1 自筆証書遺言における『氏名』
2 通称・雅号・ペンネームと『氏名』該当性
3 氏・名の片方のみと『氏名』該当性
4 遺言作成の際の『氏名』の注意点(概要)

1 自筆証書遺言における『氏名』

自筆証書遺言では厳格な方式が決められています。
詳しくはこちら|自筆証書遺言の方式・要式性(全体・趣旨・有効性判断の方針)
方式のうち1つが『氏名の自書』です。実際に,氏名の自書が認められるかどうかで見解が対立するケースは多いです。
まずは『氏名』に関する規定と基本的な解釈をまとめます。

<自筆証書遺言における『氏名』>

あ 規定

自筆証書遺言の記載について
→『氏名』を自書することが要件となっている
※民法968条1項

い 解釈論

一般的には本名・フルネームを記載する
一方,正式な氏名以外を記載するケースもある
→必ず無効になるわけではない
解釈により有効となることもある

2 通称・雅号・ペンネームと『氏名』該当性

遺言に雅号やペンネームを記載するという発想もあります。この場合に『氏名』に該当するかどうか画一的に判断できません。遺言者を特定できるかどうかで判断されます。

<通称・雅号・ペンネームと『氏名』該当性>

あ 事案

自筆証書遺言における『氏名』として
次のような『正式な本名以外の呼称』を記載した
ア 通称
イ 雅号
ウ ペンネーム

い 判断の傾向

次のような傾向がある
遺言者が特定できる場合→有効
遺言者を特定できない場合→無効

3 氏・名の片方のみと『氏名』該当性

遺言には苗字・名前の両方が記載されていることが望ましいです。この一方のみという場合の判断の傾向をまとめます。

<氏・名の片方のみと『氏名』該当性>

あ 事案

自筆証書遺言の『氏名』として
次のいずれか一方のみを記載した
ア 苗字(ファミリーネーム)
イ 名前(ファーストネーム)

い 判断の傾向

次のような傾向がある
遺言者が特定できる場合→有効
遺言者を特定できない場合→無効

4 遺言作成の際の『氏名』の注意点(概要)

以上は,遺言の『氏名』の記載と有効性の判断についての説明でした。この点,遺言を作成する際には,後から判断が分かれるようなことは避けることが望ましいです。

<遺言作成の際の『氏名』の注意点(概要)>

あ 不完全による紛争発生

遺言の『氏名』が確実なものでない場合
→以上のような『氏名』の解釈の紛争につながる
例;『氏名』を欠くため無効であるという主張で裁判となる

い 遺言作成の際の注意(概要)

遺言作成の際は確実・万全に方式に適合させることが好ましい
詳しくはこちら|遺言作成や書き換えの際の注意・将来の紛争予防の工夫