【死亡認定・3徴候説|刑事責任との関係・臓器移植法改正】

1 『死亡』の認定場面
2 『死亡』認定×刑事責任|具体例
3 法的死亡認定|基準=3徴候説が有力
4 3徴候説×臓器移植|法的問題|前提事情
5 3徴候説×臓器移植|法的問題|法的解釈論
6 臓器移植×法的問題|実務的扱い|過去
7 臓器移植×法整備|臓器移植法改正
8 臓器移植法改正後|未解決解釈論

1 『死亡』の認定場面

『死亡』を法律的に判定・認定する場面があります。

<『死亡』の認定場面>

あ 『死亡』×民事

『相続開始』に該当する
※民法896条

い 『死亡』×刑事

『死亡結果発生』に該当する(※1)

2 『死亡』認定×刑事責任|具体例

死亡認定が刑事責任と関わる具体的内容をまとめます。

<『死亡』認定×刑事責任|具体例(上記※1)>

あ 殺人罪

殺人罪が成立するかしないか
殺人罪の『既遂』に該当するかしないか
※刑法199条

い 致死系

『致死』に該当するかしないか
例;傷害致死・過失致死
※刑法205条

う 臓器移植

『移植のための臓器摘出』について
→『殺人罪』が成立するかしないか

3 法的死亡認定|基準=3徴候説が有力

法律上の『死亡』の認定基準についてまとめます。

<法的死亡認定|基準>

あ 基本的事項

判例や法律などによる統一的な公的見解はない

い 通説的見解

従来からの通説的な見解は『3徴候説』である

う 死亡認定・3徴候説

次のすべてに該当する時点
→『死亡』と認定する
ア 呼吸の不可逆的停止イ 心臓の不可逆的停止ウ 瞳孔拡散 対光反射の消失のことである

『死亡』については『生命・生物』の定義の解釈論とも似ています。
『生きている』ということについては,実は科学的にも統一見解がないのです。
これについては別に説明しています。
(別記事『生命・生物の定義byサイエンス』;リンクは末尾に表示)

4 3徴候説×臓器移植|法的問題|前提事情

死亡認定の3徴候説は『臓器移植』との関係で問題があります。
まずは問題となる状況をまとめます。

<3徴候説×臓器移植|法的問題|前提事情>

あ ドナーの状況

心臓は動いているけれど脳死に至っている
イ 移植手術の内容 ドナーから臓器を摘出し,別の患者に移植する

5 3徴候説×臓器移植|法的問題|法的解釈論

上記の事情がある場合の法的解釈論についてまとめます。

<3徴候説×臓器移植|法的問題|法的解釈論>

あ 手術前

『3徴候説』を前提にする場合
ドナーは『呼吸』『心臓』は『停止』していない
→まだ『死亡認定』はできない

い 手術中

ドナーから臓器を摘出する
→これにより,心臓が停止する

う 法的扱い

生きている人間の心臓停止に至らせた
→『殺人罪』が成立する

6 臓器移植×法的問題|実務的扱い|過去

現実の臓器移植における過去の扱いをまとめます。

<臓器移植×法的問題|実務的扱い|過去>

あ 告訴・捜査

臓器移植手術について,告発された事例は多い
検察が捜査することになった

い 実務的扱い

生前のドナーやその家族が臓器提供を了承していた
→このような事情から『不起訴』とすることがほとんどであった

7 臓器移植×法整備|臓器移植法改正

『臓器移植法』の改正により現在の法的扱いは以前と違います。

<臓器移植×法整備|臓器移植法改正>

あ 臓器移植の普及

医療テクノロジーが進歩している
→臓器移植の活用場面が増加した
→法律によるブレーキを緩和する必要性が大きくなった

い 臓器移植法改正|概要

臓器移植法が改正された
『脳死』を『死亡』とみなす趣旨の規定ができた
※臓器移植法6条1項

う 臓器移植法改正

実務上の死亡認定の実務上の解釈論の傾向は次のように変わった
『脳死』を死亡と認定する扱いが多くなった
『脳死』=脳幹を含む全脳の不可逆的機能喪失
※臓器移植法6条2項参照

8 臓器移植法改正後|未解決解釈論

臓器移植法改正後も,適用範囲・解釈には不明瞭な部分が残っています。

<臓器移植法改正後|未解決解釈論>

あ 適用範囲|ドナーの反対意思

ドナー本人が臓器摘出に反対していた経緯があった場合
→『死亡』と認定できるのか

い 民事への流用

『相続』に関しても同様の解釈論が用いられるのか

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