【囲繞地通行権の通路の幅と接道義務・例外許可申請】
1 『囲繞地通行権』は『最小限度』の位置・幅が認められる
囲繞地通行権はやむを得ずに認められる通行権です。
通行が確保されつつ、最小限度のものに決めることになっています。
(別記事『囲繞地通行権・基本』;リンクは末尾に表示)
つまり、通路の『位置・幅』の候補のうち、囲繞地所有者の損失が最小となるものが選択されます。
実務では、具体的にどの『位置・幅』が『損失が最小』となるのか、について見解が対立することが多いです。
2 囲繞地の通路の位置・幅については『協議』で定めておくと良い|契約の種類・内容
(1)通行権の合意の種類
囲繞地通行権の通路の位置・幅については、通常まずは協議で定めます。
合意に達した場合、合意内容を書面として調印しておく=記録・証拠にしておくとベストです。
『通行に関する合意』はいくつかの種類があります。
土地を通行する契約形態の例
あ 賃貸借契約
い 通行地役権設定契約
う 使用貸借契約
え 囲繞地通行権(の内容の合意)←推奨されない(後述)
(2)通行権の内容
契約の内容・条項として明確化しておくと良い項目は次のとおりです。
土地を通行する契約の内容
あ 通行する範囲
幅や位置など
い 通行する時間帯
う 通行する態様
自動車・オートバイの可否など
え 期間
お 対価
使用貸借の場合は原則無償
3 合意内容を書面にする場合、囲繞地という用語は用いない方が良い
(1)囲繞地通行権の範囲は合意による決定、になじまない
私道(私有地)を通行することについて合意に至り、書面にすることがあります。
元々の通行権が囲繞地通行権という前提であれば、その範囲を変更・合意した、という発想もあります。
この場合、囲繞地通行権の範囲を協議で確定した、と考えられます。
しかし、囲繞地通行権というのは、最低限の範囲に限定されています。
※民法211条1項
逆に言えば最低限を超える部分は合意により設定した使用権(≠囲繞地通行権)ということになります。
結論として最低限を超える部分の使用権の法的性格が良く分からないことになります。
賃貸借なのか、仮にそうだとして、期間はどうなるのか、などです。
(2)通路の範囲の合意の書面に囲繞地通行権と記載しても無効となるわけではない
以上は、厳密に分析した結論です。
この理論でいくと、通路の土地使用者がこの前拡張した部分は元通りに狭めると主張できることになります。
しかし、実際にこのようなケースでは、このような前言を覆す言動は制限されるでしょう。
そのタイミングにもよりますが、信義則に反するということになるからです。
※民法1条2項
いずれにしても、通路の幅を拡張した場合は、法的性質も含めてより明確にしておくとベターです。
4 囲繞地の通路の位置・幅が協議で決まらない→訴訟提起できる
通路の位置・幅について、袋地所有者・囲繞地所有者の見解が一致しないこともよくあります。
この場合は、訴訟によって裁判所が定めるという方法を取ることもできます。
裁判所の判断方法は細かいですが、概要をまずはまとめます。
囲繞地の通路|裁判所の判断の傾向
ア 『囲繞地所有者の意向』が尊重される傾向イ 過去の通行の実績(既成事実)を維持する傾向
5 『囲繞地の通路の幅』は2メートル程度と決められることが多い
囲繞地通行権ではその通路の幅が問題になることがあります。
囲繞地通行権は、通行権を有する者のために必要最小限にとどめることとされています。
※民法211条1項
通路の幅としては、ごく一般的には2メートル程度が妥当とされています。
これは、建築基準法における接道義務の前提となる『道路』の規定に整合した考え方です。
詳しくはこちら|接道義務・接道要件|但し書き道路・協定道路
6 過去に自動車が通行していた場合、囲繞地の通路幅は2〜4メートルとなることもある
仮に通路幅が2メートルだと自動車の通行が難しいです。
しかし、元々が他人所有地を強制的に使用するという特殊な状態です。
自動車の通行が確保されることは当然ではありません。
囲繞地通行権×自動車の通行(幅)
あ 『自動車による通行を前提とする』べきかどうか
諸事情を総合考慮して判断すべき
い 考慮事情|例
ア 自動車による通行を認める必要性イ 周辺の土地の状況ウ 囲繞地の所有者が被る不利益※最高裁平成18年3月16日
