1 命名の常用平易性
2 名として使える漢字の増加の歴史
3 命名の文字制限と合憲性
4 戸籍の各種届出における人名用漢字外の扱い
5 名の常用平易性と名の変更との関係(基本)
6 常用平易性と名の変更が関係の問題の分類

1 命名の常用平易性

法律的な個人の名,つまり戸籍名は出生届で決まります。
出生届における新たな名については,完全に自由に決められるわけではありません。
常用平易,つまり,簡単で読みやすい文字を使うというルールがあります。

<命名の常用平易性>

あ 戸籍法の条文規定(引用)

子の名には,常用平易な文字を用いなければならない。
※戸籍法50条1項
常用平易な文字の範囲は,法務省令でこれを定める。
※戸籍法50条2項

い 施行規則の規定(抜粋)

戸籍法第50条第2項の常用平易な文字は,次に掲げるものとする。
一 常用漢字表に掲げる漢字
二 別表第2に掲げる漢字
※いわゆる人名用漢字別表である
三 片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)
※戸籍法施行規則60条

2 名として使える漢字の増加の歴史

名として使える文字は常用平易なものである必要があります。そして,施行規則で具体的に使える漢字の範囲が定められています(前記)。
使える漢字の範囲については,時代の流れとともに緩和され,増えてきています。

<名として使える漢字の増加の歴史>

あ 昭和23年戸籍法施行

『ア・イ』の文字を名に使用できた
ア 当用漢字;1850字
イ 片仮名・平仮名
変体仮名を除く

い 昭和26年

人名用漢字別表に掲げる漢字について
92字が追加された

う 昭和51年

人名用漢字追加表に掲げる漢字について
28字が追加された

え 昭和56年

当用漢字表に代わって常用漢字表が制定された
名に使える漢字は『ア・イ』となった
ア 常用漢字表;1945字
イ 人名用漢字;112字

お 〜平成27年

多数回にわたり
常用漢字・人名用漢字表の字が追加された

か 平成27年1月7日

名に使える漢字は『ア・イ』となった
ア 常用漢字表;2136字
イ 人名用漢字;862字
外部サイト|法務省|子の名に使える漢字

3 命名の文字制限と合憲性

名として使える文字を政府の判断で制限していることについて,違憲であると主張されたケースがあります。
高裁判例は合憲の判断を示しています。

<命名の文字制限と合憲性>

名として使用できる文字が制限されている
→合憲である
※東京高裁昭和26年2月9日

4 戸籍の各種届出における人名用漢字外の扱い

戸籍に関する手続は,出生届以外にも多くのものがあります。
出生届以外の届出では,ストレートに人名用漢字以外の使用制限の規定は適用されません。
人名用漢字以外を使う名が記載された届出を受理する扱いもいくつかあります。

<戸籍の各種届出における人名用漢字外の扱い>

あ 基本的事項

制限外の文字を用いた名を記載した届出について
→原則的に受理しない
『い〜お』に該当する場合
→例外的に受理する

い 消除前の名

裁判に基づく戸籍訂正によって子の戸籍が消除された
例;親子関係存否確認の審判
従前の名と同一の名を記載して出生届を提出した

う 相当の年齢の者の出生届

Aの出生時に出生届が提出されなかった
その後長い年月が経過し,Aは相当の年齢に達した
Aの呼称が社会に広く通用している
この呼称の証明とともに出生届を提出した
例;卒業証書・免許書・保険証など

え 就籍の届出

本籍を有しない者が新たに戸籍を作ること
家裁が許可していることが前提である
※戸籍法110条1項

お 名の変更の届出

家裁が許可していることが前提である
※昭和56年9月14日民二第5537号法務省民事局長通達

5 名の常用平易性と名の変更との関係(基本)

名の常用平易性は出生届におけるルールとして規定されています。
名の変更の手続には直接適用されません。
ただし,実質的な正当事由の判断,つまり許可するかしないかの判断に影響を与えます。

<名の常用平易性と名の変更との関係(基本)>

あ 基本的事項

命名における文字の常用平易性について
→出生届において適用されるものである
名の変更に直接適用されるわけではない
※斎藤秀夫ほか『注解 家事審判規則(特別家事審判規則)改訂』青林書院1994年p517

い 変更許可の審査への影響(概要)

名の変更の正当事由の判断において
→希望する名の常用平易性が正当事由の判断の一環となる
詳しくはこちら|変更後の名の常用平易性と変更の許可基準

6 常用平易性と名の変更が関係の問題の分類

名の常用平易性と名の変更が関係する問題は大きく3種類があります。

<常用平易性と名の変更の関係の問題の分類>

あ 人名用漢字外の戸籍名

戸籍名に人名用漢字ではない文字が含まれる場合
→変更の正当事由になるか
詳しくはこちら|人名用漢字外を含む戸籍名から脱する名の変更

い 変更後の文字と許可判断

変更後の名に人名用漢字ではない文字が含まれる場合
→変更の正当事由なしとなるのか
詳しくはこちら|変更後の名の常用平易性と変更の許可基準

う 人名用漢字の範囲の拡大

希望する文字が新たに編入された文字に存在する場合
→変更の正当事由になるか
詳しくはこちら|人名用漢字の範囲の拡大に伴う名の変更(許可傾向と裁判例)
※斎藤秀夫ほか『注解 家事審判規則(特別家事審判規則)改訂』青林書院1994年p517〜519