【不貞行為は離婚原因|基本|破綻後の貞操義務・裁量棄却・典型的証拠】

1 『不貞行為』=夫婦以外の異性との性交渉→離婚原因・慰謝料
2 不貞行為は1回でも『離婚原因』に該当する
3 夫婦関係『破綻後』→貞操義務が解消される
4 離婚原因×裁量棄却|特殊事情により救済されることもある
5 不貞行為×裁量棄却|不貞の程度が軽度+反省→離婚が否定されることもある
6 不貞行為×裁量棄却|離婚後の経済状態を考慮して離婚を請求したケース
7 不貞行為×裁量棄却|『被害者』が離婚を望む場合は棄却しない
8 不貞(浮気)の発覚のきっかけ・証拠|ITに注意

夫婦の一方による不貞行為の基本的事項を説明します。
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1 『不貞行為』=夫婦以外の異性との性交渉→離婚原因・慰謝料

『不貞行為』は離婚に直結する行為のなかでも代表的なものです。

<不貞行為×離婚原因>

あ 不貞(行為)の意味

夫婦のいずれかが、配偶者(妻or夫)以外の者と性交渉を行うこと

い 離婚原因

『不貞行為』は独立して『離婚原因』とされている
※民法770条1項1号
詳しくはこちら|離婚原因の意味・法的位置付け

いわゆる『不倫・浮気』と呼ばれる行為です。
『配偶者=被害者』にとって大きなショックを与えます。
そこで単独で『離婚原因』とされているのです。
また不法行為として損害賠償責任も生じます。

2 不貞行為は1回でも『離婚原因』に該当する

不貞行為は大きな精神的ショックを生じるものです。
そこで『1回だけの性交渉』という場合でも、離婚原因に該当します。
『該当するか否か』ということについては、回数や期間などは無関係なのです。
もちろん、特殊事情がある場合は、別の扱いもあります(後述)。

3 夫婦関係『破綻後』→貞操義務が解消される

<事例設定>

夫Aの愛人B(不貞)が発覚した
夫婦ABは仲が悪くなり、別居した
その後、妻Bは別の男性Cと交際、同居するようになった

通常、夫婦間では貞操義務があります。
不貞(不倫)は離婚原因となります。
しかしこの事例では、別居の時点で、夫婦関係が破綻したと言えるでしょう。

<夫婦関係破綻×貞操義務>

あ 破綻と貞操義務・離婚原因の関係

夫婦関係破綻後→夫婦間の貞操義務は消滅、解消する
夫婦関係破綻後の性交渉→『貞操義務違反=不貞=離婚原因』にはならない
※判例タイムズ908号p284

い 破綻と慰謝料(不法行為)の関係(参考)

夫婦関係破綻後に夫婦の一方と性交渉をした場合→慰謝料は発生しない
※最高裁平成8年3月26日
詳しくはこちら|夫婦の一方との性交渉が不法行為になる理論と破綻後の責任否定(平成8年判例)

離婚原因には該当せず、また、慰謝料の対象ともなりません。
ただし、当然ですが、実際に証拠上認定されるかどうか、はまた別の問題です。

4 離婚原因×裁量棄却|特殊事情により救済されることもある

不貞行為やその他の離婚原因があっても離婚が認められるとは限りません。
特殊事情がある場合は、例外的に離婚請求が棄却されることもあります。

<離婚請求の裁量棄却>

あ 前提事情

形式的な離婚原因が存在する

い 離婚を認めるべきではない事情

『婚姻の継続を相当と認める』場合
→裁判所は離婚請求を棄却することができる

う 大まかな基準

裁判所が『この程度の関係悪化は修復できる』と考えるような場合

裁判所が裁量で『離婚請求を否定する』という制度です。
そこで『裁量棄却』と呼ばれます。

5 不貞行為×裁量棄却|不貞の程度が軽度+反省→離婚が否定されることもある

不貞行為があっても、裁量棄却により離婚が認められないこともあります。

<不貞行為×裁量棄却|典型的な特殊事情>

あ 不貞行為の程度が軽度

ア 不貞行為の回数が非常に少ないイ 不貞行為(交際)の期間が短い

い 加害者の態度

不貞行為の加害者が十分に反省している

裁量棄却で考慮される事情は幅広いです。
具体的な事例は後述します。

6 不貞行為×裁量棄却|離婚後の経済状態を考慮して離婚を請求したケース

不貞行為を原因とする離婚請求訴訟で『離婚後の経済状態』を考慮した判例もあります。

<不貞行為×離婚後の経済状態の考慮>

あ 考慮された事情

離婚を認めるとその後の経済状態が悪化し、生活に不安が生じる

い 裁判所の判断

離婚継続が好ましい
→離婚請求を棄却する
※東京地裁昭和30年5月6日
※千葉地裁昭和40年2月20日

『裁量棄却』は『精神病』を原因とする離婚でも問題になります。
関連コンテンツ|精神病×離婚|裁量棄却・具体的方途論|典型事情|不合理性=批判

7 不貞行為×裁量棄却|『被害者』が離婚を望む場合は棄却しない

通常は、不貞行為が原因で夫婦関係が壊れてしまっているからこそ離婚訴訟が提起されるはずです。
『被害者』が離婚を希望している以上は裁判所がこれを止める、ということは通常生じません。

<不貞行為×裁量棄却|被害者の離婚希望>

『被害者』側が離婚を希望している場合
→裁判所が離婚を抑止する意義は乏しい
→裁量棄却は適用しない
※二宮周平・榊原富士子『離婚判例ガイド 第2版』有斐閣p37

このような類型では、近年は『裁量棄却』の適用はほとんどありません。

8 不貞(浮気)の発覚のきっかけ・証拠|ITに注意

不貞行為が発覚する経緯は大体程度決まったモノがあります。
責任追及の交渉や訴訟では『裏付ける証拠』となるものです。
これについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|不貞行為(不倫)の証拠(不倫・浮気が発覚する経緯)

本記事では、離婚原因の1つである不貞行為について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に夫婦や不貞(不倫)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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