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相続・遺言

サンプル写真 ノウハウに基づいたトラブル解決!
トラブル予防策もご提供致します!

大事な人が亡くなった悲しみの中で訪れる相続問題。
遺産の多寡に関わらず、解決は容易ではありません。
みずほ中央では、このような遺産分割の案件を数多く扱っています。
そのノウハウを生かし、生前の相続紛争対策として遺言作成や、事業承継対策などもお手伝いしております。
司法書士・海事代理士も所属しております。
不動産・自動車・船舶などの登記・登録などまでワンストップで行えます。

・遺産の内容・価値が分からない
・遺言が出てきて、誰がどれだけ相続できるのか分からない
・遺産の分け方について、相続人間で意見が一致しなくて困っている ・亡くなった父がローンを完済していなかった・・・
・不動産・預貯金を相続したが、相続税が払えるのか心配
・将来の相続人(子供達)の相続紛争や相続税の納税が心配
・事業を後継者(息子など)にスムーズに引き継げるのかが心配
・相続人・遺産を調査し、合理的な遺産分割方法をご提案します
・遺産分割交渉、調停・訴訟を代行します
・具体的納税計画の策定・実行、税務調査対応、登記・登録類の最終処理までワンストップで行います
・相続放棄手続を行います
・土地・建物明渡により収益を改善したり、有利な条件での売却を実現します
・高収益の物件への買い替えを実現したり、納税資金を準備し、納税の準備を万端にします。
・綿密に計算した遺言書を作成し、相続紛争を防止し、また、納税面での心配もなくします。
・法律面・税金面をしっかりと考慮し、株式の発行・消却や定款変更などを行い、スムーズ・円満な事業承継を実現します。

Q&A

1 相続の基礎知識詳細 2 遺産分割詳細
手続きの流れ
 相続が発生したら
 相続登記
 名義変更(株式(有価証券),自動車,ライフライン)
法定相続
代襲相続
相続分の譲渡
相続分譲渡の課税関 係
遺産の承継(相続対象財産)
同時死亡の推定
脳死(死亡判定時点)
慰謝料の一身専属性
寄与分
特別受益
持ち戻 し 免除の意思表示
遺産 分割協議
遺産分割調停・訴訟
後見人の利益相反
3 遺留分詳細 4 相続放棄詳細
遺留分の基礎知識
 遺留分権利者
 遺留分割合
遺留分対策(事業承継)
遺留分放棄
遺留分放棄許可取消
除外合意,固定合意(中小企業経営承継円滑 化法)
固定合意と贈与税
種類株式
無議決権株式
取得請求権付株式
取得条項付株式
受益者連続型信託
相続放棄
・相続放棄の期限
相続承認
・単純承認・法定承認・限定承認
相続放棄と遺産分割協議の違い
おもしろい相続放棄の使い方
遺産分割と詐害行為
相続放棄と詐害行為
5 相続税詳細 6 遺言詳細
基礎知識
 相続税の計算方法
 相続税の節税方法
 小規模宅地
 相続税申告・納税期限
節税策
信託の活用
納税対策
 納税方法あれこれ
物納
 物納要件
税金の時効
遺言の基礎知識
 遺言の種類
 公正証書遺言
 遺言書の書き方
 遺言と生前贈与
遺言の変更,撤回
死因贈与
遺言と相続税対策
信託を利用した相続対策 
認知症対策(法定後見の落とし穴) 
受益権指定権 
受益権の放棄 
信託の終了
信託終了時の残余財産の帰属 
信託の変更 
限定責任信託
 遺言信託
 リバースモーゲージ信託

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事例

事例 <相続トラブル防止・生前の納税資金対策>
将来の相続人(子供達)の相続紛争や相続税の納税に心配がありました。
綿密に計算した遺言書を作成し、相続紛争を防止し、また、納税資金の対策も兼ねることができました。
具体的には、土地・建物の明渡によりリフォームを行い、収益を改善したり、有利な条件での売却を実現できました。
そして、高収益の賃貸物件への買い替えを実現することによって、納税資金が準備でき、納税の準備が万端になりました。
事例 <遺産分割協議>
父の相続後、兄弟(A、B、C)間の話し合いで遺産分割がまとまりませんでした。
このような状況だったのです。
・遺産の内容・価値が分からない
・遺言が出てきて、誰がどれだけ相続できるのか分からない
・遺産の分け方について、相続人間で意見が一致しなくて困っている
弁護士が、Aの代理人として、相続人・遺産を調査し、合理的な遺産分割方法を他の兄弟に提案しました。
その後、交渉が決裂したので、調停・訴訟を行いました。
最終的に、訴訟の途中で、兄弟全員で和解が成立し、解決できました。
事例 <納税資金対策>
不動産・預貯金を相続しましたが、相続税の納税に不安がありました。
具体的納税計画の策定・実行、税務調査対応、登記・登録類の最終処理までワンストップで行いました。
結果的に、納税もスムーズに完了し、細かい手続きも含めてすべてが解決・完了しました。
事例 <相続放棄>
亡くなった父がローンを完済していなかったので、子に請求が来ました。
父のプラス・マイナス財産を弁護士が調査しました。
時間を要したので、家庭裁判所に熟慮期間伸長の申立を行いました。
その後、債務が多額であることが発覚しました。
そこで、すみやかに相続放棄手続を行いました。
事例 <事業承継>
事業を後継者(息子など)にスムーズに引き継げるのかについて不安がありました。
法律面・税金面について複数の方法のシミュレーションを行いました。
しっかりと考慮して方針を決めました。
そして、株式の発行・消却や定款変更などを行いました。
最終的に、スムーズ・円満な事業承継を実現できました。
事例 <会社支配権紛争>
先代が創業した会社の株式を、兄Bと弟Aで持ち合っていました。
B・Aは仲が悪く対立していたため、会社運営が心配でした。
多数派のBが会社資産を私物化している様子もありました。
Aから全般的な対応の依頼を受けました。
まず弁護士は、不当な会社運営を強行する代表取締役Bに対し、株主代表訴訟を提起しました。
訴訟において、総合的な解決方法について和解交渉が行われました。
最終的に、次のような和解が成立しました。
Aの保有する株式をBに譲渡し、その代わり、Bが株主となる会社に元の会社の事業の一部が譲渡されることになりました。
「株式交換」という手法です。
これにより、A・Bは、それぞれが自分の事業を持ち、相互に干渉しない状態が実現しました。
事例 <寄与分>
亡くなった父の子A・Bともに父が経営していた会社の事業に関与していました。
父の遺産相続に際し、A・Bはそれぞれ、自身の事業への貢献があったことを理由に寄与分を主張しました。
交渉は決裂し、A・B双方から裁判所に審判等を申立てました。
裁判所は、双方の申立てを却下しました。
