【遺言無効|訴訟|基本・理論|共同訴訟・当事者適格・訴えの利益・立証責任】

1 遺言無効確認|訴訟/調停手続|調停前置・管轄
2 遺言無効確認訴訟×共同訴訟|固有必要的ではない
3 遺言無効に関する訴訟|当事者適格×遺言執行者
4 遺言無効確認訴訟|訴えの利益
5 遺言無効確認訴訟|主張・立証責任
6 遺言無効確認訴訟×既判力
7 遺言無効確認訴訟×和解|遺産分割・遺留分も含める

1 遺言無効確認|訴訟/調停手続|調停前置・管轄

実際に『遺言を無効』と主張する場合の手続について説明します。
遺言無効確認訴訟や調停です。
これらの手続を利用する場合の基本的事項をまとめます。

<遺言無効確認|訴訟/調停手続|調停前置・管轄>

あ 遺言無効×訴訟/調停|事物管轄
手続 裁判所・管轄
調停 家庭裁判所
訴訟 地方裁判所(原則)
い 遺言無効×訴訟/調停|場所管轄

被告or相手方住所地

う 調停前置|原則

先に『調停』を申し立てるべきである
※家事事件手続法257条1項
詳しくはこちら|調停前置|基本|趣旨・不服申立

え 調停前置|例外

例外的事情がある場合
→『最初から訴訟』も認められる
例;話し合いができないことが明確である
詳しくはこちら|調停前置=必要的付調停|例外=合意成立の余地/見込みなし|調停取下

2 遺言無効確認訴訟×共同訴訟|固有必要的ではない

遺言無効確認訴訟の『共同訴訟形態』についてまとめます。

<遺言無効確認訴訟×共同訴訟>

あ 共同訴訟の種類

遺言無効確認訴訟は『固有必要的共同訴訟』ではない

い 具体的な訴訟への影響

訴訟提起の段階で『被告』から相続人の一部を除外できる
除外する者=遺言の『有効/無効』で見解の対立がない相続人
※最高裁昭和56年9月11日

う 類似する訴訟との違い|まとめ
訴訟の種類 固有必要的共同訴訟
遺産確認訴訟 該当する
相続人の地位がないことの確認の訴え 該当する
遺言無効確認訴訟 該当しない

遺産確認訴訟・相続人の地位確認訴訟については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|遺産分割の前提問題|遺産の範囲・相続人の確定|遺言の有効性・所有権確認

3 遺言無効に関する訴訟|当事者適格×遺言執行者

上記の遺言無効確認訴訟の当事者は『遺言執行者』がいない場合です。
遺言執行者が選任している場合の訴訟の当事者を整理します。

<遺言無効に関する訴訟|当事者適格×遺言執行者>

あ 遺言無効確認訴訟

遺言執行者が選任されている場合
→遺言執行者を被告とする
※最高裁昭和31年9月18日
※最高裁昭和51年7月19日

い 遺言無効による登記抹消請求訴訟

『遺言無効』の確認請求ではない
→『登記名義人』を被告とする
※大審院昭和15年12月20日

これらについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|遺言執行者の権限|預金払戻・遺言無効確認訴訟・登記抹消請求訴訟

4 遺言無効確認訴訟|訴えの利益

訴訟は一般的に『訴えの利益』が必要です。
遺言無効確認訴訟の場合は『遺言の効力が生じる』ことが重要です。
遺言無効確認訴訟の訴えの利益についてまとめます。

<遺言無効確認訴訟|訴えの利益>

あ 基本的事項

遺言は『遺言者が亡くなった時』に効力を生じる
→遺言者の生前は『訴えの利益』がない

い 特殊事情|判例

ア 事案 遺言者が心神喪失の常況に陥り回復する見込がない
→生存中の遺言撤回の可能性がない
イ 裁判所の判断 遺言者の生存中に遺言無効確認を求める訴えはできない
※最高裁平成11年6月11日

5 遺言無効確認訴訟|主張・立証責任

遺言無効確認訴訟の主張・立証責任の分配について整理します。

<遺言無効確認訴訟|主張・立証責任>

あ 基本的事項

『有効であると主張する者』が主張・立証責任を負う
※最高裁昭和62年10月8日

い 訴訟活動|被告

『遺言が有効である』ことを立証する
有効性を認める方向の証拠を提出する

う 訴訟活動|原告

『有効であることを疑わせる事情』を主張・立証する

え 現実的な影響

既に遺言が書面として存在する
→『有効である根拠』として強い
→被告が不利,とは限らない
→実務上,一方が有利,ということは感じない

6 遺言無効確認訴訟×既判力

遺言無効確認訴訟は,和解が成立して終了することがあります。
和解が成立しない場合,通常判決言渡で終わります。
判決が確定した時点で『既判力』が生じます。
遺言無効確認訴訟の『既判力』について説明します。

<遺言無効確認訴訟×既判力>

あ 判決×既判力

遺言無効確認訴訟の判決が確定した場合
→『既判力』が生じる
※民事訴訟法114条

い 現実的効果

その後の別の手続が行われる
例;遺産分割の調停・審判,その他の訴訟
→遺言無効確認訴訟の判決内容が前提とされる

7 遺言無効確認訴訟×和解|遺産分割・遺留分も含める

遺言無効確認訴訟の中で和解が成立することもあります。
この場合,他の『メインの紛争』も含めた全体的解決にするのが一般です。

<遺言無効確認訴訟×和解>

あ 基本的事項

遺言の有効/無効はメインの紛争の『前提』に過ぎない
→メイン紛争の内容も協議することが多い
→メイン紛争の内容も合意・和解に至ることもある

い 遺言『無効』×和解

その後『遺産分割』がメインの財産承継となる
『地裁』なので『遺産分割』は本来的管轄ではない
→和解が成立してもストレートな和解条項にできない
→『遺産を分割することに合意する』という条項にする

う 遺言『有効』×和解

その後『遺留分減殺請求』がなされることが多い
実務的には『予備的請求』として最初から主張されるのが一般である
→遺言無効確認訴訟の中で『遺留分』に関しても和解するケースもある

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