【家事審判の対審構造の特徴(処分権主義・弁論主義・既判力なし)】
1 家事審判|『不成立』はない|調停とは違う
家事審判は『家事調停』に続いて行われることが多いです。
そこで手続の内容を間違ってしまう方もよくいらっしゃいます。
『不成立』について整理しておきます。
家事審判|『不成立』はない
あ 家事審判|実務的な進行
審理の中で『和解協議』が行われることが多い
実際に和解が成立して終了するケースも多い
い 家事審判|最終段階
協議により和解に至らない場合
→家裁が『審判』を行う
家裁による判断結果の『決定』である
う 比較|家事調停
調停では原則的に『当事者の合意』がない限り成立しない
→『不成立』として手続が終了する
2 家事審判/調停|不成立|ありがちな誤解
家事審判・調停は『不成立』の扱いに違いがあります(前記)。
これについて、当事者には誤解が生じやすいです。
これをまとめます。
家事審判/調停|不成立|ありがちな誤解
あ 前提事情
家事調停が『不成立』となり終了した
→手続が家事審判に移行した
い 当事者の誤解
『相手が拒否したので手続が振り出しに戻った』
『また同じことが繰り返されるのではないか』
審判については『不成立』はないのです。
『どちらかが拒絶するから振り出しに戻る』ということはありません。
審判が出されれば非常に強力な解決となります。
仮に相手方が審判内容に従わない場合、差押などの強制執行が可能です。
債務名義の種類は確定判決・和解調書・公正証書(執行証書)などがある
3 家事審判における処分権主義・弁論主義
一般的な訴訟では『処分権主義』や『弁論主義』が採用されています。
しかし、家事審判ではこれらが採用されていません。
この特殊な性格についてまとめます。
家事審判における処分権主義・弁論主義
あ 処分権主義の内容
『当事者の請求』の範囲内で裁判所が判断する
→裁判所が考えたことでも判決に反映できない
い 一般的な訴訟の処分権主義
『訴訟』一般では『処分権主義』が採用されている
※民事訴訟法246条
う 家事審判における処分権主義の排除
家事審判では『処分権主義』が採用されていない
→『当事者の主張なし』でも裁判所が審判に入れることができる
※最高裁平成2年7月20日;財産分与に関する控訴審での不利益変更
※犬伏由子/谷口知平ほか『新版注釈民法(22)親族(2)』有斐閣p206
え 裁判所の後見的役割(弁論主義の排除)
家事審判では裁判所に『後見的役割』が求められている
→家裁に大きな裁量が認められている
※家事事件手続法56条;職権での調査・証拠調べ
家事審判のように、裁判資料の収集・提出が当事者だけでなく裁判所の権能かつ責任でもあるとする原則を『職権探知主義』といいます。弁論主義との違いは、別の記事で説明しています。
もっとも、職権探知主義が採られていても、実際の審理が建前どおりに進むとは限りません。人事訴訟については、職権探知は例外的・補充的なものと位置づけられ、運用は弁論主義に近いと観察されています。その実情は、別の記事で説明しています。
4 当事者の請求以上を認める審判|具体例
家事審判では『処分権主義』が採用されていません。
そこで『当事者の請求以上』の審判が出されることがあります(前述)。
具体的なケースを紹介します。
当事者の請求以上を認める審判|具体例
あ 離婚時の財産分与|請求金額以上を認めた
例;『扶養的財産分与』の中の『割引率』の解釈に関して
当事者の主張する解釈よりも『有利』な解釈を裁判所が採用した
離婚後の生活費の支払(保障)が認められることもある(扶養的財産分与)
い 離婚時の財産分与|『マイナス分』を認めた
財産分与でマイナス(逆方向に支払いを命じる)が認められることは少ないが、認めることもある
財産分与の計算における不合理な支出(浪費・事業の損失)の持ち戻し
当事者が『マイナス分』はあきらめて主張していなかった
→裁判所が審判の中で『マイナス分』を採用した
5 家事審判の既判力|ないが現実的には尊重される
家事審判が一般の訴訟と違うものとして『既判力』があります。
このことについてまとめます。
家事審判の既判力
あ 既判力|典型例
訴訟→判決確定に至った場合
→『確定判決』には既判力がある
※民事訴訟法114条
い 既判力の意味
その後の裁判が『確定判決』に拘束される
=『確定判決』の内容を前提として別の判断を行う
う 既判力が生じるもの
| 裁判形式 | 既判力の有無 |
| 訴訟手続→判決 | あり |
| 審判手続→決定 | なし |
| 調停手続→調停調書 | なし |
え 審判×既判力|実務
家事審判には既判力はなし(上記)
しかし審判内容は現実的に尊重される
→別の審判・訴訟ではこの判断が前提とされることが多い
特に前提事情に変更がない場合は特にこの傾向が強い
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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