1 内縁の夫婦の死別×所有権なし配偶者|事例
2 内縁者の居住保護|結論・まとめ
3 内縁者の居住保護|理論的バリエーション
4 内縁者の居住保護|使用貸借説
5 内縁者×使用貸借説|契約終了リスク

1 内縁の夫婦の死別×所有権なし配偶者|事例

内縁の夫婦の住居が『夫の単独所有』であることも多いです。
夫が亡くなった場合,その後の利用関係が複雑になります。
まずは事案をまとめます。

<内縁の夫婦の死別×所有権なし配偶者|事例(※1)>

あ 前提事情

内縁の夫Aが建物を所有していた
Aと妻Bが建物に居住していた

い 相続

Aが亡くなった
建物所有権をAの相続人Cが承継した

う 権利関係

住居はCの所有となった
住居はBが単独で占有している

え 明渡・損害金請求

形式的には次の請求が考えられる
CがBに対して明渡・損害金を請求する

残った配偶者が建物の所有権を持たないところが問題です。
相続が適用されないので『夫から承継する』ことはないのです。
詳しくはこちら|内縁関係に適用される規定|基本・公的制度・重婚的内縁|法律婚優遇=不平等・違憲
なお,遺言があれば別です。

2 内縁者の居住保護|結論・まとめ

残った内縁者に建物の所有権がない状態を前提に説明します。
見解はいくつかありますが,一般的な結論は共通しています。
結論部分をまとめます。

<内縁者の居住保護|結論・まとめ>

あ 前提事情

上記※1の事案について

い 占有権原

内縁者は一定期間は退去する義務はない
=居住できる

う 対価

内縁者は使用対価・賠償金を支払う義務はない

解釈論については次に説明します。

3 内縁者の居住保護|理論的バリエーション

内縁の夫婦の死別における『内縁者の居住』に関する解釈論をまとめます。

<内縁者の居住保護|理論的バリエーション>

あ 権利濫用説

『明渡請求』を権利濫用として排斥する
※東京地裁昭和39年10月9日
※東京地裁平成2年3月27日
※東京地裁平成9年10月3日

い 使用貸借説

『使用貸借契約の成立』orこれに近い状態を認める
※大阪高裁平成22年10月21日(後記)
※大阪地裁昭和37年11月30日

う 民法768条類推適用説

『財産分与』と同様の扱いをする
※大阪家裁昭和58年3月23日

このうち『使用貸借説』について,次に具体例を紹介します。

4 内縁者の居住保護|使用貸借説

内縁者の居住を保護する見解は3つに分類できます(前述)。
そのうち『使用貸借説』が採用された判例を紹介します。

<内縁者の居住保護|使用貸借説>

あ 事案

Aは建物甲を居住していた
Aの内縁の妻Yは25年以上,建物甲に居住していた
Aは亡くなった
建物の使用に関して書面などの作成はされていなかった

い 裁判所の判断|前提事実

Aは『Yが建物を退去する事態に至ること』を避けたいと考えていた
Aは『Yが死ぬまで無償で本件建物に住み続けさせる』意思を有していた

う 裁判所の判断|結論

黙示的に使用貸借契約が成立していた
期限=『Yが死亡するまで』
『貸主』の死亡後も存続している
※民法593条,599条参照
※大阪高裁平成22年10月21日

5 内縁者×使用貸借説|契約終了リスク

使用貸借説により,内縁者の居住が守られるケースがあります(前述)。
この場合,その後も無制限に居住が認められるとは限りません。
『その後』の扱いについてまとめます。

<内縁者×使用貸借説|契約終了リスク>

あ 『故人の相続人』の取れるアクション

一定期間の経過後に『使用貸借の終了』を主張する
→使用貸借の解釈により,効果=結果が異なる

い 法的な結論

ア 期間の定めなし
使用貸借が『期間の定めなし』と解釈される場合
『相当期間』経過後と言えれば『契約終了』となる
※民法597条2項
イ 期間=死亡まで
『内縁者死亡まで』という設定ありと解釈される場合
内縁者が亡くなるまでは終了しない
=明渡請求はできない

う 使用貸借の存続中に『売却』したケース

居住する内縁者は退去を強いられる
→『故人の相続人』は『建物を使用させる義務の不履行』となる
→故人の相続人は損害賠償責任を負う