1 遺言における無効行為の転換
2 無効な秘密証書遺言→有効な自筆証書遺言
3 無効な遺言→死因贈与への転換|基準・目安
4 有効な遺言→無効な遺言により撤回|概要

1 遺言における無効行為の転換

遺言は厳格な要式性があります。
ちょっとした形式ミスにより無効となるのです。
詳しくはこちら|遺言無効|全体|無効となる要因の種類・民法規定の適用の有無
無効となった場合でも,別の法律行為として有効となることもあります。
簡単に言えば『救済的解釈』というようなものです。
法的には『無効行為の転換』という理論の典型例と言えます。
まずは基本的事項をまとめます。

<遺言における無効行為の転換>

あ 前提事情

遺言に無効となる事情があった
→本来の遺言ではない法律行為として有効と認める
具体的には次の『い・う』のような判断がある

い 秘密証書遺言→自筆証書遺言

秘密証書遺言として作成したが無効であった
一定の事情がある場合
→有効な自筆証書遺言として認める(後記※1)

う 自筆証書遺言→生前贈与

自筆証書遺言として作成したが無効であった
一定の事情がある場合
→有効な生前贈与として認める(後記※2)

2 無効な秘密証書遺言→有効な自筆証書遺言

無効な秘密証書遺言は自筆証書遺言として有効となることもあります。
これはストレートに条文となっているルールです。

<無効な秘密証書遺言→有効な自筆証書遺言(※1)>

あ 前提事情

秘密証書遺言が作成された
しかし,方式に欠けるものがあった

い 原則論

原則的には遺言は無効となる
※民法960条

う 例外

自筆証書遺言に定める様式を具備している場合
→自筆証書遺言として有効である
※民法971条

3 無効な遺言→死因贈与への転換|基準・目安

無効な遺言が『死因贈与』として解釈・認定されることもあります。
この判断基準は明確なものはありません。
ところで,多くの裁判例が蓄積されています。
詳しくはこちら|無効な遺言を死因贈与として認める・肯定と否定の裁判例
多くの裁判例から抽出した判断基準の目安をまとめます。

<無効な遺言→死因贈与への転換|基準・目安(※2)>

あ 前提事情

遺言の様式を欠く
→遺言としては無効である

い 死因贈与の認定基準・目安

次の『う・え』の両方に該当する場合
→死因贈与契約が認められる傾向が強い

う 意思伝達

遺言作成者が『財産を受け取る者』に対して表明している

え 承諾

遺言作成当時〜遺言作成者の死亡の時点において
『財産を受け取る者』が財産を承継することを承諾している

4 有効な遺言→無効な遺言により撤回|概要

無効な遺言を『死因贈与』として認めるのは例外的な認定と言えます。
特殊事情があると,この例外がさらに拡大されることもあります。
『無効な遺言』が,それ以前の『有効な遺言』を撤回する裁判例もあります。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|有効な遺言を無効な遺言の死因贈与認定により撤回した事例