A・Bそれぞれ、役員などとして父の会社で働いており、不動産の取得の実現等に関与をしてきたことは認められました。
しかし、貢献したのは、父個人の資産ではなく、あくまでも会社の資産である、という点が重視されたのです。
代表弁護士三平聡史のブログ
【東京家庭裁判所 平成21年1月30日(抜粋)】
(2) そこで,検討するに,申立人Aは,①昭和23年ころから○○業を営んでいた被相続人と昭和24年×月×日に婚姻し,昭和25年×月に相手方を,昭 和27年×月に申立人Bを,昭和28年×月に申立人Cを,昭和30年×月に脱退前申立人Dを,昭和33年×月に同Eを,昭和35年×月に同Fを順次出産し ており,相手方,申立人B,同C,脱退前申立人らの育児等に追われ,家事も担っていたことが推測されることからすると,申立人Aの母や身内の者が家事や育 児を助けてくれることがあり,申立人Aが○○業を手伝うことがあったとしても被相続人と同等に仕事をしたとの説明は措信できず,○○業の手伝い(取引先と の連絡や会計処理等を含む。)は夫婦間での協力の範囲にとどまると解されるので(なお,相手方によれば,申立人Aは給与の支払を受けていたという。),結 局309坪の借地権を被相続人が取得したことについて申立人Aの特別な寄与があったと認めるに足りる具体的証拠はなく,この借地権が等価交換(甲32,借 地権売買と別紙遺産目録1記載の土地の売買,同目録2記載の建物の建築請負とを一体化した契約に基づき取得)された別紙遺産目録1,2記載の土地建物の持 分についての申立人Aの具体的寄与行為は認められない。②申立人Aが昭和47年から平成3年まで被相続人に代わって○○株式会社の不動産賃貸業の経営に実 質的に係わってきたとしても(甲37によれば,申立人Aは昭和56年から59年までの4年間同社から給与支払を受けていないことからすると,同社の経営に 係わっていたか疑問である。),同会社に対する貢献があるにすぎず,これをもって被相続人の遺産の形成維持に貢献があったとはいえない。③被相続人の役員 報酬(給与)は,同会社から支給されるものであって,申立人Aが同社を実質的に経営していたとしても,申立人Aが被相続人に対し財産給付したものではな く,同申立人による寄与ということができないことは明らかである。
   また,申立人Bが,平成4年から実質的に○○株式会社の経営にあたっていたとしても,被相続人の役員報酬(給与)は同会社から支給されるものであっ て,申立人Bが被相続人に対して財産給付をしたものではないし,前記借地権と遺産土地建物(被相続人持分100分の65,○○株式会社持分100分の 35)の交換について関与したとしても同社の役員としての立場をも有していたことからすると,被相続人の遺産の維持増加につき特別な寄与があるとは認めら れないから,いずれも申立人Bの寄与ということができないことは明らかである。
   よって,申立人A及び同Bの寄与分の申立ては,いずれも理由がない。
事例 <特別受益>
亡くなった父は歯科医師であり、長男Aは医院を継ぐために歯学部に進学しました。
その際、1年浪人をし、大学でも留年をしたため、卒業まで11年を要しました。
次男Bは、学費等は特別受益として持ち戻す必要があると主張しました。
遺産分割協議は、特別受益の見解について、双方が譲らなかったため決裂しました。
Aは提訴。
Aは、歯学部に進学したことについて、医院を継いでほしいという父の意向であり、また、元々父は裕福であったため、不均衡は生じないと主張しました。
裁判所は、Aの主張を採用し、学費等については、特別受益にはあたらないと判断しました。
代表弁護士三平聡史のブログ
【東京高等裁判所 平成17年10月27日(抜粋)】
ウ 相手方の特別受益について(その2)
  一件記録によれば,相手方につき次の事実が認められる。
 (ア) 相手方(昭和36年×月××日生)は,昭和51年4月,○○高校に入学し,1年で中退後に都立△△高校に入学し,昭和55年3月同校を卒業し, 大学受験に失敗し3年間浪人し,大学受験予備校である○△□に通った後,昭和58年4月,○○○○大学に入学し,留年したり卒業できなかったことから,在 学生活が長引き,平成6年3月に卒業し(通常は6年間で卒業できるところ,5年間余計に在学期間を要した。),歯科医師国家試験に2年続けて不合格とな り,国家試験予備校に通い(2年間余計に期間を要した。),平成8年4月に歯科医師の免許を取得したが,相続開始時までの間,無収入であり,被相続人から 上記歯科医師になるため,抗告人に要したような通常要する費用以上の負担をしてもらった。また,被相続人は,代金を負担し昭和58年に乗用自動車(口口口 口口),平成5年に乗用自動車(○○○○○)を購入し,もっぱら相手方に上記自動車を使用させていたものであり,いずれも生計の資本としで付与されたもの というべきであるから,以下の合計額3001万円(相続開始時における評価額)が特別受益と認めることができる。
(イ) その具体額は次のとおりと認められる。
 a 大学受験予備校に通学した学費(3年分)     192万円
 b 大学受験料3年分                 64万円
 c 大学授業料(平成元年度から平成5年度までの授業料)    850万円
 d 大学5年間の生活費 月額12万円        720万円
 e 国家試験受験予備校の費用(授業料年額180万円の2年分。夏期講習20万円) 380万円
 f 国家試験受験中(2年間)の生活費 月額12万円 288万円
 g 自動車2台                   402万円
   維持費(自動車税等)              105万円
                       合計 3001万円
(ウ) 他方,抗告人は,相手方が要した高校留年期間1年間や予備校3年間の生活費を特別受益に当たると主張するが,高校を卒業するのに4年を要し歯科大 学合格のために3年程度を要することは一般にありうることであり,被相続人が開業医であったことを考慮すると,その間の生活費の負担は扶養義務の範囲とい うべきであり,生計の資本としての贈与には該当しない。抗告人が主張する補欠入学時に入学金を負担した事実は認めるに足りる的確な証拠がなく,抗告人と相 手方の大学学費の差額(正規の課程である6年間の分)はやむを得ない負担であり,いずれも特別受益に当たらず,卒業時の教授への謝礼を負担した事実は認め るに足る証拠がない。また,マンション賃料(1年分)は,相手方にもっぱら使用させるため被相続人がマンションを賃借したとまで認めることができないので あり,その賃借が相手方への利益の提供であるとは認められない。歯科医師国家試験の資料費は,生活費として考慮し,ガレージの拡張工事費用及び部屋改装費 の負担は具体的な支出額を認めるに足りる証拠がなく,生計の資本としての贈与といえるものであるか明らかではない。抗告人が主張する生計の資本の贈与にあ たる動産類の贈与があったと認めることはできないし,遺産である借地につき相続後に支払った借地料が特別受益に当たらないことは明らかである。
