1 縁組意思の内容の見解の種類
2 実質的意思説を示す最高裁判例
3 親子関係を作る以外の目的と縁組意思
4 養子縁組の複数の意図の併存の例
5 養子縁組の目的の実例と有効性判断(概要)
6 成年養子の縁組意思の判断基準
7 未成年養子の縁組意思の判断基準
8 婚姻・離婚の意思の解釈(参考)

1 縁組意思の内容の見解の種類

養子縁組に必要とされる意思(縁組意思)の内容は民法上規定されていません。
本記事では縁組意思の内容について説明します。
まず,3つの見解の種類を整理します。

<縁組意思の内容の見解の種類>

あ 実質的意思説(※1)

『社会風俗に照らして,親子と認められるような関係を創設しようとする意思』
判例は実質的意思説をとる(後記※2)

い 形式的意思説

『縁組の届出をする意思』

う 法律的定型説

『民法上の養親子関係の定型に向けられた効果意思』
※中川高男『親族・相続法講義』ミネルヴァ書房1989年p230
※松本博之『人事訴訟法 第3版』弘文堂2012年p411

2 実質的意思説を示す最高裁判例

判例は実質的意思説をとります。
当然,実務では実質的意思説を前提として具体的な手続や処理が行われています。
つまり,養子縁組の届出はあっても実質的意思がない場合は,養子縁組が無効となります。

<実質的意思説を示す最高裁判例(※2)>

あ 縁組意思の内容

『当事者間に縁組をする意思がないとき』とは、(略)
当事者間に真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指す
※民法802条1項
※最判昭和23年12月23日

い 縁組の有効性

養子縁組をした当事者に『あ』の内容の縁組意思がない場合
例;『親子としての人間関係』構築の意思がまったくない
→養子縁組は無効となる
※最判昭和23年12月23日
※大阪高裁平成21年5月15日など

3 親子関係を作る以外の目的と縁組意思

無効となる具体例は,財産承継などの目的のみであり,親子関係を作る意思がないというようなケースです。

<親子関係を作る以外の目的と縁組意思>

あ 他の目的と縁組の有効性

親子関係を作る以外のみが目的である場合
→縁組意思が欠ける
→養子縁組は無効である

い 他の目的の例(※3)

ア 財産の承継
イ 遺留分割合に影響を及ぼす
ウ 節税
主な例=相続税軽減
エ 扶養請求権の発生
※最高裁昭和38年12月20日
※名古屋高裁平成22年4月15日など

4 養子縁組の複数の意図の併存の例

実際に縁組意思の有無で有効性を判断するのは簡単ではありません。
養子縁組の意図・動機・目的といった主観(気持ち)は多くのものが存在するからです。
1つの目的が大きくでも,他の意図や目的が否定されるわけではないのです。

<養子縁組の複数の意図の併存の例>

あ 他の目的と縁組意思の併存

親子関係を作る以外の目的(前記※3)がある場合でも
親子としての精神的つながりを作る意思がある場合
→縁組意思がある
=縁組は有効とすべきである
※最高裁平成29年1月31日
※最高裁昭和38年12月20日
※大阪高裁平成21年5月15日など
※島津一郎ほか『新・判例コンメンタール民法12相続(3)』三省堂2016年p252

い 他の目的の位置づけ

親子関係を作る以外の目的について
例;節税の意図
→養子縁組の『動機』に過ぎない
=縁組意思と併存する
※最高裁平成29年1月31日
詳しくはこちら|養子縁組の目的の実例と縁組意思(有効性)の判断(集約)

5 養子縁組の目的の実例と有効性判断(概要)

養子縁組の実質的意思の実際の判断は複雑です。
具体的な主張・立証の状況とこれに対する裁判官の評価で結果が決まります。
いろいろな事案とその評価については別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|養子縁組の目的の実例と縁組意思(有効性)の判断(集約)

6 成年養子の縁組意思の判断基準

以上のように,縁組意思の内容を実質的意思とする解釈は判例で統一されています。
しかし実際の事案での実質的意思の有無がハッキリと判定できないことも多いです。
この点,学説では,いろいろな裁判例を元にして判断基準を示しています。
養子が成年か未成年かによって分類した2つの基準を順に紹介します。
まずは成年養子のケースでの縁組石の判断基準です。

<成年養子の縁組意思の判断基準>

あ 成年養子の法的効果

成年者を養子とする養子縁組について
主要な効果は扶養義務と相続権の発生である
縁組の当事者はこれを意識している
養育目的は普通は考えられない

い 有効性判断基準

扶養or相続についての効果意思がある場合
→縁組を有効として扱う
※中川善之助ほか『新版 注釈民法(24)』有斐閣1994年p337
※我妻栄『法律学全集 親族法』有斐閣1961年p275
※島津一郎『家族法入門』有斐閣1964年p289
※山畠正男/谷口知平ほか『総合判例研究業書・民法(15)』有斐閣1960年
※石井忠雄/林良平ほか『注解判例民法4親族法・相続法』青林書院1992年p316

7 未成年養子の縁組意思の判断基準

未成年養子の縁組意思の判断基準です。

<未成年養子の縁組意思の判断基準>

あ 未成年養子の法的効果

未成年者を養子とする養子縁組について
法的効果は扶養義務・監護義務・相続権の発生である
監護義務は重要な効果である

い 有効性判断基準

相続についての効果意思だけでは不十分である
『ア・イ』のいずれかが必要であろう
ア 監護養育目的
イ 『精神的なつながり』
※中川善之助ほか『新版 注釈民法(24)』有斐閣1994年p337
※深谷松男『新版現代家族法』青林書院1988年p120

8 婚姻・離婚の意思の解釈(参考)

以上は,養子縁組の意思の解釈でした。
これに似ている解釈論として,婚姻や離婚の意思の内容もあります。

<婚姻・離婚の意思の解釈(参考)>

婚姻・離婚について必要とされる意思の内容について
→それぞれ違う解釈がある
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