1 低額譲渡による贈与税
2 低額譲渡による贈与税の規定
3 時価と『著しく低い』の判断基準
4 親族間売買の課税処分を取り消した裁判例

1 低額譲渡による贈与税

個人間で無償で財産の譲渡が行われると贈与税が課税されます。
この点,有償での譲渡でも贈与税が課税されることがあります。
その具体例の1つが,相場よりも安い金額で売却した低額譲渡です。
低廉売買と呼ぶこともあります。
本記事では,低額譲渡による贈与税の課税について説明します。

2 低額譲渡による贈与税の規定

まず,低額譲渡に対して贈与税を課税すると規定する条文の内容を押さえておきます。

<低額譲渡による贈与税の規定>

あ 低額譲渡の対象となる取引

『著しく低い価額』で個人が財産の譲渡を受けた場合
→贈与税が課税される

い 課税対象

財産の対価と時価との差額が課税対象となる
※相続税法7条本文

3 時価と『著しく低い』の判断基準

低額譲渡として扱われるのは,売買の代金が『著しく低い』場合です。
まず,基準となる時価は,通常の取引価額です。
どの程度低ければ低額譲渡になるか,については,通達で,個別的に判断することとされています。

<時価と『著しく低い』の判断基準>

あ 時価

当該取得時における通常の取引価額に相当する金額

い 『著しく低い価額』の判断基準

個別具体的に判断される
例=取引の事情・取引当事者間の関係
※平成元年3月29日直評5,直資2−204

う 法人税のみなし譲渡所得税(参考)

法人税の『みなし譲渡所得税』には法令上の基準がある
詳しくはこちら|低額譲渡・共有持分放棄×課税|みなし譲渡所得課税・贈与税
※松山明弘ほか『平成22年10月改訂資産税実務問答集』清文社p18

4 親族間売買の課税処分を取り消した裁判例

現実の売買契約では,多くの事情によって金額が決まります。
平均的な相場とはずれた金額で取引が成立することはとてもよくあります。
そこで,通常であれば相場から離れた代金であっても低額譲渡として扱われることはあまりありません。
ただし,親族間の取引では,課税を逃れる傾向があるので,厳しく判断されます。
では具体的にどの程度まで相場からズレていてもよいのでしょうか。
これに関しては,時価の78%(22%低い)金額での売買について,裁判所が低額譲渡ではないと判断したケースがあります。
これが1つの参考(目安)となるでしょう。

<親族間売買の課税処分を取り消した裁判例>

あ 親族間の土地の売買

親族間で土地の共有持分の売買が行われた
代金額は相続税評価額と同額であった
この金額は時価の約78%であった

い 税務署による課税処分

税務署は『著しく低い価額』に該当すると判断した
→贈与税の課税処分をした

う 裁判所の判断

代金額は『著しく低い価額』には該当しない
贈与税の課税処分を取り消した
※東京地裁平成19年8月23日

実際には,親族間での遺産分割や共有物分割の解決の中で相場よりも低い金額での売買が行われることがよくあります。
このようなトラブル解決の中では,本記事で説明したような課税のことも考慮しないと新たな別のトラブルが生じてしまうことになります。
低額譲渡に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。