。

※名古屋高等裁判所金沢支部 1954-11-22 下級裁判所民事裁判例集 5巻11号1902頁

(1)原審の理由——報酬の配分は取締役全体の一般的事項で利害は対立しない

原審が決議を有効とした理由は、特別の利害関係を排除する規定の趣旨に戻って考えるところにあります。規定のねらいは、会社と対立する利害を持つ特定の取締役を議決から外して決議の公正を担保することにある。そうだとすれば、取締役全員への配分を議する場面は、特定の1人だけに関わる場面とは違う、という筋道です。

最高裁はこの点を「何ら、商法二六五条に触れるところはない」と1行で片付けているので、理由そのものは原審にあります。

引用:判例

報酬の配分は取締役全体の一般的事項で、特定の取締役にのみ関する事項ではない

思うに、特別の利害関係ある取締役は、取締役会において表決権を行使し得ないとする右規定の趣旨は会社または取締役会と相対立する利害関係のある特定の取締役の議決権行使を排除して、取締役会における決議の公正を担保しようというのがそのねらいであると解すべきであるから、株主総会が取締役の報酬及び賞与金の総額のみを決議し、取締役各自に対する支給額の決定を取締役会に一任した場合に、取締役会に出席した取締役が各自の配分につき表決に加わり、または特定の取締役にその配分方法を一任することは、取締役全体の一般的事項を議するものであつて、ある特定の取締役にのみに関する事項を議決する場合にみられるような利害が対立するものではないから、決議の公正を害するものとすることはできない。従つて原告が取締役会の各取締役に対する報酬配分の決議に加わり更にその委任に基いて、自己の報酬を定めることは、すこしも前記規定に反するものではなく、もとより有効としなければならない。

※名古屋高等裁判所金沢支部 1954-11-22 下級裁判所民事裁判例集 5巻11号1902頁

(2)原審は減額を否定したうえで、反対債権との差引は別問題だと留保した

そのうえで原審は、括弧書きで例外を 1 つ留保しています。会社が取締役に対して不法行為や債務不履行による損害賠償債権その他の反対債権を持っているとき、それで差引くのは別問題だ、というものです。報酬額そのものを変えるのではなく、支払う段階で差引く形なので、減額の禁止には当たりません。

原審は、報酬は職務執行の対価として会社と取締役の間に結ばれる契約に基づくものだから、いったん具体的に定められた額は本人の同意がない限り会社が後から一方的に減額できないと述べました。最高裁が「第二」で正当とした判断です。

引用:判例

一方的な減額は許されないが反対債権との差引は別問題である

およそ会社が取締役に対して支払う報酬は、取締役が会社の業務を執行したことの対価として受けるもので会社と当該取締役との間に結ばれる契約に基くとみるべきものであるから、一旦具体的に定められた報酬の額は当該取締役の同意がない限り、会社はこれを後日にいたつて一方的に減額することは許されないものといわなければならない。(尤も会社から当該取締役に対する不法行為なり債務不履行に基く損害賠償債権その他何等かの反対債権があつて差引するというのは別問題である)

※名古屋高等裁判所金沢支部 1954-11-22 下級裁判所民事裁判例集 5巻11号1902頁

(3)上告理由——報酬額の決定は会社と取締役の利害が相反する

上告した会社の側は、報酬額の決定は会社にとって支払義務を負うことであり、取締役にとっては請求権を得ることだから、双方の利害が反する行為だと主張しました。そして、社長と専務の意見が一致しなかった本件では、社長はさらに取締役会に諮って承認を受けるべきだったと述べています。

引用:判例

報酬額の決定は会社と取締役双方にとって利害の反する行為である

思ふに会社取締役に対する報酬額の決定は会社にとつては、その額を支払ふべき義務を負担することであり、当該取締役にとつては会社に対してその額の支払を請求し得る権利を取得することであつて、会社と取締役双方にとつて利害の反する行為であることは云ふ迄もない。

