1 再度の名の変更の特殊性と判断の方向性
2 再度の名の変更の許可基準
3 再度の通称への変更→変更許可(概要)
4 所属寺院変更による僧名変更→再度の変更許可
5 戦前の強制改名と新制度の変更→再度の変更許可
6 却下後の再度の変更許可申立→却下

1 再度の名の変更の特殊性と判断の方向性

名の変更について,条文上は回数の制限はありません。
実際には,実質的な合理性,つまり『正当事由』が認められない傾向があります。
しかし,1度変更の許可を得た後に,改めて変更の許可を申し立てるということはそれなりの事情があるはずです。
実際には,個別的な事情によって合理性を判断することになります。

<再度の名の変更の特殊性と判断の方向性>

あ 最初の改名に関する考え方(概要)

命名が本人以外の意思・判断で行われた
→本人の意思に沿う名への変更を肯定する方向性がある
詳しくはこちら|名の変更の一般的・抽象的な許可基準

い 再度の改名に関する考え方

現在の名は本人の意思・判断で行われた
→変更を肯定する方向性はない

う 再度の改名の基準

再度の変更について
→通常よりも強く次の事情が求められる
ア 変更の必要性
イ 変更による社会的な弊害の不存在
※斎藤秀夫ほか『注解 家事審判規則(特別家事審判規則)改訂』青林書院1994年p516

2 再度の名の変更の許可基準

再度の名の変更を許可する基準として整理すると必要性と社会への実害を中心に評価・判断するということになります。

<再度の名の変更の許可基準>

あ 原則論

名を度々変えることについて
その個人に対する社会の同一性の認識を不明確にする
ひいては社会生活上混乱を招く
→本質上,原則として許されるものではない

い 例外

『ア・イ』の両方に該当する場合
→再度の変更を許可する
ア 必要性
再度改名の必要性があり
イ 社会に実害を及ぼすおそれがない
仮に変更したとして
個人の同一性の認識が著しく困難となるような事情がない
※熊本家裁昭和38年5月25日

3 再度の通称への変更→変更許可(概要)

名の変更後に,認められた名とは違う名を通称として使用したケースがあります。
裁判所は細かい事情を慎重に考慮しました。
結果として,変更を許可しました。

<再度の通称への変更→変更許可(概要)>

あ 事案(概要)

Aは名の変更許可の申立をした
裁判所は変更を許可した
その後,Aは変更後の戸籍名以外の通称を使うようになった
通称の使用期間は23年間に達した
Aは改めて名の変更許可の申立をした

い 裁判所の判断

変更を許可した
※大阪高裁平成7年6月12日
詳しくはこちら|通称への名の変更の許可基準

4 所属寺院変更による僧名変更→再度の変更許可

2回名を変更するという事情としてありがちなのは,宗教上の名の変更に伴うものです。
戸籍名を僧名に変更した後に,さらに僧名が変更したケースがあります。
裁判所は変更を許可しました。

<所属寺院変更による僧名変更→再度の変更許可>

あ 事案

名の変更の許可を得て僧名に改名した
その後所属寺院が変わった
再度の改名申立をした

い 必要性

住職としての社会的,宗教的活動を円滑に営むために必要である
不当な目的はない

う 社会への実害

前回の改名から20数年近く経過している
しかし従前の地域社会との接触・交流はほとんど絶えている
→再度の改名により混乱を生じさせるおそれはない

え 裁判所の判断

変更を許可した
※広島高裁岡山支部昭和57年11月25日

5 戦前の強制改名と新制度の変更→再度の変更許可

形式的には再度の名の変更ですが,初回の変更が特殊なものであったケースです。
実質的には初回の名の変更といえるような経緯です。

<戦前の強制改名と新制度の変更→再度の変更許可>

あ 事案

戦前皇族の緯名と同じ名であった
強制的に改名させられた
戸籍法の制度による名の変更を申し立てた

い 裁判所の判断

変更を許可した(事案がある)
※昭和28年5月8日大阪高裁管内家事審判官協議会協議結果

6 却下後の再度の変更許可申立→却下

2回目の名の変更申立ではありますが,前記のような普通のものではないケースがあります。
初回の申立が却下となった後に,事情の変化がない状態で再度申立をしたというものです。
当然改めて却下となっています。

<却下後の再度の変更許可申立→却下>

あ 事案

Aは名の変更許可の申立をした
裁判所は却下した
Aは再度名の変更許可の申立をした
事情の変更はない

い 裁判所の判断

申立自体が濫用であり失当である
→申立を却下する
※東京家裁昭和41年2月23日