【未払賃金立替払制度,不利益変更禁止,賞与の義務性】

1 雇用主が破産した場合は,賃金は優先債権となるが,配当されないこともある
2 雇用主が倒産した場合は,未払賃金を政府が立て替えて払う制度がある
3 不利益変更の禁止により賃金の減額は原則的に認められない
4 賞与支給は義務ではない

1 雇用主が破産した場合は,賃金は優先債権となるが,配当されないこともある

仮に会社(使用者)が破産(倒産)する場合は,従業員としては給与支払が心配です。
破産法上,配当の中で,賃金は優先扱いされています。
財産債権または優先的破産債権という扱いに分類されています。

<破産手続における賃金の扱い>

あ 財団債権

※破産法149条
破産手続開始決定前3か月分の賃金債権
最優先とされます。
破産管財人から随時弁済を受けることができます。

い 優先的破産債権

※破産法98条
配当の中で優先的な扱いとなります。

しかし,いずれの分類でも,必ず全額が弁済,配当される,ということではありません。
全額は配当されない,ということは多いです。
また,配当される場合でもある程度の時間を要することがあります。

2 雇用主が倒産した場合は,未払賃金を政府が立て替えて払う制度がある

雇用主が倒産した場合でも,破産の手続が取られるとは限りません。
また破産の手続が取られても,未払いの賃金について,配当や弁済がなされない場合もあります。
このような場合のために,政府による立替制度があります。

<労働者健康福祉機構による未払賃金立替払制度>

雇用主が倒産した場合に,政府が従業員への未払賃金の立替払を行う
手続は,厚生労働省所管の労働者福祉機構が行う
立替払がなされる金額は,状況によって,一定の割合が定められている
<→厚生労働省のHP;未払賃金立替払制度の概要

3 不利益変更の禁止により賃金の減額は原則的に認められない

原則として雇用主が一方的に給与を減額することは許されません。

逆に,労使で話し合いによって合意した場合には許されます。
合意によらないで給料を減額することが許容される場合もあります。

不利益変更が有効となる要件;概要>

・労使間の合意がある場合
・合理性がある場合

不利益変更の禁止についての詳しい内容は別に説明しています。
<→別項目;不利益変更禁止の原則には例外として認められる場合もある

4 賞与支給は義務ではない

一般的に賞与(ボーナス)は,支給が義務付けられているものではありません。
具体的には,労働契約や就業規則,賃金規程等による規定,合意によります。
規定や合意として,支払額,算出方法等が明確に定めてあれば,雇用主は,これに基づき支給する義務があります。
通常は,会社業績による支給することができるのように,『支給は任意』という体裁になっていることが多いです。
ただし,従前の実績と大幅に異なる場合は,一種の不利益変更として認められない可能性もあります。
例えば長年一定額の賞与の支給が継続されているのに『今期は不支給』という場合は業績悪化などの合理的理由が必要となりましょう。

条文

[破産法]
(優先的破産債権)
第九十八条  破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権(次条第一項に規定する劣後的破産債権及び同条第二項に規定する約定劣後破産債権を除く。以下「優先的破産債権」という。)は、他の破産債権に優先する。
2  前項の場合において、優先的破産債権間の優先順位は、民法 、商法 その他の法律の定めるところによる。
3  優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合には、その期間は、破産手続開始の時からさかのぼって計算する。

(使用人の給料等)
第百四十九条  破産手続開始前三月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする。
2  破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権(当該請求権の全額が破産債権であるとした場合に劣後的破産債権となるべき部分を除く。)は、退職前三月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前三月間の給料の総額より少ない場合にあっては、破産手続開始前三月間の給料の総額)に相当する額を財団債権とする。

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