1 事案(夫の婚外交際・婚外子誕生と浪費)
2 事案(親族協議会による財産擁護策)
3 夫の主張(一夫多妻認容説と契約の解消)
4 裁判所の判断

1 事案(夫の婚外交際・婚外子誕生と浪費)

夫婦間の契約の取消の解釈論は時代によって移り変わり,判例も多く残されています。
詳しくはこちら|夫婦間の契約取消権の無効化の変遷(事案・判断の概要の集約)
本記事では実例の1つである判例を紹介します。

<事案(夫の婚外交際・婚外子誕生と浪費)>

あ 婚外女性との同居・出産

昭和3年11月
男性A・女性Bは婚姻した
夫婦間に子供が2人誕生した
昭和11〜12年頃
夫は遊興に耽り浪費するに至った
正妻以外に婦女と同棲し,その間に子女をもうけた
不動産や株式を売却した
家財道具を持ち出した

い 夫の財産状況

主な財産は次のものだけとなっていた
ア 自宅の家屋とその敷地(土地)
イ 株式 50円株×100株
※大判昭和19年10月5日

2 事案(親族協議会による財産擁護策)

<事案(親族協議会による財産擁護策)>

う 親族協議会開催

夫婦で離婚はしていないが破綻した状態となった
昭和14年2月
親族で話し合いがなされた
夫の財産を擁護する施策を取ることとなった
妻と子の生活を守るためであった

え 財産擁護策の内容

自宅の家屋を妻に譲渡した
虚偽の『売渡証書』を作成した
これを用いて家屋についての所有権保存登記を行った
自宅の敷地(土地)は夫の実母に譲渡した
※大判昭和19年10月5日

3 夫の主張(一夫多妻認容説と契約の解消)

<夫の主張(一夫多妻認容説と契約の解消)>

あ 開き直り価値観(前提)

『正妻以外の婦女と同棲し其の間子女を儲けながら正妻に対しては依然清算としての処遇をなし居る事例は世間其例乏しからざる所にして(その例は乏しくない)かくの如きは好個の事例と云うを得ざれども止むを得ざる事象として世間一般も之を認めて異とせざるなり』

い 無効

自宅の家屋の譲渡は仮装したものであり無効である

う 取消権

贈与契約を夫婦間の契約として取り消す

え 停止条件

ア 目的と条件
家屋の譲渡について
子の将来における教育などの扶養という目的もある
妻が2人の子の養育をすることが条件となっている
イ 条件の内容
子を実母である妻の手元に置く
妻は,相当期間子を養育する義務を負担する
※大判昭和19年10月5日

4 裁判所の判断

<裁判所の判断>

あ 契約の有効性(無効主張について)

仮装したのは所有権移転の原因のみである
真実は贈与である
夫には放蕩のおそれがある
→所有権を移転することについて合理性がある
→真実の譲渡である

い 取消権

家屋は妻子の生活保障の唯一の財産と言える
贈与の取消は妻子に損害を加える目的である
権利濫用であり無効である

う 停止条件

条件についての合意はない
→条件は付けられていない

え 結論

『所有権移転契約』は有効である
※大判昭和19年10月5日