1 『相続債務』の相続は『当然分割』となる
2 相続債務×『遺産分割・遺言』|債権者には主張できない
3 相続債務×遺言の解釈|『財産』には『マイナス財産=相続債務』も含む
4 相続債務×『遺産分割・遺言』|債権者による『承認』×リスク

1 『相続債務』の相続は『当然分割』となる

遺産の中の『マイナス財産=相続債務』も相続の対象に含まれます。

<『債務』の相続|当然分割>

あ 『債務』の共同相続による承継

相続分に応じて分割されて承継する

い 理由

金銭で表せる→『可分』であるため
※最高裁昭和34年6月19日

上記判例は『連帯債務』の相続による承継を『可分』としたものです。
一般の債務は,『連帯債務』より債権者保護の要請が低い=『分割』を許容する方向性,です。
当然,『連帯債務』同様に『分割承継』になると解釈されています。

2 相続債務×『遺産分割・遺言』|債権者には主張できない

現実には遺産分割や遺言で,相続債務を『特定の相続人が単独で承継する』と決めることも多いです。

<相続債務×遺産分割・遺言|効力>

あ 相続債務の遺産分割・遺言

例;『相続債務を特定の相続人が承継する』
遺言に『相続債務』の明記がない場合は解釈による(後記)

い 相続人間での効果

遺産分割・遺言は有効である

う 債権者に対する効果

ア 原則
債権者には遺産分割・遺言の内容を主張できない
=債権者は『法定相続』に従った履行請求ができる
イ 例外
債権者が『遺産分割・遺言』による承継内容を『承認』できる
→『遺産分割・遺言』に従った履行請求ができる
債権者が『承認』することにはリスクが伴う(後述)
※最高裁平成21年3月24日

債務の承継者の指定自体は有効です。
しかし原則として債権者に対しては主張できません。
債権者の承認によって債権者に対しても有効,となるのです。

3 相続債務×遺言の解釈|『財産』には『マイナス財産=相続債務』も含む

遺言に『相続債務』の承継方法が記載されていない,というケースも多いです。
債務も多く残っている場合は,解釈によって大きな違いが生まれます。
これに関する最高裁判例を紹介します。

<相続債務×遺言の解釈>

あ 事案

遺言の内容
=『相続人の1人に財産全部を相続させる』

い 裁判所の判断

原則として『マイナス財産=相続債務』も含まれる
→相続債務も指定された相続人1人がすべて承継する
※最高裁平成21年3月24日

常識的に,プラス財産を多くもらった者が返済もする,という感覚があります。
それを基準として示したものです。
相続債権者が,この遺言内容を『承認』すれば全額の請求が可能となります(前述)。
債権者にとっても合理的です。

4 相続債務×『遺産分割・遺言』|債権者による『承認』×リスク

相続債権者は,遺産分割や遺言による債務承継を『承認』することもできます(前述)。
『プラス財産をもらった者に請求したい』というニーズもあります。
ただし『承認』するにはリスクもあるので,慎重に判断するべきです。

<債権者の『承認→履行請求』のリスク>

あ 遺産分割・遺言内容の『承継』のリスク

『債務を承継した相続人』が事後的に『遺留分減殺請求を受ける』
→返済資力が悪化する

い 『承認』判断時の考慮事項

ア 『債務を承継した相続人』の全般的な返済資力
イ 遺留分減殺請求を受ける可能性
※安達裕介『『すべての財産を相続させる』旨の遺言による債務承継』金融法務事情1997号p105