事例 共同相続人の1人が銀行に対して、被相続人名義の預金について取引明細を請求したところ、銀行はこれを拒否しました。
共同相続人全員から請求がなければ応じられないと主張した。
訴訟を提起。
裁判所は、相続人が預金契約者の地位を承継していることや預金債権は相続により相続人に分割されて取得されているこなどを根拠に相続人の開示請求を認めま した。
これにより、被相続人から相手方への不正な資金の流れを調査することができるようになりました。
事例 父が亡くなった後、遺言が発見された。
遺言は相続人の一部が代筆したものでした。
そこで、遺言作成に関与していない相続人は遺言が無効であると主張した。
交渉が決裂したので訴訟を提起。
裁判所は、父が言葉を発することができず、手を握ることで意思を伝えていたことから、有効な「口授」とは言えず、遺言は無効と判断しました。
その結果、法定相続による遺産分割が可能となりました。
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【東京地方裁判所 平成20年11月13日(抜粋)】
第三 当裁判所の判断
 一 争点(1)(本件遺言書作成当時,梅夫に遺言能力があったか)について
 (1) 《証拠略》を総合すると,以下の事実が認められる(日付はいずれも平成一八年である。)。
 ア 梅夫は,二月二〇日ころ,弁護士丁原春夫(以下「丁原弁護士」という。)と弁護士戊田夏夫(以下「戊田弁護士」という。)に対し,遺言書の作成を委 任した。
 イ 梅夫は,一〇月二〇日ころ,進行した肺癌に罹患していることが判明した。
 ウ 丁原弁護士と戊田弁護士は,一一月二日,梅夫宅を訪れ,梅夫から遺産分配の方法を詳しく聞いて,遺言公正証書に記載する予定の遺言内容を取りまとめ た。この日の梅夫の意識状態は明瞭であった。
 エ 梅夫は,一一月七日,肺癌に脳幹梗塞を併発して医療センターに入院した。梅夫には,脳幹梗塞の影響で左半身にしびれがあった。
 オ 丁原弁護士と戊田弁護士は,一一月八日,丙川公証人に対し,梅夫を遺言者とする遺言公正証書の作成を依頼した。
 カ 丁原弁護士と戊田弁護士は,一一月二日に梅夫と打ち合わせた遺言内容を細部まで詰め,一一月一四日までに公正証書遺言の案文を完成させた。
 キ 一一月一五日,梅夫に腸閉塞の疑いがあったことから,胃管チューブが挿入されるとともに,梅夫が同チューブを抜いてしまうことを予防するため,梅夫 の上肢に四肢用抑制帯,手指に上肢用ミトンが取り付けられ,身体抑制が実施された。また,酸素飽和度が低下したため,梅夫に酸素マスクが装着された。
 ク 丁原弁護士と戊田弁護士は,一一月一六日,被告松子から梅夫が腸閉塞のため容態が悪化しているとの連絡を受け,それまでに梅夫と打ち合わせてきた遺 言公正証書案の内容とは異なり,すべての遺産を被告松子と被告太郎に二分の一ずつ相続させる旨の危急時遺言書を作成することにしたが,同日夜に医療セン ターで梅夫に会ってみると,梅夫は腕に点滴を受け,酸素マスクをつけていたものの意識がはっきりしていたことからその日の作成は中止し,梅夫と打ち合わせ た遺言公正証書案どおりの危急時遺言書を翌一七日に作成することとした。
 ケ 丁原弁護士と戊田弁護士は,一一月一七日,医療センターにおいて,梅夫に対し上記遺言公正証書案の各条項を読み聞かせ,危急時遺言書を作成した(以 下「本件危急時遺言書」という。)。
 コ 梅夫の主治医で血液内科を専門とする甲田秋夫(以下「甲田」という。)は,被告松子から,本件危急時遺言書を作成した一一月一七日の梅夫の意識状態 について診断書の作成を依頼され,特段,梅夫に対し認知機能や判断能力等を診断するための検査は実施しなかったものの,梅夫との会話の状況から,左半身の 痺れはあるものの意識障害はなく,見当識も保たれており,一一月一七日の時点では判断能力は十分にあったと考えられる旨の診断書を作成した。
 サ 梅夫は,一一月一七日以降,肺癌の骨転移に伴う高カルシウム血症,腸閉塞に伴う脱水等の症状や肺癌に伴う肺炎に起因する低酸素血症などの意識障害を 引き起こしかねない病態が重なって徐々に意識レベルが低下し,一一月二〇日には,閉眼して傾眠傾向の状態になり,呼びかけてもあまり反応しないような意識 レベルに陥った。
 シ 丙川公証人は,一一月二二日,丁原弁護士から,本件危急時遺言書と同じ案文の遺言公正証書案を受領した。丙川公証人が,梅夫の判断能力について尋ね たところ,同弁護士は大丈夫であると回答した。
 ス 一一月二七日にも,梅夫は傾眠傾向にあって,努力様の呼吸を続けていた。
 同日午後九時ころ,梅夫は,意識が混乱した状態に陥り,看護師に対し,「起こして立たせて,自分は院長だ,食事はどうした,ほどいて,出掛ける。」と発 言した。
 セ 丙川公証人は,一一月二八日午後二時五〇分ころ,本件危急時遺言書の遺言内容と同じ文面の遺言公正証書の案文を予め作成したうえで,医療センターを 訪れた。梅夫は,丙川公証人が到着したときに,酸素マスクをして苦しそうにしてベッドに寝ており,声を出せるような状況ではなかった。
 その後,丁原弁護士と戊田弁護士が証人として立会い,被告松子,丙川公証人の書記が居合わせる中,丙川公証人が,梅夫に間近に立って上半身を曲げて梅夫 の手を握り,持参した遺言公正証書の案文を一か条ずつ読みながら確認するので間違いがなければ手を強く握るように説明したところ,梅夫は握り返した。丙川 公証人が,遺言公正証書案文の第一条と第二条を読み聞かせたところ,梅夫は,各条文に対し手を握って応答した。
 しかし,丙川公証人が第三条を読み聞かせている最中に,梅夫は首を大きく横に振って非常に苦しそうな態度をしてそのまま眠ってしまったため,同公証人が 声をかけたが再開することができなかった。このため,丙川公証人は,一旦は遺言公正証書の作成はできないと判断したが,被告松子が梅夫を起こそうと何度も 揺すって声をかけて梅夫の目を覚ましたため,丙川公証人は再度第一条から読み聞かせを始めた。梅夫は,丙川公証人のすべての条文の読み聞かせに対し手を 握って応じた。
 丙川公証人が梅夫に対し遺言公正証書案の読み聞かせをして確認作業をしていた時間は,同日午後二時五〇分から午後三時一五分ころまでの約二五分程度で あった。本件遺言書の作成過程において,梅夫が声を発したのは,第三条の一回目の読み聞かせのときにうめくような発声があっただけであった。
