【夫婦同姓の制度の問題点(全体)と不都合を避ける方法】

1 夫婦同姓の制度と問題点
2 夫婦同姓の違憲主張と選択式別姓のアイデア
3 夫婦同姓の不都合を避ける方法
4 結婚制度の問題点(概要)

1 夫婦同姓の制度と問題点

現在,夫婦は同じ姓(苗字)にすることが法律上強制されています。
夫婦同姓の制度のことです。
夫婦同姓による現実的な支障が生じています。問題点が指摘されています。

<夫婦同姓の制度と問題点>

あ 夫婦同姓の規定(引用)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
※民法750条

い 実質的な効果

法律婚をした夫婦で『同姓』が強要される

う 夫婦同姓の主な現実的問題点

夫婦の一方は氏の変更を強要される
→仕事・プライベートで支障やコストが生じる
現実には女性(妻)が氏を変更する実情にある
→男女平等に反する

2 夫婦同姓の違憲主張と選択式別姓のアイデア

夫婦同姓は実際の問題点が生じています。
理論的な面で,憲法に違反するという主張がなされています。
平成27年の最高裁判例ではかろうじて合憲と判断されています。
いずれにしても,国会で制度を改良する必要があると思われます。
法改正のアイデアとしては,選択式別姓の提唱が非常に合理的です。

<夫婦同姓の違憲主張と選択式別姓のアイデア>

あ 憲法違反の主張(概要)

夫婦同姓の規定について
→憲法に違反するという主張もなされている
現時点では最高裁は合憲と判断している
※最高裁平成27年12月16日
詳しくはこちら|夫婦同姓の制度の合憲性(平成27年最高裁判例)

い 選択式別姓の立法論

法改正のアイデアとして選択式別姓が提唱されている
内容=『夫婦同姓or夫婦別姓』を夫婦自身が自由に選択できる
夫婦同姓の問題が解消される
選択式別姓によって生じる実質的な問題はないと思われる
現時点ではまだ立法(法改正)はなされていない

3 夫婦同姓の不都合を避ける方法

現時点では,夫婦同姓が強要される制度のままです。
この不都合を受け入れて法律婚をする人もいますが,不都合を避ける方法もあります。
最初から事実婚を選択する方法が典型例です。
また,法律婚をした後に離婚をすることによって『事実婚にチェンジする』方法も実際に行われています。
根本的な問題解消ではないですが,夫婦が揃って姓(苗字)を変更するという方法もあります。

<夫婦同姓の不都合を避ける方法>

あ 事実婚の選択

最初から事実婚を選択する
詳しくはこちら|内縁|基本|婚姻に準じた扱い・内縁認定基準|パートナーシップ関係

い 事実婚へのステータスチェンジ

既に法律婚を行っているケースにおいて
夫婦が協議離婚をする
→ステータスが『法律婚』から『事実婚』に変化する
いわゆる『仲違い』とはまったく異なる
最高裁判例でもこのような離婚の利用を認めている
詳しくはこちら|離婚意思の内容(形式的意思)と離婚意思が必要な時点(離婚届の作成・提出時)

う 夫婦での氏の変更

『別姓』ではないが『夫婦の氏』を変更する方法もある
状況によってはこれで現実の支障が解消できることもある
家裁の許可を得れば変更できる
→夫婦の両方とも氏が変更されることになる
家裁が許可した実例もある
※宇都宮家裁平成7年9月22日;事案の内容として
詳しくはこちら|離婚後の氏の変更許可申立(裁判例の集約)

4 結婚制度の問題点(概要)

結婚(婚姻)の制度の内容には,夫婦同姓以外にも多くのものがあります。
制度自体が古い設計のものであり,現在の社会にマッチしないものもいろいろあります。
結婚制度の全体的な問題点については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|結婚制度の不合理性(婚費地獄・結婚債権・貞操義務の不公平・夫婦同姓など)

本記事では,夫婦同姓の制度の不合理なところや解決方法について説明しました。
実際に夫婦の姓(苗字)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【婚姻と離婚による苗字(姓・氏)の変化(夫婦同姓・離婚時の復氏・続称届)】
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