1 双方有責の離婚請求の判断傾向
2 双方有責の離婚請求の判例・認容例
3 有責性と離婚原因の判断基準
4 有責性と離婚原因の判断の具体例

1 双方有責の離婚請求の判断傾向

有責配偶者からの離婚請求は否定的な傾向があります。
詳しくはこちら|有責配偶者からの離婚請求は3つの要件で判断される
この点『離婚を請求される側』にも有責性があるケースもあります。
いわゆる『双方有責』という状態です。
典型例は夫婦の両方が不貞を行っているケースです。
双方有責の場合の離婚請求の判断について,以下説明します。
まず,判断の傾向をまとめます。

<双方有責の離婚請求の判断傾向>

あ 前提事情

離婚請求側・相手方の両方が破綻について『有責』である

い 判断の傾向

離婚請求者のみが有責である場合の基準をベースとする
相手方の責任の大きさによって判断基準を変える

う 相手方の責任割合が小さい

離婚請求の相手方の責任割合が小さい場合
→離婚認容の条件(ハードル)は『あまり下がらない』
→離婚認容の可能性は低いままである

え 相手方の責任割合が大きい

相手方の責任割合が大きい場合
→離婚認容の条件(ハードル)は『大きく下がる』
→離婚認容の可能性はアップする

2 双方有責の離婚請求の判例・認容例

双方有責の具体的ケースを紹介します。
原審が離婚請求を認め,最高裁がこれを維持したというケースです。

<双方有責の離婚請求の判例・認容例>

あ 有責内容

ア 妻=離婚請求側=原告
不貞行為を行った
イ 夫=離婚請求の相手方=被告
暴力を行った
生活費を渡さなかった

い 別居/同居期間

別居期間=9年8か月
同居期間=17年2か月

う 年齢

夫=54歳
妻=53歳

え 子

すでに成人している=未成熟子なし

お 裁判所の判断

離婚請求を認めた
※最高裁平成5年11月2日

3 有責性と離婚原因の判断基準

双方有責における離婚原因の判断は複雑です。
そこで,判断しやすい基準として整理します。

<有責性と離婚原因の判断基準>

あ 有責性の扱い

離婚請求者が破綻について有責である場合
→離婚請求の『相手方に起因する事情のみ』で『破綻』の判断をする
『離婚請求者に起因する事情』は判断要素から除外する

い 別居期間の扱い

『別居(期間)』の実質的な要因が『請求者』にある場合
→『別居期間が長期であること』は判断要素から除外する

4 有責性と離婚原因の判断の具体例

上記の判断基準だけではちょっと分かりにくいかもしれません。
そこで,この判断基準を元に,事例の判断を行ってみます。

<有責性と離婚原因の判断の具体例>

あ 事案

夫婦それぞれが不貞行為を行っている
夫が妻に対して離婚を請求した

い 判断基準の適用

『妻の行為に起因する事情=妻の不貞行為』のみを判断要素とする
『夫の行為に起因する事情=夫の不貞行為』は無視する

う 判断結果

一般的な『不貞行為』という離婚原因に該当する
→離婚請求が認められる傾向となる

え 参考・常識的判断

夫婦ともに別の異性と交際している状態である
→『離婚できない=婚姻継続』という結論は不合理である
→離婚を認めることが常識的な判断と言える

結論は常識に反しない,妥当なものとなっています。