 その後,丙川公証人は,梅夫が自ら署名押印することはその病状から無理であると判断し,梅夫に代わって署名押印した。そして,証人である丁原弁護士と戊 田弁護士が署名押印して,本件遺言書が作成された。
 ソ 一一月二九日の梅夫の意識レベルは,刺激に応じて一時的に覚醒するが,覚醒しても自分の名前や生年月日が言えない状態であった。
 (2) 以上の事実が認められる。
 ところで,上記(1)セの事実に関し,証人戊田夏夫は,陳述書(乙一四)において,本件遺言書作成のために丙川公証人が遺言公正証書の案文を読み聞かせ た際,第三条の一回目の読み聞かせのときを除けば,梅夫は,意識がはっきりしており,各条文の読み聞かせに対し手を握るだけでなく,「はい。」や「う ん。」と答えていたことを記載し,その証人尋問において,丙川公証人が二,三か条ぐらい読み聞かせたところで,梅夫が小さな声で「はい。」と発語した旨供 述している。
 しかしながら,証人丙川竹夫は,梅夫の間近で手を握りながら遺言公正証書の案文を読み聞かせており,梅夫の声を聞き取りやすい位置にいたにもかかわら ず,梅夫が第三条の一回目の読み聞かせの際にうめくような発声をした以外は声を出すことはなかった旨供述していることや,上記(1)サ,ス及びソで認定し た本件遺言書作成日前後の梅夫の状態に照らすと,証人戊田夏夫の上記供述部分及び同陳述書の上記記載部分は直ちに信用することができない。
 (3) そして,上記(1)で認定した事実によれば,梅夫は,本件遺言書作成日の約一〇日前から,肺癌の骨転移に伴う高カルシウム血症,腸閉塞に伴う脱 水等の症状や肺癌に伴う肺炎に起因する低酸素血症などの意識障害を引き起こしかねない病態が重なって徐々に意識レベルが低下し,本件遺言書作成日の約一週 間前には,閉眼して傾眠傾向の状態になり,呼びかけてもあまり反応しないような意識レベルに陥っていたこと,本件遺言書作成日の前日にも傾眠傾向にあっ て,努力様の呼吸を続けており,同日夜には見当識障害が認められたこと,本件遺言書の作成当日には,梅夫は酸素マスクと上肢と手指に抑制器具を装着して酸 素供給を受けながら,公証人により遺言公正証書の案文を読み聞かされている最中に,首を大きく横に振って非常に苦しそうな態度をしてそのまま眠ってしま い,公証人が一旦は遺言公正証書の作成を断念するほどの状況になり,梅夫は妻から何度も揺すられ声をかけられてようやく目を覚ましたこと,本件遺言書作成 日の翌日には,梅夫の意識レベルは,刺激に応じて一時的に覚醒するが,開眼しても自分の名前や生年月日が言えない状態であったことの各事実が認められると ころ,梅夫の主治医であった甲田も,本件遺言書作成日の梅夫の容態は前後の日と同じような状態で推移しており,本件遺言書作成日の前日に梅夫が陥った見当 識障害のような症状が現れた患者の意識レベルが翌日になって鮮明になる可能性は低いと供述していることなどを総合的に考慮すると,梅夫は,本件遺言書作成 時において,意識レベルが著しく低下して意識障害に陥っており,遺言の意味,内容を理解し,遺言の効果を判断するに足りる精神能力を欠いていたものと認め られる。
 梅夫は,本件遺言書作成時に,丙川公証人による遺言公正証書の案文の読み聞かせに対し手を握り返して反応したことが認められるが,上記認定にかかる梅夫 の意識レベルからすると,遺言の意味,内容やその重大な効果を理解する能力を欠いたまま手を握り返していた可能性が高いというべきであって,梅夫がそのよ うな動作をしたからといって上記判断を左右するものではない。
 また,本件遺言書の遺言内容は,梅夫が丁原弁護士と戊田弁護士との間で打ち合わせた遺言内容を踏まえて作成された本件危急時遺言書の遺言内容と同一であ ることが認められるが,上記認定事実のとおり,本件遺言書の各条項は,梅夫が本件遺言書作成の際に自ら口述した文章を記載したものではなく,丙川公証人 が,本件危急時遺言書の遺言内容を基にして予め記載しておいた遺言書案文であったことに照らすと,両者の遺言内容の同一性をもって本件遺言書作成の際の梅 夫の判断能力が正常であったことを推認することはできない。
 以上によれば,本件遺言書作成当時,梅夫には遺言能力がなかったというベきである。
 二 争点(2)(本件遺言書が民法九六九条二号の口授の要件を具備するか)について
 遺言者が公正証書によって遺言をするに当たり,公証人の質問に対し,言語をもって陳述することなく,単に肯定又は否定の挙動を示したにすぎないときは, 民法九六九条二号にいう口授があったものとはいえないと解するのが相当である(最高裁昭和五〇年(オ)第八五九号昭和五一年一月一六日第二小法廷判決・家 裁月報二八巻七号二五頁参照)。
 上記一で認定した事実によれば,本件遺言書作成の際に,梅夫は丙川公証人と手を握り,公証人による遺言公正証書の案文の読み聞かせに対し手を握り返した にすぎず,言語をもって陳述していないから,口授があったものとは認められない。
 したがって,本件遺言書は,民法九六九条二号の口授の要件を備えていないというべきである。
 三 結論
 以上によれば,本件遺言は,遺言者である梅夫の遺言能力が欠け,かつ,民法九六九条二号の口授の要件も備えていないから,無効というべきである。
 よって,原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。。
事例 当初、父は兄弟平等の内容の遺言を作成しました。その後、兄弟の1人だけに全財産を相続する内容の遺言を作成しました。
しかし、後の遺言は認知症になった時点で作成されたため、無効であると主張しました。その上、法定相続によった割合で不動産の移転登記を行いました。
相手方は、1人だけで相続したはずであると主張して提訴しました。
裁判所は、後の遺言が作成された時点の父の状況を詳しく検討しました。
その当時記憶障害や徘徊などがあったことを認定し、遺言能力はなかったと判断し、遺言を無効としました。
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【東京地方裁判所 平成18年7月25日(抜粋)】
第三 争点に対する判断
 一 前記前提事実,《証拠略》によれば次の事実が認められる。
 (1) 被告一江は,太郎(明治四一年《略》生)と花子(大正二年《略》生)との間の長女であり,被告二江は,太郎と花子との間の次女であり,三江は, 太郎と花子との間の三女である。
 被告竹夫は,被告二江の長男であり,太郎の孫である。
 (2) 太郎は,昭和四五年に六五歳で定年退職するまでの間,信用金庫に勤めており,定年後は特に職に就くことなく,自宅で花子と暮らしていた。
