【寄与分の要件(寄与分の判断基準)の基本】

1 寄与分の要件(寄与分の判断基準)の基本

遺産分割での不公平を是正する仕組みとして、寄与分という制度があります。
詳しくはこちら|寄与分の基本(制度の趣旨や典型例)
実際の事案では、寄与分として認められるかどうかについて熾烈な対立が生じることがよくあります。本記事では、寄与分(特別の寄与といえるかどうか)の判断基準の基本を説明します。

2 寄与分|要件|基本

相続における不公平を修正する寄与分という制度があります。
詳しくはこちら|寄与分|全体|趣旨・典型例
実務では寄与分の判断が争点となることがとても多いです。
本記事では寄与分の要件や判断基準を説明します。
寄与分の要件は条文に規定されています。
まずは条文における要件だけを整理します。
解釈については後述します。

寄与分|要件|基本

あ 寄与分の要件

次の『ア・イ・ウ』のどれかによって『エ』に該当する

い 対象類型

ア 事業に関する貢献 被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付
イ 療養看護ウ その他の方法

い 程度基準(後記※1

エ 被相続人の財産の維持または増加に特別な寄与をしたこと ※民法904条の2

実際には、寄与分の判断で見解が熾烈に対立するケースが多いです。
解釈における基準や事例などを次に説明します。

3 程度基準|基本・典型例

前記の要件のうち『対象類型』の解釈はそれ程問題にはなりません。
重要なのは『程度』基準です。
実務上『程度』の判断で見解が対立することがとても多いのです。
まずは典型的な判断の傾向をまとめます。

程度基準|典型的判断傾向(※1)

あ 程度基準|条文・規定

被相続人の財産の維持または増加に特別な寄与をしたこと
※民法904条2項

い 否定例|因果関係なし=精神的寄与

相続人が労力を提供したが、財産の増減と関係しない
『精神的寄与(にとどまる)』とも呼ぶ

う 否定例|『援助』の範囲内

被相続人の財産が増加した
しかし、ごく平均的な家族としての援助の範囲内にとどまる

4 寄与の「程度」に関する判断基準

(1)寄与の「程度」に関する基本的な基準

程度基準についてもうちょっと詳しく整理します。
主要な判断要素をまとめました。

寄与の「程度」に関する基本的な基準

あ 特別性

ア 扶養義務の範囲 元々扶養義務を負っている場合
例;親族としての扶助、夫婦間の相互協力義務
→これを超過しないと寄与分が否定される方向にある
※民法730条、752条、877条など
イ 他の相続人の行った援助の程度ウ 援助の及ぼす当該相続人の経済状態への影響(相対的負担レシオ)

い 無償性

無償と評価できるか

う 継続性

ある程度の期間継続しているか
※前橋家裁高崎支部昭和61年7月14日
※上原裕之ほか『遺産分割』青林書院p214〜219

(2)寄与分と扶養の区別(判断基準)

特に療養看護については、扶養請求権(扶養義務)と衝突します。この区別について整理します。

寄与分と扶養の区別(判断基準)

あ 基本的考え方

扶養義務の範囲内/外 寄与分該当性 他の扶養義務者への求償 扶養義務の範囲 該当しない できる 扶養義務の範囲 該当する できない

い 寄与分と扶養請求のコンフリクト

寄与分の申立→却下→確定となった場合
→その後の『扶養料の請求』
→認める
理由=『寄与分の審理対象』と『扶養料(求償権)』は重複していない
※大阪高裁平成15年5月22日

5 程度基準|否定例|従事程度が低い

程度基準の判断をした判例は非常に参考になります。
『従事程度』を理由にした否定例を紹介します。

程度基準|否定例|従事程度が低い

あ 事業への協力

農業後継者候補として子供が養豚業の手伝い・家業への協力をしてきた
『普通の農家の子供』以上の貢献度であった
期間は主に小学生〜高校生の頃であった
学業の合間の手伝いに過ぎない

い 裁判所の判断

従事期間が短い
片手間であった
→『特別の寄与』としては認めない
※前橋家裁高崎支部昭和61年7月14日

6 程度基準|否定例|寄与割合が低い

程度基準の判断をした判例をもう1つ紹介します。
これは『寄与割合』を理由とした否定例です。

程度基準|否定例|寄与割合が低い

あ 営業への従事

被相続人が設立した会社の営業に従事した
遺産形成に関与があった

い 裁判所の判断

寄与の割合が小さい
→『特別の寄与』としては認めない
※東京高裁昭和56年5月18日

本記事では、寄与分にあたるかどうかの判断について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に寄与分など、相続や遺産分割に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【共有物分割における共有者間の債権の保護(民法259条)】
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