1 特別受益の紛争解決手続
2 特別受益と寄与分との手続の違い
3 特別受益財産の確認訴訟の適法性
4 具体的相続分の確認訴訟の適法性
5 特別受益の法的性質論
6 みなし相続財産の確認訴訟の適法性

1 特別受益の紛争解決手続

実務において特別受益に関する見解の対立はよくあります。典型例は生前贈与が特別受益に該当するかどうかなどです。
本記事では,特別受益についての紛争解決手段について説明します。
まずは基本的構造として,特別受益は遺産分割の一環という位置付けです。

<特別受益の紛争解決手続>

あ 位置付け

特別受益は遺産分割の中での算定方法である

い 遺産分割の手続の流れ

原則的に次の順に手続が進む
遺産分割協議→調停→審判
詳しくはこちら|遺産分割|手続の流れ|協議・調停・審判・保全処分・欠席対応・寄与分との関係
家裁の手続上『別表第2審判対象事件』に分類される
詳しくはこちら|家事事件|手続|種類・基本|別表第1/2事件・一般/特殊調停対象事件

2 特別受益と寄与分との手続の違い

特別受益と似ている不公平の解消の制度として寄与分もあります。
詳しくはこちら|寄与分|全体|趣旨・典型例
特別受益と寄与分は似ているのですが,解決手続には大きな違いがあります。

<特別受益と寄与分との手続の違い>

手続上の扱い 特別受益 寄与分
単独の家事調停・審判が可能
遺産分割とのセットが必須

3 特別受益財産の確認訴訟の適法性

前記のように,特別受益は遺産分割の一環です。遺産分割の手続に含まれるのです。一方,特別受益だけを独立して審理・判断するという発想もあります。特別受益に関する単独での訴訟の適法性についてまとめます。

<特別受益財産の確認訴訟の適法性(※1)>

あ 確認請求の内容

Aが次の内容の確認を求める訴訟を提起した
確認内容=特定の財産が特別受益財産に該当すること

い 現在の権利関係の確認への該当性

持戻義務という実体法上の義務があるわけではない
特別受益財産が相続財産に含まれることになるものでもない
遺産分割の計算上,加算されるに過ぎない
→現在の権利or法律関係の確認を求めるものではない

う 過去の権利関係の確認としての適性

『あ』の確認の判決が確定した場合
相続分or遺留分をめぐる紛争について
直接かつ抜本的に解決することにはならない

え 現実的な必要性

遺産分割・遺留分減殺請求を離れて
『あ』の確認のみを別個独立に確認する必要はない

お 訴えの適法性(結論)

確認の利益を欠く
=訴えは不適法である

か 権利の性質論

具体的相続分が実体的権利関係であるか否か
→判断を示していない
※最高裁平成7年3月7日
※水上敏『平成7年度最高裁判所判例解説 民事篇』法曹会p318

4 具体的相続分の確認訴訟の適法性

『特別受益財産』の確認訴訟は認められていません(前記)。これと似ていますが,特別受益の計算結果としての『具体的相続分』を確認の対象とする発想もあります。
具体的相続分の確認訴訟についても,結局は認められていません。

<具体的相続分の確認訴訟の適法性>

あ 確認請求の内容

Aが次の内容の確認を求める訴訟を提起した
確認内容=具体的相続分の価値or価額の遺産の総額に対する割合
特別受益の算定を反映させたものである

い 訴えの適法性

前記※1の判例と同様の判断
→訴えは不適法である
※最高裁平成12年2月24日
※広島高裁岡山支部平成10年10月27日

5 特別受益の法的性質論

前記の『具体的相続分』の確認訴訟の適法性の判断は,特別受益の法的性質が大きく関わっています。法的性質について判例が指摘した内容をまとめます。

<特別受益の法的性質論>

具体的相続分の法的性質について
→分配の前提となるべき計算上の価額・割合を意味する
→『実体法上の権利関係』ではない
=学説の分類における『遺産分割分説』である
※最高裁平成12年2月24日

6 みなし相続財産の確認訴訟の適法性

以上の確認訴訟は適法性が否定されています。これらと似ていますが,多少アレンジして適法性をクリアしようとした実例もあります。
『みなし相続財産』を確認の対象とする,というアイデアです。結論としてはやはり適法性を否定されています。

<みなし相続財産の確認訴訟の適法性>

あ 確認請求の内容

特定の財産が相続財産であること
特定の財産の価額(価値)が相続財産とみなされること

い 現在の権利関係の確認としての適性

みなし相続財産という概念について
遺産分割における具体的相続分算定における
観念的操作基準の1要件に過ぎない
現に存在する具体的な財産を更正するものではない

う 過去の権利関係の確認としての適性

共同相続人の具体的相続分が算定されるためには
各相続人の特別受益と寄与分のすべての確定が不可欠である
特定のみなし相続財産の存否だけを既判力をもって確定しても
→直ちに具体的相続分の算定が可能になるものではない

え 結論

確認訴訟の対象たる適格を欠く
→訴えは不適法なものである
※東京地裁平成9年1月31日

お 補足説明

上記※1の判例と実質的には同様の理由・結論である
細かい理由の指摘に独自のものがある
※『判例タイムズ967号』p254