1 夫婦間の契約の取消権行使の効果
2 夫婦間の契約取消権の第三者保護
3 夫婦間の契約の取消後の第三者の立場

1 夫婦間の契約の取消権行使の効果

夫婦間の契約は取り消せるという規定があります。
詳しくはこちら|夫婦間の契約取消権の基本的事項(背景・趣旨・実害・条文削除意見)
本記事では,取り消した場合の効果について説明します。
基本的な効果は契約の効力が失われるというものです。同じ取消でも他の規定と比べて強力です。そのため,第三者を保護するただし書もあります。

<夫婦間の契約の取消権行使の効果(基本)>

あ 未履行のもの

未履行の契約を取り消した場合
→履行義務は消滅する

い 履行済みのもの

既に履行された契約について
→取消は可能である
取消により原状回復義務が生じる
原状回復義務
※能見善久ほか『論点体系判例民法9親族』第一法規出版p83

う 第三者保護規定(概要)

『第三者』を保護する規定がある
→原状回復義務は制限される(後記※1)
※民法754条ただし書

2 夫婦間の契約取消権の第三者保護

夫婦間の契約取消権については,第三者を保護する規定があります。これについての解釈論をまとめます。

<夫婦間の契約取消権の第三者保護(※1)>

あ 第三者保護規定

『第三者』が存在する場合
→『第三者』が保護される
→原状回復義務は生じない
※民法754条ただし書

い 『第三者』の解釈

保護される『第三者』について
→取消権行使前に出現した利害関係者のことである

う 具体例

夫が妻に土地を贈与した(※2)
妻がAに土地を売却した
夫が妻への贈与(上記※2)を取り消した
→A(+妻)は土地を夫に戻さなくて良い

3 夫婦間の契約の取消後の第三者の立場

『第三者』に該当すると保護されます(前記)。これに該当しない『第三者』は,判例の見解を前提にすると保護がほとんどない状態になります。無条件に負ける,つまり権利を剥奪される結果になります。

<夫婦間の契約の取消後の第三者の立場>

あ 基本的事項

取消後に出現した利害関係者について
=『取消後の第三者』と呼ぶ
→『第三者保護規定』は適用されない(上記※1)

い 取消後の第三者の立場(判例)

取消『後』に贈与を受けた者
→第三者に該当しない+『対抗関係』ではない
→仮に登記を得ていても返還義務を負う
※大判大正3年12月25日

う 取消後の第三者の立場(反対説)

対抗関係として扱う
※民法177条
※我妻栄『親族法 法律学全集23』有斐閣p97
※青山道夫ほか『新版注釈民法(21)』有斐閣p391