1 方式違反の『変更or破棄』の判断のトラブル要因
2 『変更・破棄』の判断による結果の違い
3 変更と破棄の判別基準

1 方式違反の『変更or破棄』の判断のトラブル要因

状況によっては『変更・破棄』の判別によって大きな違いが生まれます。これは,変更か破棄かという主張の対立が生じる根本的な要因となっています。

<方式違反の『変更or破棄』の判断のトラブル要因>

あ 前提事情

遺言書の文字の訂正(追加・削除)がなされている
しかし『変更』の方式(民法968条2項)に違反している
例;押印がない

い 『変更・破棄』の判断の対立発生

民法上の『変更・破棄』のいずれかに該当する
→いずれかによって結論が異なる(後記※1)
→『変更・破棄』の見解の対立が生じる要因となる

2 『変更・破棄』の判断による結果の違い

遺言書の記載の訂正が変更か破棄かという判断で結論が違ってきます。法的効果・結果の違いは『元の文字が有効か無効か』というものです。

<『変更・破棄』の判断による結果の違い(※1)>

い 変更である場合の効力

変更の方式には厳しい方式のルールがある
方式に違反する『変更』の効力は否定される
→元の文字が有効となる
※民法968条2項
詳しくはこちら|遺言の変更(訂正)の『方式』と方式違反の効力

う 破棄である場合の効力

遺言書の『破棄』は遺言の撤回とみなされる
『破棄』には『方式』が決められていない
※民法1024条前段
→方式に関わらず『破棄』としての効力を生じる
→元の文字は無効となる

3 変更と破棄の判別基準

遺言の訂正について,変更と破棄の判別の基準をまとめます。原則的な基準については判例がなく,通説的な学説です。例外的な解釈については平成27年の最高裁判例があります。

<変更と破棄の判別基準>

あ 前提事情

遺言書の一部の記載が抹消されている

い 『変更』に該当する条件(原則・通説)

元の文字が判読できる程度である場合
→原則として『変更』である
※穂積重遠『相続法 第2分冊』p377
※我妻榮ほか『親族法・相続法』p626
※中川善之助ほか『新版注釈民法(28)』p413

う 例外的な解釈

次のような遺言者の意思が読み取れる場合
→『破棄』に該当する(撤回とみなす)
ア 遺言書の全体を不要のものとする
イ 抹消箇所に記載された遺言の効力を失わせる

え 例外に該当した具体的事例

赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線が引かれていた
※最高裁平成27年11月20日;斜線遺言事件