1 死亡退職金の法的扱いと判断基準(概要)
2 死亡退職金の特別受益性を肯定する見解
3 賃金の後払い的性格による特別受益肯定
4 生活保障の機能による特別受益肯定
5 理由の明示なしの特別受益肯定

1 死亡退職金の法的扱いと判断基準(概要)

死亡退職金については相続における法的扱いの見解が対立することが多いです。
詳しくはこちら|死亡退職金の相続財産と特別受益の該当性(基本・判断の傾向)
死亡退職金のタイプによって判断の傾向があります。
詳しくはこちら|死亡退職金のタイプ別の特別受益該当性の判断の傾向
本記事では,実際に特別受益として認めた裁判例を紹介します。判断の理由は参考になります。ただし,理由を明示せずに判断したという乱暴な裁判例もあります。

2 死亡退職金の特別受益性を肯定する見解

死亡退職金を特別受益として認める見解と実際に認めた裁判例を紹介します。

<死亡退職金の特別受益性を肯定する見解>

相続人が受給した死亡退職金について
→特別受益に該当する
※広島高裁岡山支部昭和48年10月3日(後記※1)
※福島家裁昭和55年9月16日(後記※2)
※大阪家裁昭和51年11月25日(後記※3)
※神戸家裁昭和43年10月9日
※大阪家裁昭和53年9月26日
※遠藤浩『相続財産の範囲』/『家族法大系6 中川善之助教授還暦記念』有斐閣p188
※於保不二雄ほか『注釈民法(25)』有斐閣p188

3 賃金の後払い的性格による特別受益肯定

死亡退職金のうち,賃金の後払いという性格を理由として特別受益として認めた裁判例です。

<賃金の後払い的性格による特別受益肯定(※1)>

あ 事案

死亡退職金を相続人が受給した
受給権者の規定は民法の相続人の範囲とは異なるものであった
公務員や労働基準法施行規則に準じた内容であった

い 裁判所の判断

相続人間の公平という見地から実質面で判断する
死亡退職金は賃金後払的性格を有する
→実質は遺産に類似する
→特別受益として認めた
※広島高裁岡山支部昭和48年10月3日

4 生活保障の機能による特別受益肯定

死亡退職金の生活保障の機能を重視して特別受益として認めた裁判例です。ここでの保障する対象は『受給者以外の親族』の生活のことです。誤解しやすいところなので注意が必要です。

<生活保障の機能による特別受益肯定(※2)>

あ 事案

妻が死亡退職金を受給した

い 裁判所の判断

死亡退職金は妻・子の生活保障のためのものである
このままだと『子の生活保障』としての機能が実現しない
→特別受益として認めた
※福島家裁昭和55年9月16日

5 理由の明示なしの特別受益肯定

特に理由を明確に示さずに,死亡退職金を特別受益として認めた裁判例です。

<理由の明示なしの特別受益肯定(※3)>

死亡退職金を特別受益として認めた
理由の明示はない
※大阪家裁昭和51年11月25日