 昭和五三年ころまでは,被告二江も,太郎と同居していたが,その後,被告二江は実家を出て,実家から徒歩五,六分程度の近隣に住むようになった。昭和五 四年ころから,三江が同居することとなったため,太郎は,自宅を二世帯住宅に改装し,三江夫婦はそこで生活するようになった。その後,三江夫婦も,平成九 年八月三一日に実家を出て,実家まで車で一〇分から一五分くらいのところに住むようになり,以後,太郎と花子は二人で暮らしていた。
 被告二江は,昭和五三年に実家を出た後も,頻繁に実家に顔を出し,おかずを持っていったり,花子や太郎と一緒に買い物に行ったりしており,特に三江が家 を出た平成九年ころからは,太郎の介護保険や病院の手続,預貯金の管理などもするようになった。また,三江も,実家を出た後,頻繁に実家に通い,太郎を散 歩や旅行に連れて行ったり,泊まり込みで身の回りの世話をするなどしていた。
 (3) 太郎と花子は,被告二江がかつて本件土地一で美容院を経営していたことがあり,昭和四六年八月一七日に本件土地一を購入する際,その代金の半額 を負担したことに加え,被告二江が離婚して独り身であったことから,被告二江に本件土地一を相続させる旨の遺言をすることにした。このことを聞いた被告二 江は,自分が先に死亡してしまったときのことを考え,本件土地一の持分半分を被告竹夫の名義にするよう太郎に頼んだ。そこで,太郎は,本件土地一,本件建 物一及び本件建物二の各持分二分の一を被告二江に相続させ,残りの各持分の二分の一を被告竹夫に遺贈する旨の遺言公正証書の作成を篠原公証人に依頼し,平 成六年六月二三日,平成六年遺言公正証書が作成された。
 (4) 太郎は,平成八年六月一三日,甲田夏夫(以下「甲田」という。)から,本件土地二,三を取得した。後日,太郎は,当時同居していた三江の夫であ る甲野秋夫(以下「秋夫」という。)から,太郎が甲田へ支払った交換土地差額分として,六〇〇万円を受領した。
 太郎と花子は,被告一江と三江にも太郎の財産である本件土地二,三を相続させる旨の遺言をすることとした。その際,被告一江については,嫁ぎ先が比較的 裕福であったことから,比較的地積の小さい本件土地二を相続させ,三江には,被告二江が相続することとなる本件土地一と同程度の地積である本件土地三を相 続させることにした。太郎は,その旨の遺言公正証書の作成を篠原公証人に依頼し,平成八年八月二七日,平成八年遺言公正証書が作成された。
 (5) その後,被告一江は,花子から平成六年遺言及び平成八年遺言の内容を聞き,その内容を三江にも伝えた。被告一江と三江は,太郎の孫は被告竹夫だ けではないのに,平成六年遺言により,被告竹夫だけに土地が遺贈されることなどを不公平に思っていた。被告一江と三江は,太郎を伊豆高原旅行に誘い,平成 九年一月一五日,三江は,伊豆高原の宿において,予め用意しておいた「私甲野太郎の遺産は法定分割とする」との遺言書の下書きを太郎に示し,これと同内容 の遺言書を作成してくれるように太郎に頼んだ。太郎は,三江に言われるままに被告一江と三江の面前で平成九年遺言書を作成し,これに署名した。三江は,こ れを受け取り,同月二〇日,公証人役場に持っていき,同所において確定日付の印章を押してもらい,その写しを一部作成した上,原本を被告一江に渡した。
 (6) 平成九年初めころから,太郎は,被告二江や花子と一緒に買い物に行った際,待っているべき場所とは異なる場所で待っていたり,入れ歯をなくした と言って,入れ歯を作りに歯医者に行ったが,なくしたはずの入れ歯をはめていたなど認知症の症状がみられるようになった。
 太郎は,平成九年四月一九日から丁原苑に通い,花子に付き添われて同苑の「ふれあいホールコース」に参加していた。
 太郎は,平成一〇年春ころから,散歩中に人目もはばからずに大声で軍歌を歌い,食事中に怒って食物を天井に投げつけ,興奮して窓ガラスを棒でたたき割る などのことがあり,行き先も告げずに徘徊することが多くなった。
 太郎の認知症の症状は進行して,食事や着替えは自分ではできなくなり,失禁があり,紙おむつを使用するようになった。
 (7) 太郎は,平成一〇年一一月二七日から慢性心不全のため,岩井病院に通院していたところ,平成一一年四月八日,風呂場で倒れ,救急車で同院に搬送 され,大腸炎と診断され,同月一〇日まで同病院に入院した。この入院時,太郎は,岩井病院の消灯時間である午後一〇時を過ぎても眠ろうとせず,大部屋の病 室であるのに朝まで訳の分からないことを大声で話したり,自ら点滴を外してしまったりした。
 (8) 平成一一年四月二五日,太郎は,三江と秋夫に連れられ,秋夫の運転する自動車で箱根に行き,嶺南荘に宿泊した。翌二六日,太郎は,嶺南荘におい て,「ゆいごん 私のざいさんすべては甲野三江にそうぞくさせる」との本件遺言書を作成し,これに署名した。同日,太郎は,三江に連れられて太郎の戦友で ある戊田の家を訪れ,太郎は,戊田と,戦争当時の話や信用金庫に勤めていたころの話をした。
 (9) 平成一一年六月一日,太郎は,以前からの腰痛が悪化し,歩行困難になったため,三江に連れられて市川市リハビリテーション病院に外来で訪れた。 太郎は,同月一〇日,同病院において,MRI検査を受け変形性脊椎症及び腰部脊柱管狭窄症と診断され,同月一四日,一か月の予定で同病院に入院した。同 日,太郎は,同病院において,長谷川式の検査を受けたところ,二点であった。また,太郎は,同病院において,痴呆老人自立度「ランクⅢa」(施設による専 門治療が必要とはいえないが,日常生活が自立しているとはいえず,夜間中心に介護を要する状態)と診断された。太郎は,同病院において,同月一五日,食堂 が分からず迷子になり,同月一六日,自分の病室が個室であるのに大部屋だと言い,大部屋を一部屋ずつ見て回り次に個室へ行き,ようやく自分の病室を見つ け,同月一八日,自分の病室から廊下に出て,「ここは自分の部屋じゃない。」と言い,看護師が太郎の病室に戻しても,納得せず,「自宅へ帰りたい。」と言 い,同月一九日,自ら点滴をちぎるも,「知らないよ。」といい,同月二三日,夕食を食べ始めるとすぐに,「うちの三女が来ないから探しに行ってくる。」と 席を立ち,看護師が「こちらから電話してみますので食べましょう。」と言うと,「そうか。」と言って食べ始めるものの,同じことを何度も繰り返した。同月 二四日,太郎は,自ら点滴を外し,パジャマ,柵,床を血だらけにしていたため,看護師が拭こうとしたところ,「ダメダメ,ガラスの破片で怪我をする。離れ ていなさい。」「これは血じゃないよ。風船が割れて色素が飛び出したんだよ。」などと言い,同月二五日には,昼夜が逆転し,同月二六日,外食したかどうか を忘れていた。同月二九日午後一一時ころ,太郎は,廊下をうろうろしていたため,看護師がナースステーションに誘導して話を聞いていると,「邪魔をすると いけないから家に帰る。」と言ったので,看護師が病室に誘導するものの,その後,再び廊下をうろうろし,談話室に座ったり,廊下に放尿したりし,同年七月 一日及び二日にも徘徊していた。同月三日,太郎は,同病院を退院した。
