1 遺言執行者|基本|概要
2 遺言執行者×抵触行為|基本
3 遺言執行者×抵触行為|選任タイミングとの関係
4 遺言執行者×抵触行為|相続人申立による選任
5 遺言執行者×抵触行為|転得者
6 抵触行為の無効×第三者保護|バランス

1 遺言執行者|基本|概要

遺言の執行のために『遺言執行者』が選任されることがあります。
必須というわけではありません。
遺言執行者が選任されないこともよくあります。
遺言執行者の基本的事項については別に説明しています。
詳しくはこちら|遺言で遺言執行者が指定されていなくても選任申立ができる,報酬相場は30万円など
以下,本記事では遺言執行者の執行を保護する制度について説明します。

2 遺言執行者×抵触行為|基本

遺言執行者による遺言の執行は最大限保護されています。
遺言の執行に抵触する行為は無効となるのです。

<遺言執行者×抵触行為|基本>

あ 条文の規定

『遺言執行者がある場合』
→『遺言の執行を妨げるべき行為』が『できない』
※民法1013条

い 法解釈|判例

遺言内容(執行内容)と抵触する行為
→『無効』となる
対抗関係よりも優先される
※民法177条,1013条
※最高裁昭和62年4月23日

登記を得ていても遺言内容に反していると無効となるのです。
登記があっても守られないというある意味特殊な状態です。

3 遺言執行者×抵触行為|選任タイミングとの関係

遺言執行者の就任と抵触行為のタイミングの影響についてまとめます。
結論としては『タイミングは関係ない』という解釈となっています。

<遺言執行者×抵触行為|選任タイミングとの関係>

あ 条文・規定

『遺言執行者がある場合』に『抵触する処分』が無効となる

い 解釈論

『遺言に遺言執行者選任』が記載されている場合
→『抵触する処分は無効』となる

う 就任/処分のタイミング

次の2つのタイミングは効果に影響ない
ア 就任のタイミング
イ 遺産処分のタイミング
※最高裁昭和62年4月23日

4 遺言執行者×抵触行為|相続人申立による選任

遺言の記載によって,遺言執行者が選任されることがよくあります。
一方,遺言には一切記載がなくても選任されることもあります。
相続人が申し立てれば家裁が選任するのです。
この場合の抵触行為の効力についてまとめます。

<遺言執行者×抵触行為|相続人申立による選任>

あ 遺言による選任なし

遺言に『遺言執行者選任』が記載されていない
相続人が家庭裁判所に遺言執行者選任を申し立てた
家庭裁判所が遺言執行者を選任した

い 抵触する行為・有効性

遺言執行者が就任される『前』に相続人が遺産を処分した
→この処分は有効である

5 遺言執行者×抵触行為|転得者

抵触行為の後にさらに別人に譲渡されることもあります。
このように譲渡が繰り返された場合の有効性についてまとめます。

<遺言執行者×抵触行為|転得者>

あ 第1取引|抵触する行為

相続人Aが遺産の不動産甲を第三者Bに売却した

い 第2取引|転得者

BはCに不動産甲を売却した

う 取引の有効性

第1取引・第2取引の両方について
→遺言執行者の処分に抵触する場合
→無効となる

え 復元

遺言執行者は次の請求をすることができる
ア 登記抹消請求
イ 不動産そのものの返還請求
※民法1013条

遺言執行者の執行の保護は非常に強力なのです。

6 抵触行為の無効×第三者保護|バランス

遺言執行者の執行は最大限保護されています(前記)。
これは逆に,犠牲になる立場も生むことになります。
このバランスについてまとめます。

<抵触行為の無効×第三者保護|バランス>

あ 前提|執行の保護

遺言執行者の執行に抵触する行為は無効となる

い 第三者・犠牲

譲渡を受けた第三者は保護されない
例;登記を得ていても返還する義務を負わされる

う 登記の性質論

登記に『公信力』はない
→登記を信じても救われるとは限らないという意味