大雑把に言えば、長期間、囲繞地の通路を自動車が通行していた、という場合に『幅』が広めになる傾向があります。
自動車の通行を前提とする囲繞地通行権|判例
自動車通行を内容とする囲繞地通行権を認めた
※東京高裁平成19年9月13日;上記最高裁判決の差戻審
『幅』が広めに認められるための事情をまとめます。
2メートルより大きな通路幅が認められる特殊事情
ア 従前より自動車が通行していた経緯があるイ 火災時の消火活動の面で、自動車が進入できないと大きな問題がある
事情によっては、通路幅として4メートル前後が認められる判例もあります。
7 囲繞地通行権の通路幅が小さいので接道義務クリアしない→拡張は認められない傾向
(1)通路が2メートル未満→接道義務をクリアするために拡張を希望する
囲繞地の通路の幅によっては、建築基準法上の問題が生じます。
通路の幅が2メートルより狭いと『接道義務』を満たさない→建物を建てられない、ということが生じるのです。
この点、既存の通路の幅が2メートル未満の場合、袋地所有者としては『拡張』が望まれます。
(2)既存の通路幅の拡張は否定される傾向
ここで『既存の通路が長期間存続していた』という場合は『既成事実』として尊重される傾向があります。
囲繞地の通路幅×接道義務
幅員が2メートル未満だと接道要件を満たさない
→幅員として2メートルが望まれる
→この理由だけで『2メートルの幅員』が認められるわけではない
※最高裁昭和37年3月15日
※最高裁平成11年7月13日
長期間維持されていた『幅』は維持される傾向が強いです。
この点、道路の幅が2メートル未満だと『接道義務違反の建物』という状態になります。
しかし通常は『既存不適格』として、違法扱いはされません。
詳しくはこちら|接道義務・接道要件|但し書き道路・協定道路
8 『接道義務』をクリアしない→『接道義務の例外の許可申請』という方法がある
(1)接道義務を満たさない→例外許可申請
建築基準法上、原則的に、最低2メートルの幅の接道がないと、建築物の敷地として認められません。
要は、通路の幅が2メートル未満だと、建物を建築するすることができない、ということです。
『既存の建物は良いけれど、建替えることができない』、ということになります。
しかし、一定の条件のもと、接道が2メートル未満であっても、例外的に許可されて、建築できるという制度があります。
※建築基準法43条1項ただし書
接道義務の例外の許可申請という手続です。
(2)接道義務に満たない→囲繞地通行権の通路の幅を広く解釈する方向性
仮に例外許可がなされない、という場合は、このことが、通路の幅の解釈に影響します。
最低限の解釈として建物の建築ができることを前提にする、という考え方もあります。
もちろん、他の判断要素も多いです。
このことだけで通路の幅が2メートルまで認定されるとは限りません。
(3)接道義務の例外許可がなされない→囲繞地通行権の通路幅拡張の請求という遂行順序
接道義務の例外許可申請と、囲繞地通行権の通路幅の主張については、どのような順序で行うかはルールがあるわけではありません。
ごく一般的に考えると、最初に接道義務の例外許可申請を行うと良いでしょう。
仮に許可が下りない場合、許可が下りなかったという事実を含めて、囲繞地通行権の通路幅を拡張する請求に使えるからです。
つまり通路が2メートルに拡張されないと建物を建替えることができないという事情をアピールする、というところがポイントです。
(4)囲繞地通行権の通路幅拡張の請求が認められない→再度の接道義務の例外許可申請という方法
仮に、囲繞地通行権の範囲についての訴訟で、拡張が認められない、ということであれば、再度、接道義務の例外許可申請を行う、という方法を取ることもできます。
最初の申請時と異なり、公的に、囲繞地通行権の範囲が確定されているので、例外許可が下りない限り、建物建替えができない、ということをアピールできます。
もちろん、これによって許可が下りるとは限らないですが、判断の中でプラス要素にはなりましょう。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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