【職業安定法・労働者派遣法×『労働者』|業務規制=許可制】

1 『労働者供給』の禁止|職業安定法
2 労働者派遣の法規制|労働者派遣法
3 労働者供給・派遣の解釈|全体
4 労働者供給・派遣の解釈|事業者自身が労働力を利用
5 労働者供給・派遣の解釈|事業者と発注者の独立性
6 労働者供給事業の解釈|潜脱・偽装
7 労働者派遣/請負基準通達

1 『労働者供給』の禁止|職業安定法

通常の『労働』は雇用主のもとで業務に従事するスタイルです。
一方『他の者・会社に出張して従業する』という特殊なスタイルもあります。
法律上は『労働者派遣』『労働者供給』という方法です。
強い法規制があります。
まずは『労働者供給』に関する規定をまとめます。

<『労働者供給』の禁止|職業安定法>

あ 『労働者供給』の定義

供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること
労働者派遣法における『労働者派遣』は許可or届出により適法となる(後記)
※職業安定法4条6項

い 労働者供給事業の禁止

労働者供給事業・供給を受けることは禁止する
※職業安定法44条

う 違反への罰則|法定刑

懲役1年以下or罰金100万円以下
※職業安定法64条9号

これはルールの原則部分です。
一般的に『労働者供給・派遣』を禁止しているのです。
一方で『労働者派遣』だけは一定の手続を履行すれば適法になるのです。
次に『労働者派遣』についての規定を説明します。

2 労働者派遣の法規制|労働者派遣法

労働者派遣は一定のルールのもとに適法になります。
このルールの内容をまとめます。

<労働者派遣の法規制|労働者派遣法>

あ 『労働者派遣』の定義

ア 基本的事項 派遣元の雇用する労働者を,派遣先の労働に従事させること
イ 付随的な条件 ・派遣元・労働者間の雇用関係を維持する
・業務の指揮命令は派遣先が行う
・派遣先は労働者を雇用しない
※労働者派遣法2条1号

い 労働者派遣事業×規制・罰則

労働者派遣事業を行うためには
→許可が必要
※労働者派遣法5条1項

う 参考|平成27年法改正前

平成27年法改正前は『一般/特定』労働者派遣という区分があった
『許可/届出』という2つの制度があった
→法改正により『許可』に一元化された
一定の経過措置もある
※附則6条1項

3 労働者供給・派遣の解釈|全体

実際には『労働者供給・派遣』に該当するかどうかが争われるケースもあります。
『労働者供給・派遣』の解釈について,まずは基本的部分をまとめます。

<労働者供給・派遣の解釈|全体>

あ 根本的な判断方法

次のすべてに該当する場合
→『労働者』供給・派遣事業ではない
形式が『請負』であっても同様である

い 労働者供給・派遣事業を否定する事情

次のすべてに該当する→初めて否定される
ア 事業者自身が労働力を利用しているイ 事業者と発注者の独立性があるウ 潜脱・偽装という特殊事情がない ※職業安定法施行規則4条1項
※労働者派遣/請負基準通達(後記)

4 労働者供給・派遣の解釈|事業者自身が労働力を利用

労働者供給・派遣の解釈のうち『労働力の利用』に関する事項をまとめます。

<労働者供給・派遣の解釈|事業者自身が労働力を利用>

あ 基本的な基準

事業者自身が労働者の労働力を自ら直接利用している
=次のような指示・管理をすべて事業者が行っていること
『単なる把握』は『管理』には含まれない

い 判断要素

ア 業務遂行×指揮監督 『事業者』が労働者の業務を指揮監督・管理する
・業務遂行の『方法』
・業務遂行についての『評価』
イ 業務時間×指示・管理 『事業者』が業務・労働時間に関する指示・管理を行う
・労働者の始業・終業時刻・休憩時間・休日・休暇などの管理
・労働時間の延長・休日労働の指示・管理
ウ 企業内の秩序維持×指示・管理 『事業者』が企業における秩序の維持・確保のための指示・管理を行う
・労働者の服務上の規律に関する事項
・労働者の配置などの決定・変更
※職業安定法施行規則4条1項
※労働者派遣/請負基準通達(後記)

5 労働者供給・派遣の解釈|事業者と発注者の独立性

労働者供給・派遣の解釈のうち『独立性』に関する事項をまとめます。

<労働者供給・派遣の解釈|事業者と発注者の独立性>

あ 基本的な基準

業務発注者より請け負った業務を『事業者自身の業務』として処理する
当該契約の相手方から独立して処理する
=次のようなすべての事情に該当する

い 判断要素

ア 法的責任 『事業者』が業務・作業の完成について法律上の全ての責任を負う
イ 経済的負担・責任 経済的負担をすべて『事業者』が調達・負担する
内容の例=資金・機械・設備・器材・材料・資材など
例外・除外=業務上必要な簡易な工具
ウ 労働者に対する義務 労働者に対し『事業者』が使用者として法律に規定された全ての義務を負う
エ 企画・技術・経験 『事業者』の持つ企画(力)・技術・経験によって業務を処理する
単純な肉体的な労働力の提供ではない
※職業安定法施行規則4条1項
※労働者派遣/請負基準通達(後記)

6 労働者供給事業の解釈|潜脱・偽装

労働者供給・派遣の制度は『潜脱・偽装』がよく生じます。
これに関して規則・通達における規定を紹介します。

<労働者供給事業の解釈|潜脱・偽装>

あ 潜脱・偽装

次の場合は『労働者』(供給事業・派遣事業)とする
ア 『労働者供給の禁止』を潜脱するために偽装したものであるイ 事業の真の目的が『労働力の供給』である

い 他の事情との関係

仮に他の事情(前記)に該当しても結論に変わりはない
※職業安定法施行規則4条2項
※労働者派遣/請負基準通達(後記)

7 労働者派遣/請負基準通達

以上のまとめで用いた通達を記しておきます。

<労働者派遣/請負基準通達>

あ 正式名称

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準

い ナンバリング

当初;昭和61年4月17日労働省告示第37号
改正;平成24年厚生労働省告示第518号

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