1 化学物質過敏症×法的責任|基本的構造
2 化学物質過敏症|法的責任|主な争点=因果関係・過失
3 化学物質過敏症|立証面・特徴=因果関係・過失の認定ハードル
4 化学物質過敏症|因果関係・過失|判断基準・方法
5 化学物質に対する法規制|化学物質過敏症の責任判断の参考
6 厚生労働省の報告書|室内空気質健康影響研究会|法的責任判断の参考
7 厚生労働省|シックハウス症候群|報告書
8 厚生労働省|化学物質過敏症|報告書

1 化学物質過敏症×法的責任|基本的構造

本記事では『化学物質過敏症』の法的責任の内容・判断プロセスについて説明します。
まずは法的責任の基本的構造をまとめます。

<化学物質過敏症×法的責任|基本的構造>

あ 被害の発生

化学物質により人に健康被害が生じた

い 当事者

原告=被害者
被告=化学物質の製造・排出主体

う 法的責任;請求内容

不法行為に基づく損害賠償請求

これは基本的な法律構成です。
特殊事情に基づく法律構成については判例の紹介の中で説明します。
判例については別記事でまとめています(リンクは末尾に表示)。

2 化学物質過敏症|法的責任|主な争点=因果関係・過失

化学物質過敏症による法的責任の追及プロセスにおける主な争点をまとめます。
つまり『見解の相違が生じる事項』の典型的なものです。

<化学物質過敏症|法的責任|主な争点>

あ 症状・病態の存在の有無
い 因果関係

住居その他の建物における化学物質への暴露と症状との因果関係

う 過失

施工業者・売主サイドの過失の有無

え 損害=健康被害の範囲

ア 現存している短期的・単独の症状
イ 長期間の慢性的病態=化学物質過敏症

それぞれの内容については後ほど説明します。

3 化学物質過敏症|立証面・特徴=因果関係・過失の認定ハードル

化学物質過敏症の損害賠償請求プロセスでは『立証』が結果に直結します。
立証のプロセスにおける特徴をまとめます。

<化学物質過敏症|立証面・特徴>

あ 原因

局所的に化学物質に暴露した
例;建物や住居内など

い 病態の特徴

同様な化学物質への暴露を受けた集団がある
→通常,ごく少数の被害者のみが症状を発生する

う 統計・疫学的見解

疫学的研究においては,高い相対危険度は認められていない
現時点では,散発的な症例報告が集積されている状態にとどまっている

え 法的責任判断における問題

因果関係・過失の認定に一定のハードルがある

4 化学物質過敏症|因果関係・過失|判断基準・方法

化学物質過敏症の法的責任追及プロセスでは『因果関係・過失』の判断が重要です(前述)。
因果関係・過失の認定・判断の基準や方法については別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|化学物質過敏症|因果関係・過失|判断基準・立証方法|物質特定・誘発試験

5 化学物質に対する法規制|化学物質過敏症の責任判断の参考

『化学物質』一般についての法規制をまとめます。
化学物質過敏症の法的責任の判断において参考情報として活用できます。

<化学物質に対する法規制>

あ 製造・使用段階の審査・規制

ア 化学物質審査規制法
イ 農薬取締法

い 排出段階の規制

ア 大気汚染防止法
イ 水質汚濁防止法

う 情報公開

特定化学物質排出管理促進法;PRTR法

え 環境中・統合的視点

ダイオキシン類対策特別措置法

6 厚生労働省の報告書|室内空気質健康影響研究会|法的責任判断の参考

シックハウス症候群などについて公的な調査・報告がありますので紹介します。
調査・報告の概要です。

<厚生労働省の報告書|室内空気質健康影響研究会>

平成16年2月27日
厚生労働省健康局生活衛生課
室内空気質健康影響研究会
報告書を公表した

7 厚生労働省|シックハウス症候群|報告書

厚生労働省の報告書(前述)のうち『シックハウス症候群』の内容をまとめます。

<厚生労働省|シックハウス症候群|報告書>

あ 用語の意味

医学的に確立した単一の疾患ではない
居住に由来する様々な健康障害の総称を意味する用語である

い 主な症状

ア 皮膚や眼,咽頭などの皮膚・ 粘膜刺激症状
イ 全身倦怠感,頭痛・頭重などの不定愁訴

う 発症関連因子

ア 化学物質
例;ホルムアルデヒドなど
イ カビ,ダニなど

え 室内濃度指針値

必ずしもシックハウス症候群を直ちに引き起こす閾値ではない
→診断に際しては総合的な検討が必要である

8 厚生労働省|化学物質過敏症|報告書

厚生労働省の報告書(前述)のうち『化学物質過敏症』の内容をまとめます。

<厚生労働省|化学物質過敏症|報告書>

あ 用語の意味

微量化学物質に反応し,非アレルギー性の過敏状態が発現する
→精神・身体症状を示すとされるもの

い 病態や発症機序

未解明な部分が多い

う 診断を受けた症例

中毒やアレルギーといった既存の疾病による患者が含まれている

え 対応・対策

ア 病態解明を進める
イ 感度や特異性に優れた臨床検査方法・診断基準を開発する

この報告書の内容には『一般的ではない』ものも含まれている,という指摘もあります。
いずれにしても,化学物質過敏症の法的責任追及プロセスでは参考情報として活用できます。