※最高裁判所 1956-10-05 最高裁判所裁判集民事 23号409頁/裁判所ウェブサイト/ジュリスト 121号88頁/商事法務 51号13頁

5 判示|一任を受けた社長が自分の報酬額を決めても商法265条に触れない

最高裁はこの争点を、判決理由の「第一」でまとめて答えています。1つの段の中で、委任の構造を確認したうえで、何が必要とされていなかったかを示し、結論として商法265条に触れないと述べる組み立てです。

(1)協議や取締役会の再承認が要るかは、一任した決議が何を定めたかで決まる

まず、委任は二段になっています。株主総会が総額40万円を決めて支払と分配方法を取締役会に一任し、その取締役会が26万7,000円を社長と専務に充てたうえで、両名の間の配分と支払方法を社長に一任した、という認定です。

そのうえで最高裁は、会社が主張した「専務と協議することを要する」「協議が調わなければさらに取締役会の承認を要する」という条件を、原判決が認定していないと退けました。裏返すと、協議や再承認が必要かどうかは、一任した決議がそれを定めていたかどうかで決まることになります。

なお、取締役会がさらに特定の取締役へ配分をゆだねてよいこと自体は、判決文が言葉にしているわけではありません。次の整理は調査官解説のものです。

退職慰労金について、株主総会から取締役会へ、さらに取締役会から代表取締役へ委任できるかは、別の記事で説明しています。

取締役の退職金決定の取締役会・代表取締役への委任

引用:判例

協議や取締役会の承認を要するというのは原判決の認定しないところである

第一、原判決の認定するところによれば、上告会社の臨時株主総会は、同会社の第五十八期(昭和二七年一月一日から同年六月三〇日まで)における同会社の取締役及び監査役の受くべき報酬総額を金四〇万円と決定し、各取締役及び監査役に対する右報酬金の支払並びに分配方法を取締役会の決議に一任したので、昭和二七年二月七日取締役会は右株主総会の決議に基き前記報酬金四〇万円の配分について結局二六万七千円を社長及び専務取締役の第五十八期報酬に当てることとし、右両名の間における報酬の配分並びに支払方法を社長たる被上告人に一任する旨の決議をしたというのであつて、所論のように、被上告人が右報酬の配分を決定するにつき専務取締役たる宮越久作と協議することを要するとか、協議の調わなかつた場合には更に取締役会の承認を受けることを要するというがごときことは、原判決の認定しないところである。

※最高裁判所 1956-10-05 最高裁判所裁判集民事 23号409頁/裁判所ウェブサイト/ジュリスト 121号88頁/商事法務 51号13頁

引用:文献・公開情報

取締役会が更に特定の取締役に配分をゆだねることも許される

取締役会が更に特定の取締役に配分をゆだねることも許される(注三)。

※水上敏稿『取締役の報酬を無報酬に変更する旨の株主総会決議と報酬請求権の帰すう』/『最高裁判所判例解説 民事篇 平成4年度』法曹会1995年p593

(2)他の取締役の同意が得られなくても、決議の趣旨に従った決定なら触れない

次に、専務の同意が期待できない事情のもとで社長が一存で決めたことについて、取締役会決議の本旨に反しないとしました。そして、社長がしたのは一任された配分を決議の趣旨に従って決定したに過ぎないから、商法265条に触れないと結論しています。

ここで効いているのは「決議の趣旨に従つて」という限定です。自分の報酬を自分で決めたこと自体が許されたのではなく、一任の枠内にとどまっていたことが理由になっています。

取締役と会社の利益が相反する取引の規制そのものは、別の記事で説明しています。

取締役の競業取引・利益相反取引の制限(会社の承認・全体像)

