1 家事調停で『不成立』となると審判・訴訟をすることになる
2 家事調停の不成立→『調停に代わる審判』により早期解決できることもある
3 家事調停で『調停に代わる審判』が活用できる場面・典型例
4 家事調停|『調停に代わる審判』が利用できる条件・具体的方法
5 家裁が『調停に代わる審判』を行う事情
6 家裁が『調停に代わる審判』として決定する内容・効力
7 調停に代わる審判は『異議申立』により効力を失う|『審判承服宣言』
8 調停に代わる審判|事前の審判承服宣言により『異議を排除』→ルーレット方式

1 家事調停で『不成立』となると審判・訴訟をすることになる

家事調停の中で『調停に代わる審判』という制度があります。
平成24年の法改正でより使いやすくなっています。
まずは『活用できる場面』をまとめてから,制度の内容を説明します。

<家事調停の停滞=『調停に代わる審判』の活用できる場面>

あ 相手が感情的に出席拒否・ノーリアクション
い 相手に和解の意向はあるが『出席』が面倒→参加してくれない
う 感情面・意地により『ごくわずかな部分』で合意に至っていない

このような状況の場合,通常であれば『調停不成立』となってしまいます。

<家事調停|相手が参加しない・合意に至らない場合>

あ 相手が参加しない・合意に至らない場合の行方

調停は不成立となる

い その後の対応

ア 遺産分割など
自動的に審判に移行する
→しっかりした主張・立証が必要となる
イ 離婚
調停は終了となる
→申立人としては改めて『離婚訴訟提起』をせざるを得ない
→しっかりした主張・立証が必要となる

<参考|『訴訟』との違い>

あ 『訴訟』での『欠席』

欠席すると自動的に負ける制度(擬制自白)がある
※民事訴訟法159条

い 『調停』での『欠席』

擬制自白のような制度はない

2 家事調停の不成立→『調停に代わる審判』により早期解決できることもある

(1)『調停に代わる審判』=次のステージに行かなくて済む方法

相手の協力・合意がない状態では『話し合いによる解決』が実現する可能性は低いでしょう。
かと言って,審判や訴訟を行うと,本格的な主張・立証を重ねてゆく必要があります。
時間的・金銭的・精神的コストが増えてしまいます。
この点,審判・訴訟を避けられる可能性のある方法があります。
『調停に代わる審判』という手続です。

(2)平成24年法改正で使いやすくなった

平成24年の法改正以前は『一方がノーリアクション』という場合は使えませんでした。
ちょっとマイナーな手続だったのです。
現在でも弁護士によっては制度自体を知らない,ということもよくあります。

(3)類似する制度

『調停に代わる審判』は家事調停のみの制度です。
一方,民事訴訟や民事調停ではこれと似ている『裁定和解・17条決定』という手続もあります。
詳しくはこちら|判決と和解の中間的手続;裁定和解,17条決定

3 家事調停で『調停に代わる審判』が活用できる場面・典型例

前述した『調停に代わる審判』を活用できる典型例を再掲します。

<家事調停の停滞=『調停に代わる審判』の活用できる場面>

あ 相手が感情的に出席拒否・ノーリアクション
い 相手に和解の意向はあるが『出席』が面倒→参加してくれない
う 感情面・意地により『ごくわずかな部分』で合意に至っていない

それぞれの具体例をまとめます。

<相手が感情的に出席拒否・ノーリアクション>

相手が申立人に対して激しい嫌悪・憎悪感情を持っている
『あいつが起こした調停なんか応じてやらない』

<相手に和解の意向はあるが『出席』が面倒→参加してくれない>

・『遺産分割調停』における典型例
相続人が多い
全員が分割案に納得している
しかし相続人が高齢で,裁判所が遠いので出席が苦痛である
弁護士への依頼も金銭的・精神的に割に合わない(面倒)
→調停の実施に協力しない

<感情面・意地により『ごくわずかな部分』で合意に至っていない>

あ 典型的な状況

当事者は,ほぼ解決案に納得している
条件のうち,ごくわずかな部分だけ『感情的・意地により』了承せず,合意に至っていない

い 典型例

ア 遺産分割調停における典型例
遺産総額約10億円の分割方法は全員納得している
しかし『未清算の金銭』約10万円について対立したまま
イ 離婚調停における典型例
評価額約5000万円の自宅の清算方法は両者納得している
『別居期間中のローン負担分』約50万円の清算について対立したまま
ウ 家事調停全般における典型例
解決案の内容以前に『相手が提案して自分が承諾』という形式を理由に拒絶する

