1 事案と責任の主要項目
2 事案と責任の補足事項
3 事案の概要
4 被害者の落ち度による慰謝料減額

1 事案と責任の主要項目

職場のセクハラ事例の1つとして金沢セクハラ事件を紹介します。身体接触や性行為の未遂という行為がありました。責任の判断として被害者の落ち度が反映されたという特徴があります。
まずは,事案と責任の主要事項を整理します。

<事案と責任の主要項目>

性的会話 あり
身体を触れる あり
性行為 なし(未遂あり)
期間 約2か月間(※1)
慰謝料 120万円(※2)
弁護士費用 18万円

※名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日;金沢セクハラ事件

2 事案と責任の補足事項

上記の責任と事案の表の中の補足事項をまとめます。

<事案と責任の補足事項>

あ 性行為未遂後の勤務継続(※1)

性行為未遂があった後
被害者は約5か月間退職を拒否し,勤務を継続していた

い 被害者の落ち度(※2)

被害者は加害者自宅に宿泊・入浴したことがあった
これが被害者の落ち度として実質的に減額された(後記※3)
※名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日;金沢セクハラ事件

3 事案の概要

事案の全体的な概要をまとめます。

<事案の概要>

あ 当事者

加害者A=男性・上司
被害者B=女性

い 一般的性的言動

AはBに対して性的なことを話していた
AはBの身体に触れることがあった
このような状況が約2か月継続した

う 強姦未遂

AはBの下着をずり下げた
Aは自身の身体をBの上に押し重ねた

え 険悪状態の継続

BはAの性的な言動を拒絶するようになった
AはBに退職するよう求めた
Bは退職の要請を拒絶し,勤務を続けた
※名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日;金沢セクハラ事件

4 被害者の落ち度による慰謝料減額

裁判所は被害者の落ち度を認め,責任つまり慰謝料を下げる方向に使っています。

<被害者の落ち度による慰謝料減額(※3)>

あ 慰謝料の判断のまとめ

行為の違法性は明確に認められた
一方,Bの落ち度も指摘された
=BはAの行為を招いた帰責事由がある(い〜お)
→実質的に慰謝料が減額された

い 下心認識可能性

BはAの下心を早期に,容易に分かったはずである

う 卑猥な会話

就職当初からAとBは飲酒時にきわめて卑猥な会話をしていた
→容易に性的対象になると誤解させる余地もある会話であった

え 宿泊・入浴

BはAの自宅に複数回宿泊し,入浴していた
※名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日;金沢セクハラ事件