引用:判例

決議の趣旨に従つて決定したに過ぎないから商法265条に触れるところはない

されば、被上告人が当時、原判決認定のごとき事情によつて専務取締役たる宮越久作の同意を得ることは期待することができなかつたので、その一存をもつて原判示のように自己の受くべき報酬額を決定したからといつて、右取締役会の決議の本旨に反するものでないことは勿論であり、また前述のとおり、取締役会の決議によつて社長に一任された社長、専務取締役に対する報酬の配分を社長が決議の趣旨に従つて決定したに過ぎないのであるから、何ら、商法二六五条に触れるところはないのである。

※最高裁判所 1956-10-05 最高裁判所裁判集民事 23号409頁/裁判所ウェブサイト/ジュリスト 121号88頁/商事法務 51号13頁

6 判示|正当に決定した後は、取締役会でも報酬額を変更できない

判決理由の「第二」は、決まった後の変更を扱います。取締役会の決議に従って社長が正当に自分の報酬額を決定した後は、社長の同意がない限り、取締役会であっても変更できないとした原審の判断を正当としました。

いったん決まった報酬を会社が減らせるかという法そのものの説明は、別の記事にあります。

取締役の退職慰労金(退職慰労年金)決定後の撤回・変更

いったん決まった取締役報酬は会社が一方的に減額できない

引用:判例

正当に決定した後は社長の同意がないかぎり取締役会も変更できない

第二、前述のごとく、取締役会の決議に従い、社長が正当に一営業期間内自己の受くべき報酬額を決定した後においては、社長の同意がないかぎり、取締役会といえども、右報酬額を変更することはできないものとした原判決の判断は正当である。

※最高裁判所 1956-10-05 最高裁判所裁判集民事 23号409頁/裁判所ウェブサイト/ジュリスト 121号88頁/商事法務 51号13頁

7 あてはめ——上告棄却で、原審の判断がそのまま確定した

最高裁は上告を棄却しました。原判決を破棄していないので、原審が認めた金額と理由がそのまま確定しています。

したがって、この事件で実際に認められた報酬の数え方も原審のものです。原審は、社長を解任された日の前日までは社長として決まった月2万3,000円で計算し、解任後の20日間は社外取締役の報酬を日割りで計算して、合計から既払額を控除しています。

引用:判例

原審が認めた額=社長分5か月10日・社外取締役分20日を日割りし、既払6万円を控除した6万9,320円

社長としての報酬として、被告会社から一ケ月二万三千円の割合による五ケ月と十日分の報酬十二万二千六百六十円、更に同年六月十一日から同月三十日までは、社外取締役として在任した二十日間の前記社外取締役報酬を日割で計算した千六百六十円及び前記期末報酬六千円のうち原告が本訴で請求する内金五千円以上合計金十二万九千三百二十円の請求権を持つものというべきところ、現在までにその内金六万円の支払を受けたことは原告みずからの認めるところであるから、被告会社は原告に対し、右金額を控除した残金六万九千三百二十円を支払う義務あるものとしなければならない。

※名古屋高等裁判所金沢支部 1954-11-22 下級裁判所民事裁判例集 5巻11号1902頁

8 決めていないこと——判例を変更したのか・職務に応じた変更・全員の同意

この判決が述べていない点が3つあります。いずれも、判決の射程をどこまで広げられるかという問題です。

(1)大判昭和7年6月10日を変更したのかは、この判決が述べていない

この判決の前に、大判昭和7年6月10日(民集11巻13号1365頁)が、いったん決まった報酬額を取締役会の多数決で変更できるとしていました。昭和31年の本判決がこれを変更したと理解する学説が多いのですが、本判決自身は従前の判例を変更するとは述べていません。

調査官解説は、大審院の事件では毎決算期ごとに協議で決める仕組みだったから、まだ具体的に定まっていない次期以降の配分を多数決で決められると判示したにすぎないとも読めると指摘しています。そう読めば、2つの判決は矛盾しないことになります。

引用:文献・公開情報

大判を変更したと理解する学説が多い

この判決は、具体的に定まった報酬額を取締役会決議によって変更し得ることを判示したものであって、②の最二小判昭和三一・一〇・五によって変更されたと理解する学説が多い(注五)。

