【住居専用規定違反が主張された事例(事務所系の使用)】

1 住居専用規定違反が主張された事例(事務所系の使用)
2 住居専用規定×賃借人の一般的事務所|事案・使用状況
3 住居専用規定×賃借人の一般的事務所|使用状況
4 住居専用規定×賃借人の一般的事務所→解除+明渡|判決
5 住居専用規定×税理士事務所|事案
6 住居専用規定×税理士事務所→使用停止|判決

1 住居専用規定違反が主張された事例(事務所系の使用)

多くのマンションの管理規約には住居専用規定があります。
詳しくはこちら|標準管理規約の住居専用規定と貸与規定の基本(解釈と代表的な用途)
実際の専有部分の用途が,住居専用規定に違反するかどうかをはっきりと判断できないこともよくあります。
本記事では,一般的な事務所と税理士事務所が住居専用規定に違反するかどうかを裁判所が判断した実例を紹介します。

2 住居専用規定×賃借人の一般的事務所|事案・使用状況

分譲マンション(区分所有建物)では悪質行為への対抗措置がいくつかあります。
詳しくはこちら|マンションの悪質行為|基本|対応=停止・予防・使用禁止・競売・引渡請求
本記事では,対抗措置の訴訟の具体的事例を紹介します。
まずは居住用マンションで『事務所として使用』がなされた事例です。
区分所有者ではなく,賃借人が使用する,という形態でした。
そこで『解除+明渡』が請求されました。

<住居専用規定×賃借人の一般的事務所|事案概要>

あ マンションの構成

マンションは住居・店舗が混在する集合住宅であった
1階=店舗
2階以上=住居

い 管理規約・使用細則

対象の専有部分は『住居として使用』すると規定されていた

う 事案

Aは住居部分の専有部分を所有していた
Aは専有部分をBに賃貸していた
Bは専有部分を『事務所』として使用していた
管理組合は『賃貸借契約解除+明渡』の請求訴訟を提起した
※東京地裁八王子支部平成5年7月9日;エスカイア久米川事務所賃貸借契約解除請求訴訟

3 住居専用規定×賃借人の一般的事務所|使用状況

前記の事例について,裁判所は,細かい『使用状況』を明確にしました。

<住居専用規定×賃借人の一般的事務所|使用状況>

あ 業務内容

次の書面の企画・原稿作成・図面作成・技術翻訳など
書面=各種機械の取扱説明書・サービスマニュアル・パーツリスト

い 設置した機器

コピー機・ワープロ2,3台
デスクトップパブリッシング用パソコン
製図用具
電話回線は1本から3本に増設した

う 共用部分の無断使用

廊下に業務上使用するダンボール箱・台車を放置したこともある

え 業務規模

専有部分内で代表者+従業員2名が作業していた
特に騒音などは出してはいなかった
人の出入りも激しくはなかった
※東京地裁八王子支部平成5年7月9日;エスカイア久米川事務所賃貸借契約解除請求訴訟

4 住居専用規定×賃借人の一般的事務所→解除+明渡|判決

前記の事例について,裁判所の判断内容をまとめます。

<住居専用規定×賃借人の一般的事務所→解除+明渡|判決>

あ 裁判所の判断|前提

管理規約・使用細則による『住居専用規定』違反は次の両方に該当する
ア 共同生活上の障害が著しいイ 退去以外の方法では共同生活の維持が困難である

い 裁判所の判断|結論

賃貸借契約の解除+明渡請求を認めた
※東京地裁八王子支部平成5年7月9日;エスカイア久米川事務所賃貸借契約解除請求訴訟

5 住居専用規定×税理士事務所|事案

居住用のマンションで『税理士事務所』として使用された事例を紹介します。
区分所有者自身が事務所として使用したケースです。
そこで『使用停止』の請求がなされました。

<住居専用規定×税理士事務所|事案>

あ 管理規約|住居専用規定

『専有部分を専ら住宅として使用するものとし,他の用途に供してはならない』

い 事案

Aは,5階の専有部分を所有していた
Aは専有部分を税理士事務所として使用している
管理組合は『使用停止』の請求訴訟を提起した
※東京高裁平成23年11月24日

6 住居専用規定×税理士事務所→使用停止|判決

前記の事例についての裁判所の判断をまとめます。

<住居専用規定×税理士事務所→使用停止|判決>

あ 住居専用規定違反

税理士事務所としての使用
→『住居専用規定』に違反する

い 共同の利益

『住居としての環境の確保』が害されている
→『共同の利益』に反する

う 結論

使用停止請求を認めた
※東京高裁平成23年11月24日

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