1 遺留分vs第三者保護|全体
2 遺留分×第三者保護規定|適用範囲
3 減殺請求後の第三者→対抗関係|概要
4 遺留分請求|実務的初動|処分禁止の仮処分
5 遺留分請求|実務的初動|価額賠償請求×仮差押

1 遺留分vs第三者保護|全体

遺留分に関する第三者保護の規定・解釈があります。
全体では2つの規定があります。
複雑なところです。
まずは全体をひとまとめにして整理します。

<遺留分vs第三者保護|全体>

あ 基本

遺留分減殺請求の対象物がCからDに譲渡された
一定の状況によりDが保護される
保護=Dへの現物返還請求ができない

い 第三者Dの保護要件
譲渡の時期 第三者保護要件 民法
減殺請求 損害の認識について善意 1040条1項(※1)
減殺請求 対抗要件=登記の取得 177条

2 遺留分×第三者保護規定|適用範囲

遺留分に関する第三者保護のルールがあります。
詳しくはこちら|遺留分×第三者保護|基本|適用対象・価額賠償
第三者保護規定の適用範囲についての解釈論をまとめます。

<遺留分×第三者保護規定|適用範囲(※1)>

あ 第三者保護規定|条文規定

一定の『第三者』が遺留分減殺請求から保護される
※民法1040条1項
保護される『第三者』について複数の見解がある

い 判例=減殺請求『前』のみ

遺留分減殺請求『前』の第三者のみが適用対象である
=減殺請求前に譲渡を受けた者という意味
※最高裁昭和35年7月19日

う 学説=前後共通

遺留分減殺請求『後』の第三者も含む
※中川善之助ほか『新版注釈民法(28)相続(3)補訂版』有斐閣p517

3 減殺請求後の第三者→対抗関係|概要

判例の解釈では,減殺請求『後』の第三者は保護規定の対象外です。
つまり,民法1040条1項は適用されないということです。
別の制度で保護されることになります。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|遺留分×第三者保護|遺留分減殺請求『後』の第三者→対抗関係

4 遺留分請求|実務的初動|処分禁止の仮処分

以上のように対象物が譲渡されると第三者が保護されることがあります。
譲渡のタイミングで範囲は異なりますが保護される範囲があるのです。
逆に遺留分を請求する側は,このことにしっかりと配慮すべきです。
遺留分請求側の実務的な初動の配慮について説明します。
まずは『処分禁止の仮処分』というアクションが候補と言えます。

<遺留分請求|実務的初動|処分禁止の仮処分>

あ 直接的効力

その後の譲渡により第三者に登記を取得されなくなる
→正確には『登記をされても覆せる状態』になる

い 実効性

譲渡人・譲受人による『価額弁償の抗弁』は止められない
→この主張がされると『金銭請求のみ』となる

5 遺留分請求|実務的初動|価額賠償請求×仮差押

遺留分請求側は『現物を欲しくない』ということもあります。
欲しいとしても,戦略上,希望を表面化させない手法もあり得ます。
金銭請求という形式を前提とした準備的処理をまとめます。

<遺留分請求|実務的初動|価額賠償請求×仮差押>

あ 前提理論

対象物が譲渡された場合
→遺留分権利者は譲渡人に価額弁償を請求できる
譲渡人・譲受人の意向と関係なく請求できる

い 保全措置

譲渡人が金銭を支払わないリスクがある
→事前に譲渡人の財産をロックする
=仮差押を行うこと