1 財産分与の請求権と家裁の手続の性質
2 財産分与の合意と家裁の審判の可否
3 財産分与の合意の拘束力と事後的変更

1 財産分与の請求権と家裁の手続の性質

財産分与の内容を(元)夫・妻で約束,つまり合意するケースも多いです。財産分与の合意は法的性質や家裁の手続との関係について解釈論があります。
本記事では財産分与の合意に関するこのような解釈論を説明します。
まず,財産分与の請求権の性質や家裁の手続との関係をまとめます。

<財産分与の請求権と家裁の手続の性質>

あ 請求権の2分論

ア 抽象的財産分与請求権
財産分与を請求する権利
離婚によって当然に発生する
イ 具体的財産分与請求権
具体的権利は協議or審判によって初めて形成される(『い』)
※最高裁昭和55年7月11日

い 具体的内容の形成

ア 具体的方法
まずは当事者間で解決をする
それができない場合に初めて『協議に代わる処分』を家裁に求める
私的自治の原則を採用したものである
イ 同様の制度(参考)
争訟性のある家族法上の制度全体に共通する制度である
財産分与に限らない
例;婚姻費用の分担・親権者の変更・扶養・遺産分割

2 財産分与の合意と家裁の審判の可否

財産分与の合意が既になされている時に家裁の審判ができるかどうかという解釈論があります。これについてまとめます。

<財産分与の合意と家裁の審判の可否>

あ 条文の規定

『当事者間に協議が調はないときまたは協議をすることができないとき』
家庭裁判所に対して『協議に代わる処分』の『請求』ができる
※民法768条2項

い 判例・通説

当事者間で財産分与の合意が成立している場合
→審判の申立はできない
一般の民事裁判手続によるべきである
※大阪高裁昭和27年12月17日
※大阪家裁昭和51年3月31日
※宮崎地裁昭和58年11月29日
※我妻栄『親族法』p159

う 反対説

財産分与請求権は離婚によって当然に発生する
離婚前の当事者間での合意の有無に関わらない
離婚後の当事者間の合意があっても請求権は消滅しない
→合意があっても家裁は審判ができる
合意の内容を十分斟酌しつつ,独自の観点から判断する
※佐藤義彦『財産分与の合意後における審判の申立て』判タ551号p273

3 財産分与の合意の拘束力と事後的変更

財産分与の合意は,当事者を拘束します。民事全般で共通する根本原則です。合意(約束)を守らなくて良いとしたら現代社会として成り立ちません。非常に限られた例外を除いて拘束力は認められます。

<財産分与の合意の拘束力と事後的変更>

あ 原則論

合意成立後は一方当事者の意向で撤回・解消できない
財産分与の合意も当然これに該当する

い 例外=継続的扶養

財産分与のうち継続的な扶養の性質の部分について
→事情変更による取消・変更が可能である
※大津千明『離婚給付に関する実証的研究』日本評論社p180