1 民事トラブルにおける証拠の重要性(前提)
2 訴え提起前の照会・証拠収集処分(全体)
3 提訴予告通知制度の基本的事項
4 提訴予告通知の方法
5 提訴予告通知の記載事項
6 提訴予告通知の相手方による制度の利用

1 民事トラブルにおける証拠の重要性(前提)

民事のトラブルの解決では『証拠』が非常に重要です。
訴訟の審理における認定で用いるものであり,結論に直接的な影響を及ぼします。
さらに,交渉の段階でも,訴訟となったと仮定して,判決の予想がベースとなります。つまり,交渉でも証拠が結果に大きな影響を与えるのです。

2 訴え提起前の照会・証拠収集処分(全体)

証拠を収集する方法は多くあります。その1つとして訴え提起前の照会・証拠収集処分という制度について説明します。
これは平成15年の民事訴訟法改正によって作られた制度です。弁護士によっては知らないか,知っていても使う発想がない,という方が多いです。逆に言えば,これを活用すると相手より有利になる,ということもあり得ます。
最初に制度の大枠をまとめます。

<訴え提起前の照会・証拠収集処分(全体)>

あ 制度の誕生

平成15年の民事訴訟法改正により新設された
※民事訴訟法132条の2〜9;第1編第6章

い 含まれる制度

ア 提訴予告通知
提訴する予定と請求の内容を通知する手続(後記※1)
イ 提訴前照会
提訴前に当事者間で照会をする手続
詳しくはこちら|提訴前照会制度(利用場面・回答義務と除外事項・照会書の記載事項)
ウ 提訴前証拠収集処分
提訴前に裁判所の主導により証拠を収集する手続
詳しくはこちら|提訴前証拠収集処分制度(種類・裁判所の判断基準・申立書の記載事項)

3つの制度のうち,提訴予告通知については次に説明します。
他の2つの制度については別の記事で説明しています(リンクは前記)。

3 提訴予告通知制度の基本的事項

提訴予告通知の制度の基本的事項をまとめます。

<提訴予告通知制度の基本的事項(※1)>

あ 提訴予告通知の概要

ア 通知の発信者
訴えを提起する予定の者
イ 通知の相手方
訴えの被告となるべき者
ウ 通知の内容(概要)
訴えを提起する予定・予告
※民事訴訟法132条の2第1項
エ 通知の効果
通知の発信者・相手方は次の手続を利用することが可能となる
ア 提訴前の照会
イ 提訴前の証拠収集処分
※民事訴訟法132条の2,3,4

4 提訴予告通知の方法

提訴予告通知の通知方法は法律上,一定の方式が定められています。通知の方法についてまとめます。

<提訴予告通知の方法>

あ 記録化・証拠化

書面で通知する必要がある
内容証明郵便を用いることが望ましい
※民事訴訟法132条の2第1項

い 記載事項

提訴予告通知は法定の記載内容が必要である(後記※2)

う 他の内容との兼用

提訴予告通知は他の内容の通知を兼ねることもできる
例;提訴前照会

5 提訴予告通知の記載事項

提訴予告通知は一定の記載事項が定められています。記載事項が欠けると提訴予告通知として扱われません。つまり,提訴前照会や提訴前証拠収集処分の手続を利用できなくなります。
提訴予告通知の記載事項をまとめます。

<提訴予告通知の記載事項(※2)>

あ 訴訟の概要

予定される訴訟に関する次の事項の具体的内容
ア 請求の要旨
イ 紛争の要点
※民事訴訟法132条の2第3項,民事訴訟規則52条の2第2項

い 一般的・事務的な情報

ア 当事者
通知の発信者・相手方・代理人の氏名or名称・住所
イ 通知日
通知の年月日
ウ 法的根拠
民事訴訟法132条の2第1項の規定による予告通知である旨
※民事訴訟規則52条の2

う 訴え提起の予定時期

可能な範囲で特定する
※民事訴訟規則52条の2第3項

6 提訴予告通知の相手方による制度の利用

提訴予告通知は,その次に行う提訴前照会や提訴前証拠収集処分の前準備という位置付けです(前記)。その一方で,相手方が便乗することもできます。つまり,提訴予告通知を受領した側が提訴前照会や提訴前証拠収集処分を利用することもできるのです。
相手方が手続を利用できる条件などをまとめます。

<提訴予告通知の相手方による制度の利用>

あ 答弁の要旨の返答

提訴予告通知を相手方が受領した
相手方が次の事項に対する答弁の要旨を書面で返答をした
ア 請求の要旨
イ 紛争の要点

い 相手方による制度の利用

『あ』の返答をした相手方について
→提訴前照会・提訴前証拠収集処分を利用できる
※民事訴訟法132条の3