※水上敏稿『取締役の報酬を無報酬に変更する旨の株主総会決議と報酬請求権の帰すう』/『最高裁判所判例解説 民事篇 平成4年度』法曹会1995年p593

引用:文献・公開情報

大判は、まだ定まっていない次の決算期以後の配分を多数決で決められるとしたにすぎない

そうだとすると、この判決は、未だ具体的に定められていない次の決算期以後の配分決定は、重役会の多数決によれば足りることを判示したものにすぎないことになろう

※水上敏稿『取締役の報酬を無報酬に変更する旨の株主総会決議と報酬請求権の帰すう』/『最高裁判所判例解説 民事篇 平成4年度』法曹会1995年p601〜602

(2)解任後に低い額で認めたことを「職務に応じた変更」と読めるかは争いがある

原審は、社長を解任された後の期間については社外取締役の額で報酬を認めています。これを「職務の内容に応じて報酬も変わることを当然の前提にしていた」と読む見解があります。

もっとも、原告がもともと解任後については社外取締役の額しか請求していなかった事案なので、そう読めるとは限りません。本判決も原審も、職務が変われば報酬も変わるとは述べていません。

引用:文献・公開情報

原告が解任後は非常勤の額のみを請求していた事案なので職務の変更を前提としているとはいえない

(注六)この最二小判の原判決は、名古屋高金沢支判昭和二九年一一月二二日下民集五巻一一号一九〇二頁。
この判決が、代表取締役解任後は、社長について定められた額ではなく非常勤取締役について定められた額によって報酬請求を認容しているところから、職務内容に応じて報酬も変更することを当然の前提として判断しているとする指摘もある(前嶋京子「判批」ひろば四七巻五号七六頁、平六)。
しかし、原告が代表取締役解任後は非常勤取締役について定められた報酬額のみを請求していた事案である(原告の請求をすべて認容しているところから、このことがうかがえる。)
から、職務が変更した時点から報酬も変更することを当然の前提としているとはいえない。

※水上敏稿『取締役の報酬を無報酬に変更する旨の株主総会決議と報酬請求権の帰すう』/『最高裁判所判例解説 民事篇 平成4年度』法曹会1995年p602

(3)配分の一任に取締役全員の同意が要るかは、この判決が述べていない

取締役会が特定の取締役に配分を一任できること自体は、本判決が認めています。ただし、一任するには取締役全員の同意が必要だとする学説も多くあります。本判決は、一任の決議が有効に成立するための要件については述べていません。

引用:文献・公開情報

配分の一任には取締役全員の同意を要するとする学説も多い

大隈=今井・前掲(注一)一六六頁など、取締役全員の同意を要するとする学説も多い。

※水上敏稿『取締役の報酬を無報酬に変更する旨の株主総会決議と報酬請求権の帰すう』/『最高裁判所判例解説 民事篇 平成4年度』法曹会1995年p601

9 おわりに

この判決は、報酬の配分を任された取締役が自分の分まで決めてよいこと、そして決まった額は本人の同意なしに動かせないことを、まとめて示したものです。実務では、一任の決議をどう書くかが結論を左右します。協議や再承認を条件にするかどうかを決議に書いておけば、その条件が効くからです。

退職慰労金については、会社法361条が適用されるか、決定を委任できるか、決定後に変更できるかを、それぞれ別の記事で説明しています。

取締役の退職金・弔慰金への会社法361条の適用(株主総会決議の要否)

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。原文の段落の行頭にある字下げは再現していません。

本記事の表示では、読点を「、」に統一しています(引用の原文が全角の「,」や半角の「,」である場合を含みます。ただし「1,000」のような桁区切りはそのまま表示しています)。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
2項道路の定義|基準日に建物が立ち並んでいた幅4m未満の道で指定を受けたもの
いったん決まった取締役報酬は会社が一方的に減額できない

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00