1 遺留分に反する持戻し免除の効力
2 持戻し免除への遺留分減殺請求の計算(全体)
3 具体的相続分の算定方法(判例)
4 具体的相続分の計算方法(反対説・参考)

1 遺留分に反する持戻し免除の効力

本記事では,持戻し免除が遺留分に与える影響について説明します。
まず最初に,条文の規定と,解釈論のうち基本的なものだけをまとめます。

<遺留分に反する持戻し免除の効力>

あ 条文上の規定(概要;※1)

(特別受益の持ち戻し免除について)
持戻免除は,遺留分を侵害しない限度で効力を有する
※民法903条3項

い 基本的な有効性

遺留分を侵害する持戻し免除について
→当然無効ではない

う 具体的な扱いの内容

ア 遺留分減殺請求の行使なし
遺留分減殺請求がなされない場合
→遺留分を侵害する持戻し免除も有効として扱う
イ 遺留分減殺請求の行使あり
遺留分減殺請求がなされた場合
→持ち戻して遺留分の算定を行う
=遺留分算定基礎財産に算入する(後記※2)
※高松家裁丸亀支部昭和37年10月31日

2 持戻し免除への遺留分減殺請求の計算(全体)

持戻し免除に対する遺留分減殺請求があった時の具体的計算は複雑です。計算の中で2つの方法(解釈)があるのです。まずは計算方法の大きな枠組みをまとめます。

<持戻し免除への遺留分減殺請求の計算(全体)>

あ 遺留分算定基礎財産への算入の範囲

持戻し免除は遺留分を侵害できない(前記※1)
→遺留分算定基礎財産への算入から除外されない
=算入することになる
→『算入の範囲』について2つの見解がある
詳しくはこちら|持戻し免除への遺留分減殺請求における遺留分算入範囲

い 具体的相続分の算定方法

遺留分算定基礎財産の算定後において
具体的相続分を算定する
複数の見解があったが最高裁判例で統一された(後記※2)

3 具体的相続分の算定方法(判例)

前記のように,持戻し免除に対する遺留分減殺の計算方法は2つの解釈がありました。平成24年の最高裁判例で見解が統一されました。

<具体的相続分の算定方法(判例;※2)>

あ 前提事情

特別受益に該当する生前贈与があった
遺留分減殺請求がなされた

い 遺留分侵害額の算定

贈与が遺留分を侵害する程度(価値)を算定する
=『侵害額』とする

う 具体的相続分の算定方法

『遺留分権利者の相続分』に『侵害額』を加算される
『贈与を受けた相続人の相続分』から『侵害額』を控除される
※最高裁平成24年1月26日

4 具体的相続分の計算方法(反対説・参考)

具体的相続分の計算方法について,前記以外の見解も参考として紹介します。前記の最高裁判例で封印された,つまり,実務では使われなくなった見解ということです。

<具体的相続分の計算方法(反対説・参考)>

あ 別の見解

『侵害額』を『相続財産』に加算する
その上で具体的相続分を算定する

い 不合理性

『侵害分』を『侵害された者以外も含めた相続人全員』に配分している
→不合理である
※有地亨/谷口知平ほか『新版注釈民法(27)』有斐閣p241
※蕪山厳ほか『遺言法体系』慈学社出版p459
※最高裁平成24年1月26日