1 寄与分|要件|基本
2 程度基準|基本・典型例
3 程度基準|判断要素
4 程度基準|否定例|従事程度が低い
5 程度基準|否定例|寄与割合が低い

1 寄与分|要件|基本

相続における不公平を修正する寄与分という制度があります。
詳しくはこちら|寄与分|全体|趣旨・典型例
実務では寄与分の判断が争点となることがとても多いです。
本記事では寄与分の要件や判断基準を説明します。
寄与分の要件は条文に規定されています。
まずは条文における要件だけを整理します。
解釈については後述します。

<寄与分|要件|基本>

あ 寄与分の要件

次の『ア・イ・ウ』のどれかによって『エ』に該当する

い 対象類型

ア 事業に関する貢献
被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付
イ 療養看護
ウ その他の方法

い 程度基準(後記※1)

エ 被相続人の財産の維持または増加に特別な寄与をしたこと
※民法904条の2

実際には,寄与分の判断で見解が熾烈に対立するケースが多いです。
解釈における基準や事例などを次に説明します。

2 程度基準|基本・典型例

前記の要件のうち『対象類型』の解釈はそれ程問題にはなりません。
重要なのは『程度』基準です。
実務上『程度』の判断で見解が対立することがとても多いのです。
まずは典型的な判断の傾向をまとめます。

<程度基準|典型的判断傾向(※1)>

あ 程度基準|条文・規定

被相続人の財産の維持または増加に特別な寄与をしたこと
※民法904条2項

い 否定例|因果関係なし=精神的寄与

相続人が労力を提供したが,財産の増減と関係しない
『精神的寄与(にとどまる)』とも呼ぶ

う 否定例|『援助』の範囲内

被相続人の財産が増加した
しかし,ごく平均的な家族としての援助の範囲内にとどまる

3 程度基準|判断要素

程度基準についてもうちょっと詳しく整理します。
主要な判断要素をまとめました。

<程度基準|判断要素>

あ 特別性

ア 扶養義務の範囲
元々扶養義務を負っている場合
例;親族としての扶助,夫婦間の相互協力義務
→これを超過しないと寄与分が否定される方向にある
※民法730条,752条,877条など
イ 他の相続人の行った援助の程度
ウ 援助の及ぼす当該相続人の経済状態への影響(相対的負担レシオ)

い 無償性

無償と評価できるか

う 継続性

ある程度の期間継続しているか
※前橋家裁高崎支部昭和61年7月14日
※上原裕之ほか『遺産分割』青林書院p214〜219

4 程度基準|否定例|従事程度が低い

程度基準の判断をした判例は非常に参考になります。
『従事程度』を理由にした否定例を紹介します。

<程度基準|否定例|従事程度が低い>

あ 事業への協力

農業後継者候補として子供が養豚業の手伝い・家業への協力をしてきた
『普通の農家の子供』以上の貢献度であった
期間は主に小学生〜高校生の頃であった
学業の合間の手伝いに過ぎない

い 裁判所の判断

従事期間が短い
片手間であった
→『特別の寄与』としては認めない
※前橋家裁高崎支部昭和61年7月14日

5 程度基準|否定例|寄与割合が低い

程度基準の判断をした判例をもう1つ紹介します。
これは『寄与割合』を理由とした否定例です。

<程度基準|否定例|寄与割合が低い>

あ 営業への従事

被相続人が設立した会社の営業に従事した
遺産形成に関与があった

い 裁判所の判断

寄与の割合が小さい
→『特別の寄与』としては認めない
※東京高裁昭和56年5月18日