1 受益者連続型信託|活用方法の具体例
2 『受益者連続型信託』は事業承継(遺留分対策)に活用できる
3 受益者連続型信託×遺留分|遺留分侵害にはならない
4 受益者連続型信託|『将来得る受益権』のカウント
5 受益者連続型信託|『将来得る受益権』の評価
6 『受益者連続型信託』の活用事例|幼少の後継者が就任するまでの『つなぎ登板』
7 受益者連続信託|当事者|『30年後に生存している者』に限定される
8 受益者連続信託の税務上の注意点
9 受益者連続型信託は長期化するので他にも注意すべきことがある

1 受益者連続型信託|活用方法の具体例

一般的に信託は,関係者の利用する範囲,時期などの設定の自由度が高いです。
多くの設定が可能ですが,その1つの類型として『受益者連続型信託』というものがあります。
一定の事情によって,事後的に,受益者が変更になる,という設定の信託のことです。

受益者連続型信託は,具体的な活用方法がいくつかあります。

<受益者連続型信託の活用方法の例>

ア 遺言代用信託
イ 遺留分対策
ウ 事業承継

主なものは委託者が亡くなった時受益権が相続人に移転するというものです。
遺言により相続の承継内容を定めておくことと似ています。
そこで『遺言代用信託』と言います。
また,遺留分侵害になる状態を回避したり,家業の会社支配権を承継させる方法として活用することも多いです。
つまり,これらの活用方法は重複する実例が多いのです。
事業承継への活用について,次に説明します。

2 『受益者連続型信託』は事業承継(遺留分対策)に活用できる

受益者連続型信託事業承継に活用する具体例を説明します。

<受益者連続型信託→事業承継への活用例>

あ 前提事情

現在は,会社の株式をAが所有している
会社の実質的な経営者もAである

い 信託契約の内容

この株式を他の方(受託者)に譲渡する
信託財産=株式
実質的な財産権である受益権はA自身が持つ
Aが亡くなった時には,受益権は(A→)長男とする
長男が亡くなった時には,受益権は(長男→)次男とする

Aが亡くなった後,『受益権』は長男が持つことになります。
信託財産は株式なので,受益者が株式の議決権を行使できます。
長男が経営権を握れることになります。

3 受益者連続型信託×遺留分|遺留分侵害にはならない

受益者連続型信託は『遺留分侵害』についても問題が生じない仕組みになっています。

<受益者連続型信託×遺留分>

あ 前提事情

前述と同じ事情とする

い 素朴な発想

次男としては財産をもらっていない
遺留分が侵害されている

う 解釈論

次男は『将来受益権を得る立場』にある
遺留分侵害には該当しない

4 受益者連続型信託|『将来得る受益権』のカウント

信託契約で,『長男死亡時には次男が受益権を得られる』となっています。
次男も(将来ではあっても)受益権の承継者として扱われます。
正確には,受益権のうち一定割合の承継者ということになります。
簡単に言えば『将来(長男が死亡したら)次男も受益権をもらえる。侵害されていないじゃないか』というような立場です。
『将来得られる分の価値までカウントされる』というのが信託ならではの理論です。

5 受益者連続型信託|『将来得る受益権』の評価

なお,将来得られる受益権は割合的に評価します。
そして,複数の受益者(長男と次男)の得た受益権の割合についての統一的な計算方法はまだありません。
敢えて考えるとすれば,平均寿命を用いて,形式的に受益権を持っている期間を出して,按分比例する形で割合を決めるという方法になりましょう。

6 『受益者連続型信託』の活用事例|幼少の後継者が就任するまでの『つなぎ登板』

受益者連続型信託を『つなぎ登板』として使う方法を紹介します。

<つなぎ登板|信託契約の内容>

この株式を他の方(受託者)に譲渡する
信託財産=株式
実質的な財産権である受益権はAの妻が持つ
Aが亡くなった時には,受益権は(妻→)長男とする

実際にAの生前に,長男が経営できる状態になった場合,変更として受益権を長男に移転することもできます。
この方法におけるは,本来的な経営者ではなく,つなぎとしての暫定的役割です。
なお,仮に単純にAから妻に株式を譲渡すると一定のデメリットがあります。
Aが株式を処分できることや,仮にAが亡くなった時にAの相続人に株式が渡ってしまうことです。
この点,上記の信託を用いた方法であれば,このような不都合を回避できます。

7 受益者連続信託|当事者|『30年後に生存している者』に限定される

受益者連続信託では受益権の承継について,指定する期間の制限について説明します。

(1)受益権の承継者の範囲

信託法上,信託行為から30年後に存在している者,が受益権の承継者としての範囲です(信託法91条)。
受益権を承継する者が信託行為から30年後の時点で存在している必要があります。

(2)承継する時期

承継するタイミングについては制限はありません。
実際に受益権を承継するタイミング(信託行為から)30年後よりもさらに後で構いません。

(3)現在存在しない者も対象となる

信託行為の時点では存在してない人物,が将来受益権を承継することは可能です。
典型的なのは,まだ誕生していないを設定する例です。
ただし,信託行為から30年経過時点で存在していることが前提です。
信託行為から30年後,の時点でエントリーが必要,と考えても良いです。

(4)承継する回数

受益権の承継する回数に制限はありません。
以上の期間制限の範囲内であれば,『承継』の回数に制限はありません。
例えば『委託者(当初の財産所有者)→配偶者→長男→次男→孫』など,数次にわたる承継も可能です。

8 受益者連続信託の税務上の注意点

受益者連続型信託を利用した場合,税務上の扱いに注意が必要です。
税務特有の解釈があります。

<受益者連続型信託×税務>

あ 前提事情

前記の事例と同じ

い 基本的解釈

税務上は『100%の受益権が長男→次男に移転する』と考える

う 解釈の内容

ア 1次移転
『A→長男』の時点で100%の受益権(信託財産である株式)が相続税の対象となる
イ 2次移転
長男→次男,という将来の相続の時点
→『100%の受益権』が相続税の対象となる

え まとめ

遺留分算定基礎財産には入らないけど税法上相続財産とみなされる

お 同様の税務上の扱い

『遺留分キャンセラー』3種も共通である
別項目;遺留分対策;遺留分キャンセラー,緩和策,税務の扱い

1ステップ分を省略する,という節税効果は一切生じません。
民法上と税法上の扱いが明確に異なるので注意が必要です。

9 受益者連続型信託は長期化するので他にも注意すべきことがある

受益者連続型信託は,複数世代にわたって存続することが想定されています。
長期間継続するのが通常なのです。
そこで,将来的に生じることについて類型的に対策を取っておくと良いです。
別記事に説明しています。
詳しくはこちら|遺言代用信託|受益者連続型信託の活用・税務の扱い・遺言信託との違い