【株主の権利の分類・まとめ|自益権・共益権|少数株主権】

1 株主の権利の分類・まとめ|自益権と共益権
2 『自益権』の内容
3 単独株主権(共益権)の内容
4 少数株主権(共益権)の内容

1 株主の権利の分類・まとめ|自益権と共益権

『株式』『株主』は,株式会社という制度の根幹的・本質的なものです。
株主の権利については,会社法で原則的なルールが細かく決められています。
このルールが,『株主間の対立』『派閥紛争』『支配権争い』のモトとなり,また解決策・対策の前提となるわけです。

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以下,株主権をまとめます。

<株主権の分類>

あ 自益権

会社から経済的な利益を受ける権利

い 共益権

株主が会社の経営に参加する権利
ア 単独株主権 1株しか有していない株主でも行使できる権利
イ 少数株主権 一定割合or一定数の株式数を有する株主だけが行使可能な権利

2 『自益権』の内容

株主の『自益権』とは,要するに金銭的な利益・権利です。

<自益権の内容|代表例>

あ 剰余金分配請求権(105条1項1号)

いわゆる『配当』です。

い 残余財産分配請求権(105条1項2号)

会社が清算・解散となった場合の『出資の返還』という趣旨です。

3 単独株主権(共益権)の内容

株主は限定的に会社の運営・経営に参加する,というのが株式会社の制度の根幹です。
『株主総会に参加して決議に加わる』というもの=議決権,が基本です。
それ以外にも『経営への参加』は類型化されています。

<単独株主権(共益権)の内容>

請求(権利)の内容 保有期間 条文(会社法)
議決権 105条1項3号
設立無効等の訴え 828条2項1号等
株主総会における議案提案権 304条
累積投票請求権 342条
株式募集発行差止権等 210条等
取締役会招集請求権・出席発言権 367条
取締役会議事録閲覧謄写請求権 371条2項
代表訴訟提起権 6か月 847条等
取締役・執行役の違法行為差止権 6か月 360条,422条

4 少数株主権(共益権)の内容

株主が限定的ながら経営に参加する類型の中で,一定の『株式数や割合の制限』付きのものもあります。
『一定の割合または株式数を保有する株主』限定の権利です。
これを『少数株主権』と呼んでいます。

<少数株主権の内容>

請求(権利)の内容 株式数 保有期間(※1) 条文(会社法)
株主総会の招集手続等に関する検査役選任請求 議決権の1%以上 6か月 306条
議題提案権・議案通知請求権 議決権の1%以上または300個以上の議決権 6か月 303条2項,305条
業務執行に関する検査役の選任請求 議決権または発行済株式の3%以上の株式 358条
会計帳簿閲覧請求権 議決権または発行済株式の3%以上の株式 433条
株主総会招集請求権 議決権の3%以上の議決権 6か月 297条
役員解任の訴えの提起 議決権の3%以上の議決権 6か月 854条
会社解散の訴えの提起 議決権または発行済株式の10%以上を有する株主 833条
簡易合併等に対する反対権 最低限の定足数で特別決議否決可能な株式数を有する株主 796条4項

※1 保有期間
公開会社が前提です。

本記事では,株主の権利の分類について説明しました。
実際には個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることがあります。
実際に株主の権利に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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