1 有責配偶者からの離婚請求の従来の扱い
2 有責配偶者からの離婚請求を認める判例変更
3 有責配偶者からの離婚請求を認める3要件
4 長期間の別居の判断基準
5 未成熟子の判断基準
6 苛酷・反社会的状況の判断基準
7 有責配偶者からの離婚請求の実務的判断

1 有責配偶者からの離婚請求の従来の扱い

離婚の要因を作った者を『有責配偶者』と呼びます。
不貞を行った者が典型例です。
有責配偶者が離婚請求をすることの解釈論は複雑です。
まず,従来の古い解釈論をまとめます。
現在では解釈が変わっています。
しかし,現在でもベースとなる解釈・考え方です。

<有責配偶者からの離婚請求の従来の扱い>

あ 前提事情

破綻の責任がある配偶者が離婚を請求をした
例;不貞行為をした配偶者による離婚請求

い 解釈論

ア 『破綻』の認定
『破綻』自体は認められる
イ 加害者の立場
加害行為によって破綻という状況に至った
加害的行為をした者は離婚を希望している
加害者の希望が加害行為を理由として叶うことは不合理である
ウ 被害者の立場
被害者には何も落ち度がない
→被害者を保護すべきである

う 過去の判例における結論

『背徳行為』を行った者の離婚請求を認めること
→『道徳観念』が許さない
→離婚請求を認めない傾向が強かった
※最高裁昭和27年2月19日
※最高裁昭和29年11月5日
※最高裁昭和29年12月14日

現実には,仲が悪くなっていた状況で,暴力や不貞に至るのが通常です。
しかし,先に明確・決定的な原因を作った責任は重いと評価されるのです。

2 有責配偶者からの離婚請求を認める判例変更

有責配偶者による離婚請求は認めない考え方があります(前記)。
しかし,一切離婚を認めないことも不合理であると言えます。
そこで,判例は変更され,一定の条件で離婚を認めることになりました。

<有責配偶者からの離婚請求を認める判例変更>

あ 判例変更

有責配偶者からの離婚請求について
→一定の事情があれば認められることになった
判断事情として3つの項目が示された(後記※1)
※最高裁昭和62年9月2日

い 3要件の関係性

3要件の関係性は判例で明確に示されていなかった
その後の判例において
『3要件を基礎として総合的に判断する』傾向となっている
※最高裁平成16年11月18日
※『月報司法書士2016年8月』日本司法書士会連合会p68

3 有責配偶者からの離婚請求を認める3要件

有責配偶者からの離婚請求では3つの要件が使われます(前記)。
この内容をまとめます。

<有責配偶者からの離婚請求を認める3要件(※1)>

あ 長期間の別居(※2)

夫婦の別居が相当の長期間に及ぶ
長期間は次の事情と対比する
ア 両当事者の年齢
イ 同居期間

い 未成熟子の不存在(※3)

夫婦間に未成熟の子が存在しない

う 苛酷・反社会状況の不存在(※4)

離婚の実現が著しく社会正義に反することにはならない
相手方が極めて苛酷な状態にはならない
判断対象=精神的・社会的・精神的な状況
※最高裁昭和62年9月2日

この3つのすべてが必要,とは限りません。
他の事情も含めて総合的に判断する方法が現在の主流です(前記)。
いずれにしても3要件は重視される事情です。
3つのそれぞれの内容については,以下説明します。

4 長期間の別居の判断基準

『長期間の別居』という要件の内容・判断基準を整理します。

<長期間の別居の判断基準(※2)>

あ 基本的基準

別居期間が10年〜15年に達している場合
→無条件に『長期』と言える

い 期間不足→総合判断

別居期間が10年未満の場合
→同居期間・両当事者の年齢と対比して判断する

う 総合判断の典型例

両当事者が相当若年である場合
→復元可能性が強い
→相対的に長い別居期間が要求される
※『最高裁判所判例解説(民事)昭和62年度』法曹会p584〜

5 未成熟子の判断基準

『未成熟子の不存在』が要件の1つとなっています(前記)。
この内容・判断基準について整理します。

<未成熟子の判断基準(※3)>

あ 『未成熟子』の判断

『未成熟子』について
→親の監護なしでは生活を保持しえない子である
必ずしも自然年齢に関わるものではない
※『最高裁判所判例解説(民事)昭和62年度』法曹会p585

6 苛酷・反社会的状況の判断基準

『苛酷・反社会的状況の不存在』も要件の1つとなっています(前記)。
この判断の目安・方向性についてまとめます。

<苛酷・反社会的状況の判断基準(※4)>

あ 判断における比重

『苛酷・反社会的な状況』の判断について
→経済的事情が大きなウェイトを占める
※二宮周平ほか『離婚判例ガイド 第3版』有斐閣p70

い 『苛酷』の国語辞典的意味

ア 『苛酷』『過酷』で共通する意味合い
きびしくてむごい
イ 『苛酷』だけに含まれるニュアンス
『無慈悲であるさま』の意味が加わる
※北原保雄『明鏡国語辞典』大修館書店

判例の基準では『苛酷』という漢字の用語が使われています。
『過酷』と間違えやすいですが異なります。
ただ,日本語の意味としてはあまり本質的な違いはないでしょう。

7 有責配偶者からの離婚請求の実務的判断

有責配偶者からの離婚請求の判断基準は複雑です(前記)。
実務的には簡略化した基準を使って大まかな判断をします。
『別居期間』を軸にして判断するという方法です。

<有責配偶者からの離婚請求の実務的判断>

あ 一般的な別居期間の基準|概要

一般的な離婚原因として『一定の別居期間』がある
5〜10年程度が目安である
詳しくはこちら|長期間の別居期間は離婚原因になる

い 有責配偶者の特別扱い

『有責配偶者』からの離婚請求について
→必要とされる『別居期間』が加重される
=長期化される

う 別居期間の基準・目安

10〜20年の別居期間で離婚が認められている
近年は短縮される傾向があるように思われる
10年前後で離婚を認める事例が増えつつある

え 総合的判断

別居期間は判断基準の1つに過ぎない(前記※1)
実際には他の事情も判断に影響する
→他の事情によって,必要とされる別居期間が変動する