1 解雇無効→賃金継続
2 解雇無効→他社への就職|損益相殺|基本・上限
3 解雇無効→他社への就職|損益相殺|理論
4 前提|休業手当×平均賃金以外の賃金|概要
5 解雇無効→他社への就職|損益相殺|上限の対象外
6 他社への就職×従業員の地位確認請求棄却

1 解雇無効→賃金継続

不当解雇は『解雇無効』と判断されることがあります。
この場合には『賃金』は発生し続けることになります。

<解雇無効→賃金継続>

あ 前提事情

雇用主の都合により従業員を解雇した

い 前提|法的評価

雇用主に帰責事由がある
解雇は無効である

う 法的効果

『賃金請求権』が存続している
→雇用主は『平均賃金』の支払義務がある
→本記事では『従前平均賃金』と呼ぶ
※最高裁昭和37年7月20日米極東空軍山田部隊不当解雇事件

『平均賃金』については除外されるものもあります。
注意が必要です(後述)。

2 解雇無効→他社への就職|損益相殺|基本・上限

実務では,不当解雇の紛争中に『他社への就職』が行われることもあります。
交渉や訴訟はある程度長期化することがあるためです。
他社への就職があった場合『従前の雇用主が支払う賃金』に影響があります。

<解雇無効→他社への就職|損益相殺|基本・上限>

あ 前提事情

元従業員が他の職に就いた
賃金収入を得ている
→本記事では『新規賃金』と呼ぶ

い 控除|損益相殺

雇用主の支払金額を算定する際
→『従前平均賃金』から『新規賃金』を控除する

う 控除限度額

控除限度は『従前平均賃金』の4割である
※最高裁昭和37年7月20日米極東空軍山田部隊不当解雇事件

これは結論だけをまとめたものです。
このような控除やその上限の理由を次に説明します。

3 解雇無効→他社への就職|損益相殺|理論

前述の損益相殺の理論的な内容をまとめます。

<解雇無効→他社への就職|損益相殺|理論>

あ 原則|控除しない

雇用主の帰責事由による『就業不可能』状態にある
→『就業しないこと』による『賃料減額』はできない
※民法536条2項前段

い 例外|控除する

従業員が他社への就業により賃金収入を得た
→『就業しないこと』によって利益を得たことになる
→『償還』義務が生じる
※民法536条2項後段

う 控除額上限

休業の場合でも『平均賃金の6割』は支払義務は消滅しない
→控除後も『6割』は確保されるべきである
※労働基準法26条
※最高裁昭和37年7月20日米極東空軍山田部隊不当解雇事件

4 前提|休業手当×平均賃金以外の賃金|概要

前述の損益相殺では注意が必要です。
『平均賃金』から除外される賃金もあるからです。
まずは前提となる部分をまとめます。

<前提|休業手当×平均賃金以外の賃金|概要>

あ 前提|休業手当×平均賃金以外の賃金

『平均賃金』に含まれない賃金
→休業手当の算定から除外されている
※労働基準法12条4項,26条

い 平均賃金に含まれない賃金|概要

ア 臨時に支払われた賃金
イ 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金
ウ 通貨以外のもので支払われた賃金
※労働基準法12条4項

『平均賃金』に関する事項は別に説明しています。
詳しくはこちら|平均賃金|計算方法・除外される賃金

なお『解雇が有効』という場合は,当然賃金は発生しません。

5 解雇無効→他社への就職|損益相殺|上限の対象外

前述の『平均賃金の対象外』は『解雇無効の際の損益相殺』に影響します。

<解雇無効→他社への就職|損益相殺|上限の対象外>

あ 上限の対象外

他社への就職による賃金収入のうち
『平均賃金』に含まれない賃金
→控除の上限はない
ただし控除の元となる賃金は次のものに限られる

い 控除対象

ア 従前賃料のうち『平均賃金』に含まれない賃金
イ 発生期間が賃金計算の対象期間と時期的に対応する
※福岡地裁昭和56年3月31日あけぼのタクシー事件

細かいところですが,実際の計算結果に大きく影響することもあります。

6 他社への就職×従業員の地位確認請求棄却

解雇無効の紛争では『従業員の地位確認請求』を主張することもあります。
(別記事『解雇無効|請求内容・解決手続』;リンクは末尾に表示)
『他社への就職』は『従業員の地位確認請求』にも影響します。

<他社への就職×従業員の地位確認請求棄却>

従業員が他社に就職し,就業している
→従前の会社に復帰する意思が認められない
→労働契約上の地位確認請求を棄却した
※東京地裁平成15年4月28日モーブッサン・ジャパン事件

当然ですが『賃金請求』自体は否定されません。
新たな賃金収入の金額分が控除されるだけです(前述)。