1 婚姻・養子縁組のための贈与の具体例
2 婚姻・養子縁組のための贈与の特別受益性
3 挙式費用を特別受益と認めなかった裁判例
4 学費・婚姻の資金を特別受益と認めなかった裁判例
5 嫁入支度金を特別受益と認めなかった裁判例
6 分家・婚姻の資金を特別受益と認めなかった裁判例
7 婚姻のための贈与を特別受益と認めた裁判例

1 婚姻・養子縁組のための贈与の具体例

条文上,婚姻・養子縁組のための贈与は特別受益の対象となっています。
本記事では,婚姻・養子縁組のための贈与の特別受益としての判断について説明します。
まずは,婚姻・養子縁組のための贈与の具体例をまとめます。

<婚姻・養子縁組のための贈与の具体例>

あ 婚姻や養子縁組のための費用

持参金・支度金・結納金

い 挙式や披露宴の費用

2 婚姻・養子縁組のための贈与の特別受益性

特別受益に該当する婚姻・養子縁組のための贈与について,条文上は明確な基準が規定されていません。そこで,具体的・個別的事情が判断に影響します。
大きな判断の傾向としては特別受益として否定する方向性です。

<婚姻・養子縁組のための贈与の特別受益性>

あ 判断の傾向

婚姻・養子縁組のための贈与について
特別受益の適用を否定したものが多い(後記※1〜※4)
特別受益として認める例外的事案もある(後記※5)
※能見善久ほか『論点体系 判例民法10相続』第一法規出版p86

い 事案と判断の理由の傾向

婚姻のための贈与について『ア・イ』の傾向がある
→特別受益を否定する事情となる
ア 金額が不明確であることが多い
イ 扶養義務の範囲内であると判断されやすい

明確な基準が確立されていないといえます。
以下,特別受益の判断がなされた実際の裁判例を紹介します。

3 挙式費用を特別受益と認めなかった裁判例

挙式費用を特別受益として認めなかった裁判例です。

<挙式費用を特別受益と認めなかった裁判例(※1)>

挙式の費用の負担(贈与)について
→特別受益として認めなかった
※盛岡家裁昭和42年4月12日
※高知家裁昭和57年8月30日
※名古屋家裁金沢支部平成3年11月22日

4 学費・婚姻の資金を特別受益と認めなかった裁判例

婚姻の資金を特別受益として認めなかった事例です。この判断の中では,学費の負担についても特別受益として否定されています。

<学費・婚姻の資金を特別受益と認めなかった裁判例(※2)>

学費・学資・婚姻のための費用の負担について
父(被相続人)から子への贈与である
当時の経済力に応じて父親としての愛情に基づき負担した
→通常の扶養の延長とみられる
=扶養に準ずるものとする
→特別受益として認めなかった
※大阪家裁堺支部昭和35年8月31日
※福岡家裁小倉支部昭和56年6月18日

5 嫁入支度金を特別受益と認めなかった裁判例

嫁入支度金を特別受益として否定した事例です。

<嫁入支度金を特別受益と認めなかった裁判例(※3)>

嫁入支度金について
→特別受益として認めなかった
※大阪高裁昭和54年8月11日
※高松高裁昭和36年1月8日

6 分家・婚姻の資金を特別受益と認めなかった裁判例

分家・婚姻の資金を特別受益として否定した事例です。

<分家・婚姻の資金を特別受益と認めなかった裁判例(※4)>

分家・婚姻の際の贈与について
価格が不明であった
→特別受益として認めなかった
※京都家裁昭和38年8月2日

え 学費・婚姻の支度金

次の資金の負担(贈与)がなされた
ア 学費としての資金
イ 婚姻の支度金
価格が不明であった
→扶養義務を超えない
→特別受益として認めなかった
※福井家裁昭和40年8月17日

7 婚姻のための贈与を特別受益と認めた裁判例

以上は,特別受益として否定した裁判例でした。中には特別受益として認める裁判例もあります。

<婚姻のための贈与を特別受益と認めた裁判例(※5)>

あ 婚姻の準備資金1万円

ア 判断の内容
昭和23年頃に贈与した
(平成28年の価値でおおよそ10万円)
→特別受益として認めた
イ 補足説明
判決文では『婚姻費用』となっている
現在は別の法律用語(別の意味)となってしまう
要するに結婚の準備に要した費用という意味であろう
※佐賀家裁昭和40年9月3日

い 婚姻支度金

婚姻支度金について
→特別受益として認めた
※大阪高裁昭和40年4月22日