 (10) 平成一一年一〇月二日,丁原苑は,太郎の認知症の症状が進み,花子や被告二江から相談されていたことから,同人らに代わり,江戸川区に対し, 太郎の要介護認定・要支援認定の申請を行った。その結果,同年一二月二四日,江戸川区は,太郎を「要介護1」(「みだしなみや居室の掃除などの身の回りの 世話に何らかの手助けを必要とする。」「立ち上がりや浴槽の出入りなどの動作に何らかの支えを必要とする。」「歩行や両足で立っていることなどの動作に何 らかの支えを必要とすることがある。」「排泄や食事はほとんど自分一人でできる。」「日常生活に問題となる行動や理解の低下がみられることがある。」など が含まれる状態)と認定した。
 (11) 被告二江は,花子から,もはや自宅で太郎の介護を続けることはできない旨言われ,平成一一年一二月一三日,江戸川区役所の老人福祉課を訪ね, 太郎の福祉施設に入居させたい旨相談をしたところ,同課から,要介護認定のためには,医師の診断書が必要であるとして,村上医師を紹介された。村上医師に よる同月一四日と一八日の二回にわたる検査の結果,村上医師は,太郎について,長谷川式八点高度異常,老人精神機能評価尺度(阪大式,以下「阪大式」とい う。)一一点重度痴呆,脳波異常を認める旨診断した。被告二江は,同月二〇日,村上医師作成の診断書等の書類を江戸川区役所に提出した。
 平成一二年一月一四日,被告二江は,江戸川区から要介護度の高い家族の在宅介護の支援のために熟年者激励手当制度があることを教えられ,同年一月一七 日,村上医師に同手当の認定申請のための検査及び診断を依頼した。村上医師は,太郎について,平成九年三月ころから老人性痴呆のため「精神活動の低下が著 しく常時生活介助が必要な状態である。」「一日平均三時間以上離床している。」「自分で食事ができる。」「常時介助が必要(部分的な介助を含む)であ る。」「常時おむつ又は,採尿採便器を使用している。」「つかまれば歩くことができる。」状態であり,また,痴呆の状態について,「寸前のことも忘れる」 「自分の部屋が分からない」「他人に暴力をふるう」「火を常にもてあそぶ」「屋外をあてもなく,歩きまわる」「しばしば興奮し騒ぎたてる」「糞尿をもてあ そぶ」状態であると報告した。
 要介護認定の変更申請をするため,太郎は,平成一二年四月三日,再び村上医師の検査及び診断を受け,村上医師は,同日,太郎について,症状「不安定」, 障害老人の日常生活自立度「A1」(外出は独力でできないが,家庭内で普段離床しており,介助を要し比較的多く外出する状態),痴呆性老人の日常生活自立 度「M」(痴呆を有し,施設による専門治療が必要ある状態),短期記憶「問題あり」,日常の意思決定を行うための認知能力「判断できない」,自分の意思の 伝達能力「伝えられない」,食事「全面介助」,問題行動「有」,妄想・昼夜逆転・暴行・徘徊「有」,精神・神経症状「夜間せん妄」,尿失禁「有」と判断 し,「長谷川式七点,阪大式九点,夜間せん妄みられ,家族の強力な援助がなければ在宅看護も困難になる。」旨診断した。
 その結果,平成一二年五月一〇日,太郎は「要介護4」(「立ち上がりや歩行などがほとんどできない。」「排泄,入浴,衣服の着脱など日常生活に全面的介 助が必要。」な状態)と認定され,同年五月から江戸川区の熟年者激励手当を受けた。
 その後,介護保険の更新申請のため,太郎は,平成一二年九月二〇日,村上医師の検査及び診断を受け,村上医師は「長谷川式七点,阪大式九点,夜間せん 妄,家族への暴力が見られ,家庭内での看護も限界に来ている。」旨診断した。
 (12) 太郎は,平成一二年九月から特別養護老人施設「乙野苑」に入所した。
 二 以上の事実を基に争点について検討する。
 (1) 前記認定によれば,太郎には,平成九年初めころ(当時八八歳)から,記憶障害などの認知症の症状が現れ,次第に症状が悪化し,徘徊がみられたこ と,本件遺言直前の平成一一年四月八日(当時九〇歳)には,岩井病院に入院した際,夜中に意味不明なことを大声で話すなどの症状があり,本件遺言の二か月 後である同年六月一四日にされた長谷川式検査結果は二点であり,記憶障害に加え失見当識や徘徊も顕著に認められたこと,同年一二月一八日には,長谷川式八 点高度異常,阪大式一一点重度痴呆,脳波異常を認める旨診断され,重度の認知症状が認められたこと,平成一二年四月三日には,日常の意思決定を行うための 認知能力「判断できない」,自分の意思の伝達能力「伝えられない」と診断されていることが明らかである。
 こうした本件遺言前後の事情にかんがみると,本件遺言当時,太郎の認知症は相当に進行し,その認識,判断能力は著しく低下していたものと推認される。
 (2) 遺言について行為能力の規定は適用されないが(民法九六一条),遺言の時において遺言の能力を有していることが必要である(民法九六三条)。認 知症の症状がみられ,介護を要する状態にあるからといって,直ちに遺言能力を有しないということはできないが,遺言者が遺言事項の意味内容,当該遺言をす ることの意義を理解して遺言の意思を形成する能力を欠く状態に至った場合には,遺言能力は失われたものというべきである。本件遺言当時,太郎が所有してい た別紙物件目録記載の土地建物は相当な財産的価値を有し,太郎には三江のほか,花子,被告一江及び被告二江の三名の推定相続人がいたが,本件遺言は,上記 土地建物を含む全財産を三江のみに相続させるものであるから,太郎においてこのような遺言内容に相応する遺言の能力を有していることが必要である。
 太郎は,平成六年遺言及び平成八年遺言によって,その財産を被告一江,被告二江,被告竹夫及び三江に配分して相続させることとしたが,その内容は相応の 理由のあるものであり,妻花子も承知していたものであった。その後,太郎は,三江と被告一江の要請で,法定相続分による旨の平成九年遺言をし,更に,平成 一一年四月二六日に相続財産すべてを三江に相続させる旨の本件遺言をしたのであるが,太郎がそれまでの遺言と異なり,三江のみにすべての財産を相続させる こととした特段の事情は見当たらない。
