1 財産分与と夫婦間の契約取消権
2 財産分与の取消を否定した実例(概要)
3 財産分与の合意の拘束力(概要)

1 財産分与と夫婦間の契約取消権

夫婦間の契約については取消権を認める規定があります。
詳しくはこちら|夫婦間の契約取消権の基本的事項(背景・趣旨・実害・条文削除意見)
この点実際の夫婦間の取引は,離婚に伴う夫婦の清算ということが多いです。つまり財産分与のことです。これについては,一般的に取消権は適用されないという解釈になっています。

<財産分与と夫婦間の契約取消権>

あ 一般的な考え方

夫婦間(離婚前)の『財産分与』の合意について
=財産分与の趣旨・性格のものという意味である
詳しくはこちら|財産分与の基本|算定方法・対象財産・典型的な対立の要因
→離婚を前提とした条件が協議・合意の対象である
→通常の夫婦の状況とは異なる
→取消権は適用されない

い 学説

夫婦関係破綻後の契約は実質的に財産分与である
→取消権は適用されない
※中川善之助『新訂親族法』青林書院p232

2 財産分与の取消を否定した実例(概要)

財産分与の取消を否定した裁判例があります。これは『取消権』を判断したものではありません。『書面によらない贈与』の規定の適用を否定したというものです。参考として概要をまとめます。

<財産分与の取消を否定した実例(概要)>

あ 事案(概要)

協議離婚をする際,夫が妻に建物を贈与した
書面を作成していなかった
夫が『書面によらない贈与』として取消を主張した
※民法550条

い 裁判所の判断(概要)

離婚と不可分な『協議離婚の1条項(条件)』である
→取り消しはできない
※最高裁昭和27年5月6日

う 補足説明

『夫婦間の契約の取消』の主張ではなかった
贈与契約の時点では民法に『財産分与』の規定がなかった
詳しくはこちら|書面によらない贈与→改正民法の財産分与として取消否定(最高裁)

3 財産分与の合意の拘束力(概要)

財産分与の合意(約束)については,法的性質や裁判手続についての解釈論があります。これも拘束力に関係してきます。このテーマについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|財産分与の請求権・合意の法的性質と家裁の手続との関係