1 会話や世話の不足と散財(事案)
2 会話や世話の不足と散財(無効判断)
3 養親の死亡直後の預貯金引出(無効判断)

1 財産相続目的の養子縁組(有効判断)
養子縁組に,相続や扶養で財産を承継する目的があってもそれだけで無効となるわけではありません。
詳しくはこちら|養子縁組の縁組意思の内容のまとめ(実質的意思の判断基準)
本記事では,養子縁組の有効性を判断した事例を紹介します。
まずは,財産を相続で承継する意図があったケースで,養子縁組は有効であると判断した最高裁判例です。
<財産相続目的の養子縁組(有効判断)>
あ 養子縁組
AとBが養子縁組をした
A=養親,B=養子
い 縁組の目的
財産相続を目的とする養子縁組であった
Aには(B以外の)相続人の相続分を減少させる動機があった
A・Bは親子として精神的なつながりを作る意思があった
う 裁判所の判断
A・Bには真実に養親子関係を成立させる意思が十分にあった
養子縁組は公序良俗に違反しない
※最高裁昭和38年12月20日

2 資産と事業を承継する意図(事案)
資産と事業を承継する意図で養子縁組をした事例の裁判例を紹介します。
まずは事案内容だけをまとめます。
<資産と事業を承継する意図(事案)>
あ 養子縁組
養親Aと養子Bが養子縁組をした
い 主な目的
Aの資産と事業とをBに一括して相続させることであった
う 他の目的
AにとってBは甥であり従前から親しみがあった
Aは『え』のような将来の予定・希望があった
え 養親の希望
Bを引き取り同居したい
Bに大学に行かせたい
Aが愛着を持って営んでいた事業をBに引き継がせたい
お 死亡直前の会話
Aは『真面目な良い子をもらった』と喜んでいた
Bは事業を引き継ぐと答えていた
※大阪高裁昭和59年3月30日

3 資産と事業を承継する意図(有効判断)
前記事案について,裁判所は養子縁組を有効であると判断しました。
<資産と事業を承継する意図(有効判断)>
あ 相続目的と有効性
相続も養親子関係の1つの効果である
相続を主たる目的としたこと自体によって
養子縁組が無効となるものではない
い 精神的なつながり
ア 養親
Aは,Bとの間で養親子としての精神的なつながりを作る意思があった
イ 養子側
Bやその両親にも『ア』に応じる意思があった
ウ まとめ
当事者間には,真実に養親子関係を成立させる意思があった
う 結論
養子縁組は有効である
※大阪高裁昭和59年3月30日

4 会話や世話の不足と散財(事案)

養親と養子との会話や世話などの関係が薄かったために縁組が無効と判断された裁判例です。
最初に事案内容だけをまとめます。

<会話や世話の不足と散財(事案)>

あ 知り合った敬意

AとBは,病院での治療中に知り合った
その後,A・BはAの自宅で同居するようになった
同居開始後約2か月の時点で養子縁組の届出がなされた
い 養子縁組
AとBが養子縁組をした
A=養親,B=養子
う 入院と養親の死
養子縁組の届出後約1か月半後にBが入院した
Bが退院後,約1週間後にAが入院した
Aは入院後約1か月半後に亡くなった

え 養親と養子の関係性

同居期間は,通算4か月にも満たない
AとBは血縁関係がない
Bは,同居中に,Aの看護・日常の世話に意を配ったような事情はなかった
実際に,Bが入院する直前は重篤な状態に陥っていて,保健所の職員が入院させた
Aの葬儀の際,Bは香典を受け取ったが,香典返しをしなかった
BはAの資産により,高級外車を乗り換えるなどの散財行為を行った
※名古屋高裁平成22年4月15日

5 会話や世話の不足と散財(無効判断)

前記事案についての裁判所の判断をまとめます。

<会話や世話の不足と散財(無効判断)>

あ 養子縁組の目的

BはAの資産に依存した消費行動を取っていた
Bは『養親子という社会一般の身分関係を意識した行動』を取っていない
『親族関係の形成を前提とした会話』がなされていない
B自身,Aと養子縁組をする目的・理由・趣旨を理解していない
Aは,合理的な判断能力が相当に減退した状態にあった
Aは,親族に対する反発感情が強かった(い)
→Aは,親族への相続を阻止する目的で養子縁組をした

い 反発感情の原因

知人Cとの交際に反対された
医療保護入院をさせられた
後見開始申立をされた

う 結論

A・Bには,『養親子関係を生じさせようとする意思』がなかった
→養子縁組は無効である
※名古屋高裁平成22年4月15日

6 養親の死亡直後の預貯金引出(無効判断)

養親が亡くなった直後に養子が養親名義の預貯金を引き出したというケースです。
このような行動から,財産が目的であり,親子関係を作る目的がないという判断につながりました。

<養親の死亡直後の預貯金引出(無効判断)>

あ 事案

養子縁組当時,養親子間に交流がなかった
養子縁組後も『親族として交流した形跡』が『まったく』なかった
養親の死後,即座に預貯金解約・引き出しなどの相続手続を行った

い 裁判所の判断

純粋に財産的な法律関係を作出すること『のみ』が目的であった
→養子縁組は無効である
※大阪高裁平成21年5月15日

養子縁組よりも後の事情を元にして,縁組した時の気持ちを判断されたということです。
このような判断の構造は想定外の結果を生むリスクがあります。
リスクと予防策については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|縁組意思の実務的な立証・認定とリスクやトラブルの予防策