1 特別受益の対象となる贈与の分類(概要)
2 その他の目的の贈与を特別受益と認めた実例
3 寄与分の清算を超える生前贈与(事案)
4 寄与分の清算を超える生前贈与(判断)
5 その他の目的の贈与を特別受益と認めなかった裁判例

1 特別受益の対象となる贈与の分類(概要)

生前贈与が特別受益に該当するかどうかの見解が対立することは多いです。本記事では,他の記事に分類しなかった『その他』の目的の贈与について説明します。
この分類が分からないと『その他』の意味も分かりません。そこで,分類の内容自体を示しておきます。

分類自体については別の記事で説明・整理してあります。
詳しくはこちら|特別受益に該当するか否かの基本的な判断基準
以下,特別受益該当性の判断がなされた裁判例を紹介します。個別的事情が考慮されたものです。いずれにしても,実際の事案の判断を考える上で参考になるものです。

2 その他の目的の贈与を特別受益と認めた実例

まず,特別受益として認められた贈与をまとめます。

<その他の目的の贈与を特別受益と認めた実例>

あ 株式

※大阪地裁昭和40年1月18日

い 別世帯を持つための財産分け

※神戸家裁姫路支部昭和44年3月29日

う 寄与分の清算を超える生前贈与(概要)

生前贈与1000万円のうち
500万円部分を特別受益として認めた(後記※1,※2)
※神戸家姫路支部昭和49年8月10日

え 身元保証契約上の債務の履行と求償債権の免除

※高松家裁丸亀支部平成3年11月19日

3 寄与分の清算を超える生前贈与(事案)

特別受益となる生前贈与と寄与分の両方がなされたという事案があります。結論としては,寄与分と特別受益の対応する部分(金額)については,寄与分も特別受益も認めないというものでした。まずは事案の内容だけをまとめます。

<寄与分の清算を超える生前贈与(事案;※1)>

あ 当事者

夫=被相続人
妻=相続人

い 事案

昭和25年以降
妻はタイプ学院を経営していた
多い時は月5,6万円の純益を得た
収入の相当部分を夫婦の生活費として使用した
夫の財産の減少の防止に若干の寄与があった
昭和40年頃
夫は老齢+腰の障害により歩行困難となった
身の回りの世話のために妻に相当の負担がかかるようになった
昭和46年
夫(被相続人)が妻に1000万円を贈与した

4 寄与分の清算を超える生前贈与(判断)

前記の事案について,裁判所の判断の内容をまとめます。

<寄与分の清算を超える生前贈与(判断;※2)>

あ 裁判所の判断(贈与の趣旨)

妻は通例の夫婦以上に家計に対して経済的寄与をなした
1000万円の贈与のうち半額の趣旨は次の『ア・イ』である
ア 寄与分の清算
イ 長年の看護の労に報いる趣旨

い 裁判所の判断(特別受益)

『う』の残余の500万円について
→生計の資本のための贈与である
=特別受益として認めた
※神戸家姫路支部昭和49年8月10日

5 その他の目的の贈与を特別受益と認めなかった裁判例

生前贈与を特別受益として認めなかった実例をまとめます。

<その他の目的の贈与を特別受益と認めなかった裁判例>

あ 株式・債権の贈与

妻に対し,労に報いるためと判断された
※長崎家裁島原支部昭和40年11月20日

い 子の異父兄の遺産を贈与

※東京家裁昭和46年9月7日

う 清算,扶養料としての贈与

※東京家裁昭和47年11月15日