1 『生前処分』と『遺言』の抵触→前後関係で優劣が決まる
2 生前処分vs『遺言による相続人への承継・第三者への包括遺贈』
3 生前処分vs特定遺贈|順序により結論が違う
4 生前処分→特定遺贈(遺言作成)|『対抗関係』となる

1 『生前処分』と『遺言』の抵触→前後関係で優劣が決まる

売却や贈与などの『生前処分』と『遺言の内容』が抵触することがあります。
このようにして2者の間で優劣が問題になるケースがよくあります。
遺言の内容と『時間的な前後関係』などで優劣が決まります。
以下,整理して説明します。

2 生前処分vs『遺言による相続人への承継・第三者への包括遺贈』

『相続人への相続』は『相続人の位置』をまるごと承継します。
これを『包括承継』と呼びます。
そこで『遺言者=譲渡などの処分をした者の立場』を相続人が持つのです。
相続人は『財産を渡す立場』→『生前処分』に劣後,という関係になります。

<生前処分vs『相続人・第三者への包括遺贈』>

あ 優先となる者

生前処分を受けた者が優先となる
=財産を承継できる

い 劣後となる者

次の『ア・イ』は劣後となる
=財産を承継できない
ア 遺言により承継すると指定された相続人
イ 包括遺贈を受けた第三者
※民法990条

相続人については,遺言における『財産承継方法』に関わらず,常に劣後です。
第三者については『包括遺贈』だけが『相続人と同じ扱い』になります。

3 生前処分vs特定遺贈|順序により結論が違う

特定遺贈というのは特定の財産を受遺者に遺贈する,というものです。
『A不動産を甲に遺贈する』というのが典型例です。

生前に遺言者が,同じ不動産(A)を別の人(乙)に売却すると『所有権の移転先』が2つ生じます。
この場合,どちらが優先されるのか,について説明します。
『生前処分』と『遺言作成』の順序によって結果が違います。

<生前処分vs特定遺贈;結果(優劣)>

あ 遺言作成 → (生前)処分

『遺言の撤回』に該当する
※民法1023条
生前処分を受けた者が優先となる=所有権を得る
詳しくはこちら|遺言の撤回の種類(基本的解釈・具体例)

い (生前)処分 → 遺言作成

対抗関係となる
登記を先に得た者が優先となる(後述)
※民法177条

4 生前処分→特定遺贈(遺言作成)|『対抗関係』となる

民法上,遺贈目的財産が相続開始時に被相続人に属しない場合,『遺贈は無効』となるはずです。
※民法996条。
しかし,判例では,『登記を先に得た方が優先』と判断しています。

<生前処分→特定遺贈|優劣>

生前処分をした者が『特定遺贈』の遺言を作成した場合
→対抗関係となる
→対抗要件(登記)の順序で優劣が決まる
※民法177条
※最高裁昭和46年11月16日

詳しくはこちら|対抗要件のまとめ|不動産・動産・債権・株式・知的財産権
なお,『売却』ではなく『債権者からの差押を受けた』という場合でも同様です。
つまり『対抗関係』となります。