1 共同相続×限定承認|基本
2 共同相続×限定承認|熟慮期間経過による法定単純承認
3 共同相続×限定承認|『処分』による法定単純承認
4 限定承認の方式|家裁への申述
5 限定承認×相続財産目録
6 限定承認|相続人が相続債権者を調査する義務
7 限定承認の申述→家裁の審査対象

1 共同相続×限定承認|基本

限定承認の制度を利用する段階・手続について説明します。
まずは『誰が』行うのか,というところについてまとめます。

<共同相続×限定承認|基本>

あ 共同相続×限定承認|条文

相続人が複数存在する=共同相続の場合
→限定承認は『相続人全員が共同』でのみすることができる
※民法923条

い 相続放棄による除外

一部の相続人が相続放棄を行った
→この相続人は除外する
=それ以外の共同相続人全員で限定承認をすることができる
※民法939条

2 共同相続×限定承認|熟慮期間経過による法定単純承認

複数の相続人が限定承認の手続を利用する場合の解釈の問題がいくつかあります。
まずは相続人の一部に『熟慮期間切れ』となった人がいる場合です。

<共同相続×限定承認|熟慮期間経過による法定単純承認>

あ 熟慮期間経過による法定単純承認

熟慮期間が経過した
→『単純承認』とみなされる
※民法921条2項

い 限定承認への影響|発想

『単純承認』を選択したとみなされた
→『これとは別の選択肢=限定承認』を選択できない

う 限定承認への影響|判例

他の相続人について熟慮期間経過前である場合
→『相続人全員』で限定承認できる
熟慮期間切れの相続人も含む
※東京地裁昭和30年5月6日;通説

『熟慮期間』や『法定承認』については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|相続承認と相続放棄|承認には単純承認と限定承認がある|熟慮期間・伸長の手続

3 共同相続×限定承認|『処分』による法定単純承認

複数の相続人の1人が遺産を『処分』すると,単純承認とみなされます。
この場合も『限定承認』ができるかどうかの解釈が問題となります。

<共同相続×限定承認|『処分』による法定単純承認>

あ 『処分』による法定単純承認

相続人が遺産を『処分』した
→単純承認とみなされる
※民法921条

い 限定承認への影響|『不可』説

限定承認できなくなる
※富山家裁昭和53年10月23日
※中川善之助ほか『相続法(法律学全集)』有斐閣p388

う 限定承認への影響|『可能』説

ア 限定承認の可否
限定承認できる
イ 執行の制限
『法定単純承認の相続人』に対する執行→制限がない
=固有の財産への執行も可能
※我妻栄ほか『親族法・相続法(法律学体系コンメンタール篇)』日本評論社p479

4 限定承認の方式|家裁への申述

限定承認を利用する場合,具体的な手続は『家裁への申述』から始まります。

<限定承認の方式|家裁への申述>

あ 相続人の申立

ア 申立時期
熟慮期間内
イ 手続
・相続財産目録の作成→家裁に提出する
・家裁に限定承認の申述をする

い 家裁の審査

家裁が『審判』をする
※民法924条

5 限定承認×相続財産目録

限定承認を行う場合は最初に『相続財産目録』を作成する必要があります(前述)。
目録作成における問題点についてまとめます。

<限定承認×相続財産目録>

あ 財産の把握ができないケース

プラス・マイナス財産のいずれも不明
→『不明』と目録に記載すれば良い
※大阪家裁昭和44年2月26日

い 意図的な『マイナス財産』の記載漏れ

消極財産を悪意で記載しなかった場合
→単純承認事由となる
※最高裁昭和61年3月20日

6 限定承認|相続人が相続債権者を調査する義務

限定承認の手続では『相続債権者』に向けた『公告』を行います(別記事;リンクは末尾に表示)。
しかし通常『公告』だけで該当者が名乗り出てくることはほとんどありません。
限定承認の手続では相続人が積極的に『相続債権者を探す』という発想があります。

<限定承認|催告の対象者|調査義務>

相続人は,公告以上に『催告の対象者』を調査する義務はない
※東京地裁平成13年2月16日

相続には積極的には調査しなくてよい,という結論になっています。
もちろん,相続人が『知っている債権者を隠す』こととは違います。
意図的な記載漏れは責任が生じます(前述)。

7 限定承認の申述→家裁の審査対象

限定承認の申述に関して『家裁の審査・審理』の内容をまとめます。

<限定承認の申述→家裁の審査対象>

あ 審査対象

形式的要件の審査だけではない
実質的要件も審査すべきである

い 実質的要件

ア 相続人の真意
イ 相続人の資格の有無
ウ 熟慮期間内かどうか
※富山家裁昭和53年10月23日

家裁の審理内容については『相続放棄』の議論と同様です。
実際にはどこまで審査するのか,についてはある程度ブレがあると言えます。
詳しくはこちら|相続放棄の基本|趣旨・手続・家裁の審判・熟慮期間・起算点