1 相続分の指定に対する遺留分減殺請求(基本)
2 相続分の指定に対する遺留分減殺請求(計算)
3 相続分の指定と遺留分減殺請求の実例(事案)
4 相続分の指定と遺留分減殺請求の実例(計算)

1 相続分の指定に対する遺留分減殺請求(基本)

条文では,遺留分減殺請求の対象は遺贈と贈与と規定されています。
詳しくはこちら|遺留分|算定方法|基本・持ち戻しの対象
解釈によって遺言による相続分の指定も遺留分減殺請求の対象として認められています。

<相続分の指定に対する遺留分減殺請求(基本)>

あ 相続分の指定による遺留分侵害

遺言により相続分の指定がなされた
指定相続分(割合)が遺留分を侵害している

い 遺留分減殺請求の可否

遺留分減殺請求を行うことができる
※最高裁平成24年1月26日

2 相続分の指定に対する遺留分減殺請求(計算)

相続分の指定に関する遺留分の計算は,遺贈や贈与を対象とする場合とは大きく異なります。
相続分の指定に対する遺留分減殺請求のケースでの計算方法をまとめます。

<相続分の指定に対する遺留分減殺請求(計算)>

あ 具体的相続分の算定方法(基本)

指定相続分が遺留分割合を超える相続人について
『指定相続分』から『遺留分侵害分』を控除する

い 具体的相続分の算定方法(負担の配分)

指定相続分が遺留分割合を超える相続人が複数存在する場合
次の割合で按分して負担(控除)する
配分割合=『遺留分割合を超過する部分』の割合
※最高裁平成24年1月26日

3 相続分の指定と遺留分減殺請求の実例(事案)

相続分の算定に関する遺留分の計算方法(前記)を実際に行うと結構複雑です。そこで,判例になっている具体的事案における計算の内容を紹介します。
まずは事案の内容をまとめます。

<相続分の指定と遺留分減殺請求の実例(事案)>

あ 当事者

ア 被相続人
被相続人A
イ 相続人(まとめ)
配偶者Y1
子5人 X1,X2,Y1,Y2,Y3
ウ 相続人(具体的関係性)
Aの前妻の長女X2,長男X1,次男X3
Aの配偶者(後妻)Y1,Y1との間の長男Y2,長女Y3

い 遺言の内容

次の割合による相続分の指定
Y1 2分の1
Y2 4分の1
Y3 4分の1
X1〜X3 いずれもゼロ

う 遺留分減殺請求

X1〜X3が遺留分減殺請求を行った
※最高裁平成24年1月26日

4 相続分の指定と遺留分減殺請求の実例(計算)

前記の事案において実際に行われた具体的相続分の計算の内容をまとめます。

<相続分の指定と遺留分減殺請求の実例(計算)>

あ 指定相続分の遺留分超過分の算出

ア Y1
2分の1(指定相続分)-4分の1(遺留分割合)
=20分の5
イ Y2・Y3
4分の1(指定相続分)-20分の1(遺留分割合)
=20分の4

い 遺留分超過額の割合の算出(※1)

遺留分超過分の割合
Y1:Y2:Y3=5:4:4

う 遺留分侵害分の合計(※2)

X1〜X3の遺留分侵害分
各20分の1×3人=合計20分の3

え 遺留分侵害分の負担の分配(※3)

ア 計算の方法
上記※2を上記※1の割合で分配する
イ Y1の負担分
20分の3 × 5/(5+4+4)
=260分の15
ウ Y2・Y3の負担分
20分の3 × 4/(5+4+4)
=260分の12

お 指定相続分からの控除

ア 計算の方法
上記※3の負担の分配分を指定相続分から控除する
イ Y1の具体的相続分
2分の1 - 260分の15 =260分の115(=52分の23)
ウ Y2・Y3の具体的相続分
4分の1 - 260分の12 =260分の53
※最高裁平成24年1月26日
※『判例タイムズ1369号』p124