 この点について,証人甲野三江は,太郎が,花子にかつて不貞行為があったことに不満を感じており,また,太郎の心配をしているのは三江だけであるとし て,本件遺言がされた旨証言する。しかしながら,同証言のとおり花子に不貞行為があったにせよ,それは戦時中及び戦後間もないころのことであり,太郎はそ の事実を知りながら,花子と同居して婚姻関係を継続してきたのであるし,平成六年遺言及び平成八年遺言において,花子は相続財産を取得するものとされな かったが,これについては花子と相談の上でしたものであり,太郎が花子を憎み,花子の老後の生活を困難にさせる意図で花子を除外したものとは認められな い。また,花子自身老齢ながらも本件遺言当時まで,太郎の食事を作り,太郎が丁原苑に通うのに付き添うなどしていたのであるし,被告二江も太郎の介護に関 する手続をし,実家を頻繁に訪れ,太郎の世話をしていたのであり,三江だけが太郎の世話をしていたわけではない。
 太郎が三江に感謝し,将来も世話をしてくれることを期待していたとしても,太郎の資産は相当な財産的価値を有するものであるのに,太郎がそれまでの遺言 とは異なり,全財産を三江のみに相続させ,三江以外の推定相続人に何も取得させないこととした理由は見当たらず,本件遺言の内容は,当時の太郎と被告二 江,被告一江及び花子との関係に照らしても不可解なものといわざるを得ない。そして,本件遺言書が,たまたま太郎が三江に箱根旅行に連れられて行った機会 に作成された(証人甲野三江の証言によれば,本件遺言書は,秋夫の運転する自動車に置かれていたレポート用紙を用いたものである)という本件遺言書作成の 経緯や前記のとおりの当時の太郎の認識,判断能力を併せて勘案すると,太郎が,その有する資産の価値や推定相続人との関係を踏まえて本件遺言の意味内容, 意義を理解し,自らの意思で本件遺言書を作成することとしたものとは認められず,三江の求めるままに従い本件遺言書を作成したものと推認するのが相当であ り,太郎には本件遺言の意味内容,意義を理解した上で遺言をする能力が失われていたものと考えるのが合理的である。
 (3) 以上に対し,甲一八の一ないし三(戊田冬子の陳述書)には,太郎が本件遺言書を作成した当日,戊田宅を訪れ,兵舎の直ぐ近くに我々のよく出入り する「しんや」というそば屋があった,看板娘がいて後にその娘と兵隊が結婚した,召集を受けて外地出兵となったが,要領のよい上官のおかげで食糧の不自由 を感ずることはほとんど無かった,終戦後は,済州島から帰国,三人の子供を育てるために色々な商売をし,せんべいを焼いて卸すこともやった,(戊田の家の 庭を見ながら)趣味としては庭木いじりをしている,特にさつきの手入れは難しく,土の入れ替えや剪定で花の付き方が違ってくる,などと話していたとの記載 がある。しかし,上記陳述書は,太郎が戊田宅を訪ねた日から約七年経過した後に作成されたものであって内容の正確性に保証はないし,その内容も,太郎の生 活状況や医師による検査,診断に基づく上記(1)の認定判断を覆すに足りるものということはできない。
 (4) 以上によれば,本件遺言の内容は,三江に太郎の財産すべてを相続させるという単純なものではあるが,本件遺言当時,太郎がその遺言内容を理解し た上で,自己の判断により本件遺言書を作成したものと認めることはできず,太郎は遺言能力を有していたとは認められないから,本件遺言は無効というべきで ある。
 三 以上の次第で,本件遺言が有効であることを前提とする原告の本訴請求は理由がないから棄却すべきである。
 なお,平成九年遺言は法定相続分によることを内容とするものであり,被告らが本件土地一,二についてした前記第二,二(6)の各登記と合致しないが,原 告は本件遺言について選任された遺言執行者であるから,本件遺言が無効である以上,平成九年遺言の効力について判断する必要はない。
 よって,主文のとおり判決する。
事例 母Aが子Bに「相続させる」という遺言を作成しました。
Aが亡くなるより前にBが亡くなっていました。
Bの子(Aの孫)であるCは、Bに代わって相続を受ける旨主張しました。
しかし、Bの兄弟Dは、Aの子であるDが優先であると主張しました。
Cは提訴。
裁判所は、CはBの代襲相続人にあたると判断し、Cは無事、相続を受けることができました。
判決では、遺言に「相続させる」と書かれていたため、「遺贈」よりも(一般の)「相続」に近いという考えを採用したのです。
【東京高等裁判所 平成18年6月29日】
第3 当裁判所の判断
 1 本件遺言の内容は,上記争いのない事実等(2)記載のとおりである。そして,その内容には,夏川昭雄に「遺贈する」記載と亡花子ら推定相続人に「相 続させる」記載が存在すること,そして,別紙遺産目録記載の財産のうち,本件土地建物については,これを被控訴人三郎に相続させる旨を記載し,特定の遺産 に係るものとして遺産分割方法の指定と認められ,別紙遺産目録第1の1ないし3,6及び7の各(1)記載の土地建物は,亡一郎の相続人である亡桜子,亡花 子及び被控訴人らが相続を原因として共有し,同目録の5の建物は亡桜子の単独所有で,同目録第1の9(1)記載の不動産は亡桜子と被控訴人三郎との共有と なっているところ,本件遺言は,上記亡桜子の本件土地建物以外の不動産(共有持分を含む。)についてはこれを5等分した上,その2を被控訴人夏川に,その 各1を亡花子,被控訴人北川,被控訴人冬木に相続させることを記載し,遺産となる不動産(持分を含む。)について同人らに上記割合による共有持分を取得さ せるものであり,これらについても特定の遺産にかかるものとして分割方法について指定したものと解することができる。また,預貯金についても,特定の遺産 に係るものであるから,これについても遺産分割方法を指定したものということができる。
 以上のとおりであるから,本件遺言における「相続させる」旨の遺言は分割方法の指定と認められる。
 2 ところで,相続人に対し遺産分割方法の指定がされることによって,当該相続人は,相続の内容として,特定の遺産を取得することができる地位を取得す ることになり,その効果として被相続人の死亡とともに当該財産を取得することになる。そして,当該相続人が相続開始時に死亡していた時は,その子が代襲相 続によりその地位を相続するものというべきである。
 すなわち,代襲相続は,被相続人が死亡する前に相続人に死亡や廃除・欠格といった代襲原因が発生した場合,相続における衡平の観点から相続人の有してい た相続分と同じ割合の相続分を代襲相続人に取得させるのであり,代襲相続人が取得する相続分は相続人から承継して取得するものではなく,直接被相続人に対 する代襲相続人の相続分として取得するものである。そうすると,相続人に対する遺産分割方法の指定による相続がされる場合においても,この指定により同相 続人の相続の内容が定められたにすぎず,その相続は法定相続分による相続と性質が異なるものではなく,代襲相続人に相続させるとする規定が適用ないし準用 されると解するのが相当である。