4 家事調停|『調停に代わる審判』が利用できる条件・具体的方法

『調停に代わる審判』の制度の説明に移ります。

(1)調停に代わる審判の手続概要

<調停に代わる審判|概要>

あ 『調停に代わる審判』の概要

家裁が職権で『事件の解決のために必要な審判』を行う

い 要件

調停が成立しない場合において,家裁が『相当と認める』場合
→『当事者の同意』などは必須ではない

う 対象事件

家事調停のうち,次の種類以外
《対象外の事件》
ア 協議離婚の無効確認
イ 親子関係の不存在確認
ウ 嫡出否認
エ 認知
※家事事件手続法284条1項

条文上『訴訟対象事件』は除外,として,さらに『訴訟対象事件のうち離婚・離縁』だけは対象に含む,とされています。
これを具体的に整理したのが上記です。
詳しくはこちら|家事事件|手続|種類・基本|別表第1/2事件・一般/特殊調停対象事件

『調停に代わる審判』を利用できる種類は,このようにちょっと分かりにくいのです。
利用できる種類のうち典型的なものをまとめます。

<調停に代わる審判を利用する典型的な種類>

ア 遺産分割調停
イ 離婚調停
ウ 婚姻費用分担金請求の調停
エ 子の引渡しの調停

(2)調停に代わる審判の具体的な利用方法

調停に代わる審判は,条文上『家裁の職権』で行うこととされています。
当事者に『申立権』はありません。
そこで,実際には次のような方法を取ります。

<調停に代わる審判の利用方法>

家裁に対して『調停に代わる審判』を要請する
『上申書』『意見書』などの書面を提出する

5 家裁が『調停に代わる審判』を行う事情

家裁が『調停に代わる審判』を行う条件としては条文上『相当と認める』とだけ規定されています(前述)。
その典型例をまとめます。

<調停に代わる審判を『相当と認める』典型例>

あ ノーリアクション

当事者の一方が出席しない・出席拒否

い 合意にほぼ達しているがごく一部分で対立している

このような状態であれば,家裁は『調停に代わる審判』を『相当と認める』と判断する可能性が高いです。
前述の『活用できる場面』がまさに該当します。

6 家裁が『調停に代わる審判』として決定する内容・効力

家裁は『相当と認める』場合は『調停に代わる審判』を行います。
『審判』の内容について条文のルールをまとめます。

<調停に代わる審判|内容>

あ 『審判』の内容

当事者双方のために衡平に考慮し,一切の事情を考慮する
→実際には『納得が得られる可能性が高い』内容を決める

い 給付の命令

財産上の給付その他の給付を命じることができる
例;子の引渡し・金銭の支払
※家事事件手続法284条1項,3項

う 『審判』の効力

確定審判・判決と同様の効力→執行力あり
※家事事件手続法286条

詳しくはこちら|債務名義の種類|確定判決・和解調書・公正証書(執行証書)など

7 調停に代わる審判は『異議申立』により効力を失う|『審判承服宣言』

(1)『調停に代わる審判』→『異議申立』により無効化

『調停に代わる審判』は,形式的には裁判所が一方的に決めたものです。
当事者としては『無効化』する方法が残されています。

<調停に代わる審判への異議申立>

あ 異議申立;1項,2項

『調停に代わる審判』に不服のある当事者
→2週間以内に異議申立ができる
理由・主張は不要

い 異議申立の効果;5項

調停に代わる審判は効力を失う
※家事事件手続法286条(項数は上記)

(2)異議が出されずに『調停に代わる審判』確定,ということも多い

『異議による無効化』という手段はありますが,実際には『異議が出されない→審判確定』ということも多いです。

<調停に代わる審判→ありがちな当事者の対応>

あ 当初から実質的に解決案に当事者が納得している場合

『公的判断だから納得する・敢えて異議を出すまでもない』と考える

い 調停への出席すら嫌悪する相手

『審判の告知(通知)』が来ても無視してくれる=異議を出さない

8 調停に代わる審判|事前の審判承服宣言により『異議を排除』→ルーレット方式

『調停に代わる審判』の前に当事者全員で『異議を出さない』という宣言をする方法もあります。

<審判に服する旨の共同の申出|審判承服宣言>

事前に当事者全員が共同で『審判に服する(異議を出さない)』という申出ができる
→この場合『調停に代わる審判』の後に『異議』を出せなくなる
除外;離婚・離縁の調停
※家事事件手続法286条8項

この宣言により『調停に代わる審判』で最終解決に至ることが確定します。
一般的な裁判における『3回の審査を受ける機会=3審制』の大きな例外です。
『家裁の出した結論』で最終結論となるので,有利になれば良いですが,不利を被るリスクもあります。
そこで『(ロシアン)ルーレット方式』と呼んでいます。