1 事案(結婚〜夫の婚外交際)
2 事案(仲違い〜事実上の離婚)
3 夫の主張
4 裁判所の判断

1 事案(結婚〜夫の婚外交際)

夫婦間の契約の取消の解釈論は時代によって移り変わり,判例も多く残されています。
詳しくはこちら|夫婦間の契約取消権の無効化の変遷(事案・判断の概要の集約)
本記事では実例の1つである裁判例を紹介します。

<事案(結婚〜夫の婚外交際)>

あ 結婚と事業経営

昭和10年9月
A・Bは結婚した
夫の父の資金により土地・建物を買い受けた
所有名義は夫にした
夫婦は大阪市において同居し,洋服製造業を営んでいた
相当の収益があった

い 婚外交際(フルコミット)

夫は取引の関係上遊里に通っていた
夫はキャストYと懇意となった
Yを身受して妾関係を結んだ
夫とYの間には3人の子が誕生した
※高松高裁昭和27年6月16日

2 事案(仲違い〜事実上の離婚)

<事案(仲違い〜事実上の離婚)>

あ 仲違い

夫婦の間に実子がなかった
夫は妻を疎んずるようになった
昭和20年6月戦災を経て
夫は妻との同居を拒否するようになった
夫は妻に生活費も十分に支給しなくなった

い 事実上の離婚

夫は妻と協議して,事実上離婚するに至った
この条件として次のような合意をした

う 離婚条件の内容

夫は慰謝料として次の財産を妻に譲渡する
ア 自宅土地・建物
贈与契約書・不動産登記申請に要する書類(委任状など)
→夫が妻に交付した
イ 金銭50万円(現在の約3億円)
毎月2000円の分割払いとする(現在の約120万円)
(訴訟上争われていない書面作成の有無は不明である)
※高松高裁昭和27年6月16日

3 夫の主張

<夫の主張>

あ 詐欺・強迫

贈与は詐欺or強迫によるものである
→契約を取り消す

い 取消

夫婦間の契約として取り消す
※高松高裁昭和27年6月16日

4 裁判所の判断

<裁判所の判断>

あ 詐欺・強迫の該当性

詐欺・強迫に該当する事実がない
→真実な贈与として有効である

い 取消(基準)

契約の取消は正常な夫婦関係を前提としてのみ容認せらるべきものである
夫婦関係が既に破綻に頻している場合
→特別の事情の変更のない限り夫婦間の契約は取り消せない

う 取消(結論)

夫婦が既に破綻している時に夫は取り消した
→取消は無効である
※高松高裁昭和27年6月16日