 これと異なり,被相続人が遺贈をした時は,受遺者の死亡により遺贈の効力が失われるが(民法994条1項),遺贈は,相続人のみならず第三者に対しても 行うことができる財産処分であって,その性質から見て,とりわけ受遺者が相続人でない場合は,類型的に被相続人と受遺者との間の特別な関係を基礎とするも のと解され,受遺者が被相続人よりも先に死亡したからといって,被相続人がその子に対しても遺贈する趣旨と解することができないものであるから,遺贈が効 力を失うのであり,このようにすることが,被相続人の意思に合致するというべきであるし,相続における衡平を害することもないのである。他方,遺産分割方 法の指定は相続であり,相続の法理に従い代襲相続を認めることこそが,代襲相続制度を定めた法の趣旨に沿うものであり,相続人間の衡平を損なうことなく, 被相続人の意思にも合致することは,法定相続において代襲相続が行われることからして当然というべきである。遺産分割方法の指定がされた場合を遺贈に準じ て扱うべきものではない。
 3 上記のように解することが,亡桜子の遺言時の意思に反するものでないかを念のために検討する。
 本件遺言は,遺産である不動産のうち,本件土地建物を被控訴人三郎に相続させ,その余の不動産を5分し,その持分の1を亡花子に相続させるというもので あり,亡桜子において,子である亡花子を他の子と比べて特に有利,不利のない扱いをしようとしたものということができ,亡桜子と亡花子及び控訴人との関係 は親子や祖母と孫という良好な関係にあったもので(甲12,13),亡桜子は,亡花子の死亡後の平成8年1月16日付けの自筆証書による遺言書(甲11) を作成しようとして結局はこれを完成させなかったが,それには控訴人を他の子らと同じく遺産の6分の1を与えると記載しており,亡桜子が亡花子の死亡後に 控訴人を本件遺言による相続から排除する意思を有していたとは考えられないのである。また,本件遺言の内容は「5等分し」亡花子らにその各1を与えるとい うもので,亡桜子が,自分より先に亡花子が死亡した場合に,亡花子の子である控訴人を除外してそのような5等分するとの分割指定を維持するものとは解しが たいのである。本件相続においても,上記のように控訴人が代襲相続することが亡桜子の意思に合致するものというべきである。
 4 したがって,控訴人は,亡花子の代襲相続により本件遺言が定める遺産分割方法により亡桜子の遺産を相続し,遺産中の控訴人主張にかかる共有持分を取 得したと認めることができる。控訴人の,被控訴人らに対し,上記持分を有することの確認を求める本件請求は理由がある。
 よって,主文のとおり判決する。
事例 父が生前に作成した公正証書遺言の署名が、後から見たら父の名前ではなく、子の名前でした。
遺言内容が自分に不利であった子Aは他の子Bに対して、遺言は無効であると主張しました。
Bとしては、父の署名であることは明らかなので遺言は有効であると主張しました。
Aが提訴して来ました。
裁判所は、遺言は有効と判断し、Bは勝訴しました。
自筆証書ではなく、公証人が関与する公正証書遺言であったため、名前を書き間違えた場合でも父本人であることは明らかであると判断したのです。
【大阪高等裁判所 平成21年6月9日(抜粋)】
 ア 被控訴人は,公正証書遺言においては,本人確認のために印鑑証明書を提出するのが原則であるから,印鑑証明書の記載内容と異なる署名をしたのでは, 民法九六九条四号の要件を満たさないと主張する。しかし,公正証書作成に当たって印鑑証明書が提出されるのは,公証人法二八条二項が「公証人嘱託人ノ氏名 ヲ知ラス又ハ之ト面識ナキトキハ官公署ノ作成シタル印鑑証明書ノ提出其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法ニ依リ其ノ人違ナキコトヲ証明セシムルコトヲ要ス」と 定めていることに基づくのであって,あくまで本人確認の方法にすぎず,印鑑証明書以外の証明資料として,運転免許証,旅券及び証人の証言等によることも公 証実務上は可能とされているのであって(甲三〇),被控訴人の主張は前提事実を誤っているものであり,理由がない。
 イ 控訴人は,本件公正証書において,太郎は,遺言者自身の氏名である「甲野太郎」を記載したものではなく,相続人である控訴人の氏名である「甲野一 夫」を記載したものであるから,民法九六九条に定める遺言者の署名には当たらず,本件公正証書遺言は無効である旨主張する。
 そこで検討するに,公正証書遺言の場合には,公証人が遺言者の本人確認をした上で作成されるため,遺言者の署名は,本人の同一性判断の資料としての要素 としてよりは,記載内容についての正確性を承認する要素としての意味合いが大きいと考えられる。このことからも,遺言者が自書する氏名としては,戸籍上の 氏名と同一であることを要せず,通称,雅号,ペンネーム,芸名,屋号などであっても,それによって遺言者本人の署名であることが明らかになる記載であれば 足りると解される。もっとも,「署名」でなければならず,単に承認の意味の記載があれば足りるというものではないから,氏名ではない記号等では足りない。
 本件公正証書遺言の場合は,前記のとおり,遺言者である太郎が署名したこと自体は明らかであり,その記載された文字は,原判決別紙第一のとおりである。 前記のとおり,最初の一文字は「甲」と読むことができるものの,下部の一連の文字は判読し難いものである。控訴人主張のように,「甲野太郎」と読むことは 困難であるが,他方,被控訴人主張のように「甲野一夫」と読むことも,文字を素直に目視観察する限りにおいては困難である。しかし,遺言者欄に記載された 下部の一連の文字が判読し難いものであったとしても,最初の一文字が「甲」と読むことが可能であり,しかも全体として氏名の記載であることは明らかであっ て,遺言者本人が公正証書の遺言者欄に自己の氏名として自書し,署名の現場に立ち会った法律専門家である公証人も弁護士も,代筆や書き直しが可能であるこ とを認識しながら,遺言者の署名であることに疑問を感じず,これらの措置を執らなかったというのであって,本件公正証書における遺言者欄の記載は民法九六 九条四号の定める遺言者の署名の要件を満たしていると解するのが相当である。
事例 父の遺言により、次男Aが遺産の大部分を承継することになりました。
三男BはAに対し遺留分減殺請求を行いました。
しかし実はBは、父の土地上に建物を持っていました。
そこでAはBに対し、土地使用の利益(使用貸借)を既に受けているから遺留分侵害はない、と主張しました。
Bが提訴。
裁判所は、遺留分侵害はないと判断し、Bの請求を棄却しました。
A勝訴のポイントは、使用貸借権として、更地価格の15%相当の価格が贈与されているという主張を裁判所が採用したところにあります。
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